見出し画像

現場に近いミドル層が重要な役割を果たすこと

先々週、「知略の本質」という本を再読しました。この本は「失敗の本質」をまとめられた野中郁次郎先生が、「失敗の本質」の後続として書かれた本の一冊です。
 
この本の中では、独ソ戦、バトルオフブリトン(独英戦)、インドシナ(ベトナム)戦争、湾岸・イラク戦争を通しながら、戦争においてリーダーや指導者が、特に戦略面で果たすべき役割について考えていきます。
 
本当に多角的に書かれている本なので総括しては難しいのですが、印象に残った一つがイラク戦争での「ミドルアップダウン」について書かれた内容でした。「ミドルアップダウン」とは、ミドル層が調整役となって、戦争のかじ取りとして重要な役割を果たすようになることです。
 
具体的な内容としては以下のようになります。
アメリカ軍の伝統として、相手を圧倒的な軍事力で制圧して勝利に導いていく伝統があったといいます。
実際、イラク戦争でも圧倒的な軍事力に物を言わせてイラクに侵攻し、大規模破壊兵器を持っていると疑われていたフセイン政権を短期的に制圧しました。
 
しかし、その後のイラク統治では、このような圧倒的な軍事力で統治することが難しくなっていきます。むしろ、イラク国内での反米感情は大きくなり、テロに悩まされるようになります。
 
そうした中で、マクマスター大佐(後のトランプ政権安全保障担当補佐官)をはじめとした、現場を指揮する大佐クラスにおいて、「圧倒的な軍事力で制圧するのではなく、現地住民の困っていることなどを解決し、友好的な関係を築くことに注力することが、結果的にイラクの制圧に繋がるのではないか。」と考えるようになりました。
 
上記のように考える大佐クラスが集まった「大佐会議」が開かれるようになり、この大佐会議から提言された方針(現地との関係強化、またその取組みを実現する為の増派)が最終的に政権に取り上げられるようになります。
その結果として、徐々にイラク情勢は沈静化に繋がっていったといいます。
 
戦略は、あまりに現状に引っ張られないようにトップダウンが必要な面もあるものの、現場の実情から離れすぎていては絵に描いたもちになるどころか、様々な弊害も多々あります。
 
戦略も結局は相対するもの(戦争であれば戦場ですし、ビジネスであれば市場)の実態を踏まえた上で、そこで求められるものを提供することにつきます。
その為には、この事例にあるように、現場を指導するリーダークラスが、現場の実態を把握し、そこに求めらているもの考え、また実行できるように提言していく能力をもつことが大事だと考えます。

いいなと思ったら応援しよう!