ボルドーワイン🍷ヴィンテージ解説(2021~2012)
今回は、フランスのボルドー地方のヴィンテージについてです。
2021年から2012年までを一挙解説します(最新2022年は、5月にアップ予定)。
リクエストがあれば2011年以前もやりたいと思います。
ヴィンテージとは、収穫年を指します。
つまり、「2015ヴィンテージのワイン」は、2015年の秋に収穫されたブドウで仕込まれたワインという意味です。
ワインはブドウの出来をダイレクトに伝えるため、ブドウの出来を知ることは、ワイン選ぶにも役に立ちます。特にボルドーは年による差が大きく、品質そして価格にも影響するため、知っておいて損はないでしょう。
ただし、注意点が2つあります。
1つは、これはあくまでもボルドー全体の総評であって、個々の産地、造り手によって品質も個性も様々です。「飲んでみないと分からない」、それもまたワインの楽しみです。
もう一つは、これはいつも言ってることですが、この手の情報を使ってマウントを取るようなことは慎みましょう。例えば「難しい年のボルドーを選ぶなんて、君はワインが分かってないね」みたいなことを言えば、きっとその人は金輪際あなたとワインを飲んでくれないでしょう。
ワインは大人の飲み物です。ワインの情報は、あくまでもご自身の楽しみとして、あるいはあなたの周りの人たちのために活かしてください。
2021年「栽培家の年」
栽培農家にとっては悪夢のような年で、霜、ベト病、花ぶるい、大雨など考えられるほぼ全ての脅威にさらされた。
それでいて、テイスティングで出てきたワインには素晴らしいものがいくつもあったのは本当に驚くべきこと。
気候条件の困難さは2013年に匹敵するほどだったが、栽培者たちの努力・注意力・判断力が、気候条件から想定される品質を大きく超えるワインを作り上げたと言える。
とはいえ造り手による差が大きいため、バイヤー、売り手は注意が必要。
キーワードは「涼やかな味わい、クラシック、フレッシュさ」
左岸はカベルネ・ソーヴィニヨンの比率高かった。
辛口白、グラーヴとペサック・レオニャンの赤白は優れていた。
ソーテルヌは生産量が激減したが品質は素晴らしかった。プロ向けの試飲会でも出展されることは稀なので、もし将来どこかで見つけたら試していただきたい。
2020-2018 偉大な三部作
「トリロジー(三部作)」と呼ばれる、3年連続で素晴らしい天候に恵まれた年たち。
ボルドーの赤ワインを選ぶのであれば、注意して銘柄を見比べる必要はない。
そもそも素晴らしい年とは?
⇒天候に恵まれ、病気の心配が少なくブドウは健全で、かつよく成熟した年(よくボルドーでは「5条件」と言われますが、専門的なのでここでは割愛します)
⇒素晴らしい年は、多くのワイナリーがその恩恵にあずかれる年とも言える
つまり無名のシャトーやあなたが初めて試すシャトー、リーズナブル価格のシャトーを買う良い機会
この3ヴィンテージにも若干の差があるので軽く。
2020年…夏にほとんど雨が降らず乾燥し、風味はよく成熟。白は難しかったように感じたが、最近飲んだものはどれも良かった。
2019年…高いアルコール度数と酸のバランス
2018年…全体的にボリューム感があり、分かりやすく恵まれた年。ただ春にベト病が広がり、有機栽培を実践する農家たちはかなり苦しんだ
2017「クラシック・イヤー」
フレッシュさを感じるタンニンがあり、クラシックな味わい。
「クラシック」とは?
⇒「昔ながら」と言い換えても良いかもしれません。クラシックと表現するボルドーワインは果実味は控えめで、酸とタンニンとの均整がとれていて、熟成によって気品をまとうようなスタイルです。
全体的に黒いベリーより赤いベリーの風味が強い印象。タンニン、酸味、果実味のバランスが良く、個人的には好きな年です。
この年は春に霜の被害があり、産地によっては生産量に大きく影響。夏はよく乾燥して、9月にフレッシュさを取り戻すシャワーが降った(結果、カベルネの出来が良かったように思います)。
2016&2015「ビッグな兄弟」
この2つは隣り合う素晴らしい年として知られている。
どちらも夏は暑く乾燥し、天候に恵まれた年だが、プロの間では好みが大きく分かれているのが面白い。
2015年はリッチで豊かな果実味、よく成熟している。メドックではフレッシュさもあり、バランスの取れた素晴らしいワインがたくさんある。
2016年も凝縮した果実味があってスケールの大きい味わいだが、タンニンが多く、酸もしっかりしていて、15年よりも長期熟成ができるポテンシャルを持っている。にもかかわらずアルコール度数は15年よりも低いケースが多く、タンニンの質も高いため、早くから楽しめるワインも多い。
ここまで読めばお分かりいただけると思いますが、ぼく個人としては2016年にやや肩入れしています(笑)。
2014「カベルネイヤー」
カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランともに良い出来だった。
夏は涼しく、熟度が低かったり、ベト病が起きたりと、栽培家たちは不安な日々を過ごしたが、9月になると「インディアンサマー」と呼ばれる熱波がやってきて、ブドウの糖度はぐっと持ち直し、風味も成熟した。その結果、収穫が遅いカベルネ系品種が特にその恩恵を受けることとなった。
白ワインは酸味をしっかりと保ち、素晴らしい年に。
2013「過小評価されている年」
実は日本人好みで、今買って飲むならBest Buy!
2000年以降でもっとも多くの困難に直面したヴィンテージ。まず春は雨が多く、花ぶるいや結実不良が見られた。ベト病、雹なども各地で見られた。7月は例年よりも日照量が多かったが、8月・9月は涼しく雨が多かったため、収穫時には難しい判断に迫られた。
アルコール度数が低く、柔らかいタンニンとフレッシュな酸が特徴。
メドックではメルローの生産が落ち込み、カベルネ・ソーヴィニヨンの比率が非常に高かった。トップクラスのワイナリーたちは、その中で品質を維持するために腐心し、バランスの取れたクラシックなボルドーを生産。価格もお値打ちなことが多いため、今飲むなら2013年はベスト・バイと言える。
辛口の白ワインは秀逸。
2012「隠れグッド・イヤー」
バランスが良く、優れた造り手であれば期待を裏切らない良い年。
残念ながらあまり注目されていないが、メドックはフレッシュな黒系果実とタンニンのあるクラシックなワインが多く、右岸は総じてメルローの出来が良かった。
春は涼しく湿気も多かったので、ベト病の被害があり、メルローの収量は少なかった。夏は暑く、乾燥していたのでブドウはしっかり成熟したものの、収穫期の気候が不安定だったため、造り手による差が生まれた。
ということで、直近10年間のボルドーワインの評価を見てきました。
冒頭でもお話したように、こういったヴィンテージ評価はボルドーという広大な産地の一般的な総評であって、例外と言えるワインが山のようにあります。
ヴィンテージ評価を、あくまでも、あなたがワインを選ぶ際の「軸」と考えていただき、「この年は難しい年と聞いていたけど、この造り手は素晴らしいワインをつくるなぁ」と、1本1本のワインの個性や、造り手の努力を感じ取る一助としていただけたら嬉しいです。
それではまた。
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