S&P500の強気相場2年経過:ウォール街が見る株式市場の行方
S&P500指数の強気相場が始まってから2年が経ちました。人工知能(AI)ブームや予想以上に強靭なアメリカ経済に支えられ、S&P500は過去2年間で60%以上も上昇し、史上最高値圏で推移しています。今回は、ウォール街のアナリストたちがこの強気相場をどう見ているのか、そして今後の株式市場の行方について探っていきましょう。
1. 強気相場の継続を予想
なぜアナリストは楽観的なのか?
ウォール街のストラテジストたちは、この強気相場がまだまだ続くと考えています。その理由は主に2つ。1つは企業収益の成長が加速すると予想されていること。もう1つは、アメリカ経済が堅調で、FRB(連邦準備制度理事会)が利下げを行う見通しがあることです。
歴史的な観点から見た現在の強気相場
今回の強気相場は、まだ平均的な期間(5.5年)の半分も経っていません。また、これまでの総リターンは約60%ですが、過去の平均は180%。つまり、歴史的に見ても、まだまだ上昇の余地があるということです。
2. ウォール街の強気な予想
BMOキャピタル・マーケッツの見方
BMOのブライアン・ベルスキー氏は、S&P500の年末目標値を5,600から6,100に引き上げました。これはウォール街でも最も強気な見方の1つです。
ゴールドマン・サックスの予想
ゴールドマン・サックスも負けじと、年末目標値を6,000に、12ヶ月先の目標値を6,300に設定しました。ただし、バリュエーションの高さから、2025年の上昇余地は限られるかもしれないとも指摘しています。
3. 高いバリュエーションのリスク
過去との比較
チャールズ・シュワブのケビン・ゴードン氏によれば、現在のバリュエーションの高さは、1960年代半ば以降で見ると、2021年とドットコムバブル期の時だけです。これは、強気相場が終盤に差し掛かっている可能性を示唆しています。
バリュエーションの解釈
ただし、高いバリュエーションだけで強気相場の終わりを予測するのは危険です。株価は予想以上に長期間、割高な水準で取引される可能性があります。むしろ、良いニュースの多くがすでに織り込まれているということを示しているのかもしれません。
4. ソフトランディングへの期待
市場が織り込んでいるもの
シティのスコット・クロネルト氏によれば、現在の市場は「ソフトランディング」、つまり景気後退を避けつつインフレを抑制できるというシナリオを織り込んでいます。
ソフトランディングの実現可能性
インフレは2022年のピークから大幅に低下し、最近の失業率の上昇も一服しています。これらの指標は、ソフトランディングの可能性を示唆しています。
5. 強気相場終了のトリガー
2つの主な要因
パイパー・サンドラーのマイケル・カントロウィッツ氏によれば、強気相場が終わる一般的な理由は2つ。金利の急上昇か、失業率の上昇です。
現在の状況
現時点では、これらのリスク要因は顕在化していません。ただし、予期せぬショックが起こる可能性は常にあります。
6. マクロ環境からファンダメンタルズへの移行
市場の焦点の変化
カントロウィッツ氏は、市場の焦点がマクロ環境(インフレや経済の強靭性など)から、企業のファンダメンタルズ(基礎的条件)へと移行しつつあると指摘します。
今後の株価上昇のカギ
「この市場がさらに上昇するかどうか、そしてどの銘柄が上昇を主導するかは、すべて企業収益にかかっています」とカントロウィッツ氏は述べています。
7. 企業収益の見通し
アナリストの予想
コンセンサス予想では、2024年の企業収益は約10%、2025年は約15%の成長が見込まれています。
投資家の注目点
重要なのは、単に収益が安定しているセクターではなく、収益成長が加速しているセクターを見つけることです。
8. AIの影響の広がり
「マグニフィセント・セブン」以外への注目
クロネルト氏は、AIの影響がAIチップやクラウドサーバーを作る企業だけでなく、より幅広い企業に及ぶことを期待しています。
AIの長期的影響
「AIの約束が利益率や収益性の指標を通じて実現されるには、2〜5年かかるでしょう」とクロネルト氏は予測しています。
9. セクター別の見通し
テクノロジーセクターの継続的な強さ
AIブームの恩恵を受けるテクノロジーセクターは、引き続き市場を牽引する可能性が高いです。
他セクターへの波及効果
AIの影響が広がるにつれ、製造業やサービス業など他のセクターにも好影響が及ぶかもしれません。
10. 投資戦略のヒント
分散投資の重要性
高いバリュエーションを考慮すると、リスク分散のため、複数のセクターに投資することが賢明です。
長期的視点の維持
短期的な変動に一喜一憂せず、長期的な成長トレンドに注目することが大切です。
まとめ
S&P500の強気相場は2年目を迎え、まだまだ続く可能性が高いようです。ウォール街のアナリストたちは、企業収益の成長やAIの影響の広がりを背景に、さらなる上昇を予想しています。ただし、高いバリュエーションや予期せぬリスクには注意が必要です。投資家の皆さんは、セクター別の動向や企業のファンダメンタルズに注目しつつ、長期的な視点で投資戦略を立てることが重要でしょう。AIの影響が本格化するまでにはまだ時間がかかりそうですが、その潜在的な可能性は非常に大きいと言えそうです。
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