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宇宙系の進路に対する挫折感について
宇宙系の進路って人気だと思います.JAXAとか,そういうところ.
しかし,こういう進路は採用人数がとても少なくてとても狭き門です.
私も宇宙系に憧れており,とても行きたかったのですが,JAXAの新卒採用はだめで(エントリーシートだけ通った),振られた相手に対する歪な管状のようなものを抱えていた時期があります.
学生を見てても,宇宙系に行きたがる人は多い.
この世界に過剰な選抜なく,スムーズに入るには,東大などの航空宇宙系の学科などにいるといい気がします.しかしここは進振りでも人気ですし,東大に入ったうえでまた更に勝ち抜かなきゃいけない,そんなひとがいくような世界で,そういう人でさえ全員望み通りにはならないわけです.憧れても手に入らないように感じます.劣等感と憧れに焦がされます.
しかし,今思ってみると,なぜ宇宙系に行きたかったのか.
それは,人気があるから,なんかキラキラして感じるから,映画やドキュメンタリー作品,ニュースなどで取り上げられて高尚な世界に思えるから・・
というのが無視できないのではないでしょうか.
あとは,自己意識があまりにも肥大していて,宇宙を手に入れたい,神になりたいみたいな,そういう欲求の発露として宇宙に憧れる人もいると思う.
それにより,自分の存在価値をあげることができる,ブランドものをみにつけたいのと似たような気持ちが,ある人が結構いると思う.
本当の好きと,こういった憧れを完全に切り分けて,自己分析することは結構難しいものだと思います.
自分が得をする,ブランド的価値を身に着けるために努力できるけど,実際の勉強とか社会貢献とかにはあんまり興味がない人って案外多いものだなと感じることがあります.こういう人は,見透かされがちで,ウケが悪いものです.
宇宙というのは,科学とか工学の知見を総合的につかって行く場です.なので,新卒ピチピチ未経験の人が,とつぜん引き抜かれて活躍するタイプの世界ではないなあと思う.JAXAの新卒採用の狭き門をくぐった人にはそれが許されるかもしれません.しかし,必要に応じて,専門家が充当されることの方が多い.宇宙じゃなきゃいけないと思ってすごしてると,案外宇宙に必要とされなかったりする.やはりいい大学で航空宇宙を学んでいる人は割合多いのかもしれませんが,それだけではない要素があります.
宇宙系の人たちの,なんかキラキラした感じ,自己重要感が満たされた感じに,嫉妬した私は,宇宙が嫌いになりました.沢山の夢破れた人がいて,だけど俺たちだけは好きなことをしていてハッピーだぜとアピールする様子が,嫌だと思いました.これはただの嫉妬でしょう.選抜に勝ち抜いた人が楽しく仕事して悪いことはありません.私は他人を許容する器が小さくて,きっと最初から宇宙なんて好きじゃなかったのかもしれません.
そして,すっかり私は,地上の研究に重要性を見出すようになりました.宇宙への屈折した思いを忘れるようになりました.
しかし,ひょんなことから,私も宇宙開発系の研究グループに入ることになったのです.振られた相手が,何年ごしかに声をかけてくれたような感情です.
宇宙に関することが仕事にできたら,すごく楽しくて幸せで,毎日がキラキラするのだと昔は思っていたきがします.
しかし,いざグループに参画してみると,やはり,工学の基礎的なことをみんなで地道に調整していくということに他なりません.これは責任感も感じるし,プロジェクトのために自分の人生,自分のエネルギーをお供えするということです.他の仕事となんら変わりはない.そして,キラキラなんてない.自分の名前の仕事というよりか,人類の仕事のために,自分の個性を消して,労働力を寄付するような営みだと思います.むしろ,この仕事が人類にとって憧れであるがゆえに,華やかな報酬が貰いにくい面もあるとおもいます.
やはり宇宙系には,俺は宇宙と関わっているんだぞとアピールしたいけど,そんなに地道なことはしたくない人種というのが集まってくる業界で,ギスる部分があるなあと感じます.
その点でも,地上の研究をホンワカしている業界は結構好きだなと感じました.また,大学の仕事というのは,自分の発想に基づく,自分の名前がつく仕事です.どちらがいいということもありませんが,どっちが合っているか,どうバランスをとるかどうかは仕事を選ぶうえで大切です.
最近は自分の名前がついた仕事ばかりだったので,逆に居心地がよく感じる部分もあります.学生の時は,誰がやっても関係ない仕事をするのが,とても嫌だと思っていましたが,どっちもバランスだなと今はおもいます.
宇宙に憧れて,挫折して,運よく後から関与することができた.
だけど,キラキラした世界なんてどこにもないのだと感じます.
キラキラというのは,遠くにある星だから感じるものなのだなと思います.
自分が,その中の歯車になればそれは消え去ってしまう.
外からみればもしかするとキラキラして見えるかもしれないが
そんなことは自己重要感にも,日々の充実も,関係ありません.
劣等感がなくなった視点で,この世界を見ることができたことは嬉しく思っています.
いろいろ学んで,なんかしら貢献ができるように頑張ろうと思います.