【狩猟界の職人を訪ねる】加納金属製作所 〜 ドッグケージを作り続けて半世紀
狩猟界の縁の下の力持ち「加納金属ドッグケージ」
狩猟の世界は狩猟者だけで成り立ってはいない。ガンスミス、ナイフ職人など、狩猟の道具を作り続ける職人たちがいるからこそ、私たちは狩猟を楽しむことができる。
そして狩猟の世界、特に猟犬を持つ狩猟者にとって、無くてはならない道具にドッグケージがある。
猟犬、猟師、そして狩猟の現場のことを考え抜き機能的に、かつ美しく作られたドッグケージはもはや職人技の品と言えるのではないだろうか。
「加納金属製作所」は、半世紀に渡る親子の技術とアイデアを盛り込んだドッグケージによって、狩猟界を支えてくれている。
文・写真|佐茂規彦
親子2代、ドッグケージを作り続けて半世紀
加納金属製作所がドッグケージを作り始めたのは今から50年前。現在の代表である加納雅春さんの父、故・時好さんが自身も鳥猟家であり、より使いやすいドッグケージを求めたことがきっかけだった。
「父はアルミ加工業を営んでましたので、当時は鉄や木材が主流だったドッグケージを、軽量で丈夫なアルミで作ろうと思いついたんだと思います」
そう話す雅春さんも30年前から父の下でドッグケージを作り始めた。
狩猟ブームに陰りが見え始めたものの、そのころはまだ鳥猟家が多く、トライアルも盛んだった。ドッグケージは多いときで年間200台を雅春さんのほか1~2名の従業員で生産していた。
父の代には大阪市内に工場を構えていたが、およそ20年前に京都府向日市にある現在の工場に移転。それからは雅春さんひとりでドッグケージを作り続けている。
作ったケージの数は、京都に移ってからだけでも大小合わせて2,000台を超えるという。
実猟家の知恵と工夫が満載
加納金属ドッグケージの基本的な形や機能は、実猟家でもあった時好さんが考案したものを受け継いでいる。
時好さんが存命のころは、自宅には常に2~3頭のセッターがいて、実猟のほか自らもトライアルに参加。犬の運搬・出し入れの経験で使い勝手の良さを追究したほか、行く先々で出会うほかの猟師の意見にも耳を傾けた。
代がかわって雅春さんは狩猟はしないが、受注時には細かく発注者の要望を聞く。時には無茶なオーダーもあるものの、できるだけオプションで反映させる。
現在、ケージの出入り口となる格子扉に取り付けられているクレセント錠が、通常とは上下逆さまに取り付けられているのもユーザーである狩猟者の意見を取り入れたものだ。
注文はお早めに
ベテラン犬持ち猟師の間では知らない者はいないであろう加納金属ドッグケージ。今は雅春さんひとりのため、1台の製作に掛かる日数はおよそ4~5日。毎年、猟期開始前になると受注が重なり、納期に1ヶ月超掛かることも珍しくなくなる。
次回猟期までに間に合わせたい場合は、春のうちからオーダーしておくことをお勧めする。
(了)
狩猟専門誌『けもの道 2018春号』では本稿を含む、狩猟関連情報をお読みいただけます。note版には未掲載の記事もありますので、ご興味のある方はぜひチェックしていただければと思います。
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