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2月/2月28日

2月。初旬には「立春」を迎え、まずは暦が春を匂わせてくる。
今住む街は毎日だいたい青空で、控えめな太陽と顔を合わすことができ、
冷たく乾いた風が肌を刺す。
季節が進むと、ほころびだす梅の花。ふわり、ほわり。
街に少しづつ、色づき始める。
春を目指して、自然は暦を追いかける。


だけど私にこびりついた「2月」の記憶には、あまり色がない。
空は鉛色、反射して必要以上に眩しい雪の白、氷の透明。


帰り道、雪のせいで歩道と田んぼの境界もわからなくなり、
長靴が雪の中にはまって抜けなくて必死に友達と雪を掻き出したこと。

眼下に広がるのは、地面の白と空の青だけ。
転ばないように足元に力を込めて、
でもスピードはどんどん上げて、
曲線を描きながらゲレンデを駆け下りる。

部活の仲間でありライバルだった3人組で、
ずっと仲良くできる未来を夢見ながら、
まっすぐだけど不安定で、でも真っ白な雪の道を歩いて帰った日。

その後の人生を少なからず左右する受験、
降り立った場所も、雪の多いところだった。
結局そこには行けなかったんだけどね、
まあそれでも人生なんとかなってるよ、
と冬の乾いた青空を知らなかった自分に声をかけたい。


2月はグレーで、白くて、透明だ。
早くて、短くて、繊細で。

何度も2月の記憶を重ねて重ねてきたけれど、
その白はこの世に珍しく、何色にも染まらない白だった。



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