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「ぶらんこ」というチャラい絵の、ささやかな妥協(巨匠の波乱万丈伝③)
ジャン・オノレ・フラゴナール(1732‐1806)
フランス革命をまたいで生きた「ロココ主義」の代表的な画家。代表作がこちら⇩
≪ぶらんこ≫1767 ウォレス・コレクション(英)
どんな絵か、少し眺めると想像つくでしょうか。
天使像や生い茂る緑。そうここは金持ちの庭⛪はっ
中央の女性も明らかに裕福で、何の不自由もない様子でブランコを漕ぐ👩
左下、オーバーリアクションで眺めるいかにもチャラそうな若い男👨
きっとパンツの色でもわかって歓声を上げているのだろう。ちっ
後ろにも男がいる。こいつもノリノリかと思いきや、これは女性の夫です。
つまりどこぞの若い男に妻を寝取られそうな夫が必死に引き留めている、でも妻の心はもう明らかに新しい男を向いている。
そんな絵なのだとか。けっ
(こういうのを見たときに湧く感情は見る人の属性を示すのだろうか←)
片方脱げてる女性の靴は「処女性の喪失」を、指を口に当てた天使は「秘密」を、花に紛れて吠える右下の犬は、気づかれることのない「警告」を暗示しているそう。
紛らわしいけどここに犬がいる。吠えてますが相手にされてません
…あまりにも不埒な絵である。🤷かっ
これはある貴族が愛人との関係を示す肖像画を描いてほしい、と注文したのに応えて描かれたものでした🖼ただ注文では後側にいるのは夫でなく司教で、引き止めるのではなく背中を押しているという構図だったそう。
酷くてゴメンナサイ
フラゴナール自身はきっと真面目な人だったのでしょう。まだ35歳。
聖職者は貴族ともうひとつの特権階級なわけで。キリスト教の教えに背く不貞を堂々と描くわけにもいかず、コレが彼の限界だったようです。炎上して仕事失ったら困るものね
(ますますチャラい絵になってる印象を受けたのは自分だけ…?)
そんな苦慮は見事に奏功し、この絵は貴族階級に非常にウケました!
この作品以来、フラゴナールには当世を代表する画家としてたくさんの依頼が舞い込むようになります。例えば「最愛王」と呼ばれたルイ15世の愛人、デュバリュー夫人もフラゴナールを重用したひとりでした🏰
国の財政が破たん目前ななか、貴族の寵愛を受け、その優雅な暮らしぶりを華やかに描いたフラゴナールですが、
その環境が激変したのが1789年のフランス自由革命でした。
貧しい市民の怒りは絵画の潮流にも直撃し、ダヴィドらの「新古典主義」やドラクロワらの「ロマン主義」に移り変わるなか、存在感を急速に失っていきます。
(ダヴィドの描いたナポレオンの肖像画と、ドラクロワの民衆を導く自由の女神。雰囲気ががらりと変わりますよね🇫🇷)
最後にはルーブル美術館にあった家も家族ごと追い出され、貧しさに打ちのめされるまま亡くなったそう。まさに激動時代の波の中に生きた画家でした。
ロココ期の絵画は光の表現が柔らかくて、楽しい気持ちになりますよね。私の属性もあって悪態気味に投稿しましたが、とても好きです。笑