シカ害に脅かされる鴨川の水源地 〜 “実感する” 狂い出した森林生態系
京都市内を流れる清流・鴨川。古くは平安時代から日本の史記に登場する歴史ある河川の一つであり、その水源は京都市北区の深山地域、雲ヶ畑にある。近年、増え過ぎたシカによる害はその水源となる森林にも等しく及んでいる。鴨川の水源を見守る岩屋山志明院の住職・田中真澄氏にシカ害の実態を聞く。
ごく短期間で現れたシカの害
「シカが増えたのは、ここ12~13年の間ですね。それまではこの寺の周りでもたまに見かけるぐらいで、当時はまだ自然の動物と出会うのが嬉しかったものです。」
雲ヶ畑地域を登る道路の最奥に位置する岩屋山志明院。入り口の駐車場から石階段を上がると寺務所があり、本堂へと続く山門が見える。寺務所周囲には山の恵みである鴨川の源流をたたえ、青々とした野草などが生い茂る。しかし、その周囲には荘厳な雰囲気には似つかわしくない電気柵が設置され、山門へと渡る石橋にはブルーのシカ除けネットが備え付けられている。
「6、7年前までには本堂から寺務所周りの草まですべて食べられました。夜には寺務所の前でシカが寝ていたほどです。電気柵やシカ除けネットを設置して、ようやくこの周りだけは多少マシにはなりました。しかし森の中の状況はひどいものです。」
山門をくぐると、本堂までは石階段が続き、シカが増える以前は、その両脇をコアジサイなど季節の花々が彩りを与えていたという。今では花や新芽はすっかりシカに食べられてしまい、残された茎や枝と、シカが食べられない一部の草葉が物寂しく参拝者を出迎えている。
実感する森林生態系の狂い
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