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(Abema出演まとめ)「日本はもう終わり」と叫び気持ちよくなる人たちをどう考えるべきか?

12月14日に、ネットテレビ局ABEMAの討論番組「ABEMA Prime」に出演してきました(Zoomですが)。

YouTube動画は以下にありますが、これは生放送から半分ぐらいにカットされていて意味がわかりづらいところがあるので、良かったらこちらのリンクからフルバージョンをアベマのサイトかアプリで見ていただけると嬉しいです。

司会の平石直之さんの的確な仕切りと、あと実際出演してみるとEXIT兼近さんの「聞き上手」的な雰囲気の出し方が凄い良い効果を持っていて(人気あるのわかるなあ、と思いました)、なかなか楽しく話せました。

出演者のかたがた、スタッフの皆さん、呼んでいただいてありがとうございます。

さて。今回の番組のテーマは、最近の日本のネットでよく見られる、

「日本はもう終わりだ」「こんな国滅びるしかない」

…みたいなことを大げさに言って気持ちよくなっちゃう人々、つまり最近のネット用語で言うところの

『衰退ポルノ(日本はこんなに衰退している!と叫ぶことで気持ちよくなるタイプの言論)』

…的な風潮に対してどう思うか?という話でした。

今回記事では、番組出演の感想と、番組内では語り尽くせなかったこの「衰退ポルノ問題」について、我々がどう対処していけばいいか?という話について考えます。

(いつものように体裁として有料記事になっていますが、「有料部分」は月三回の会員向けコンテンツ的な位置づけでほぼ別記事になっており、無料部分だけで成立するように書いてあるので、とりあえず無料部分だけでも読んでいってくれたらと思います。)

1●「衰退ポルノブーム」は、前向きに変わっていくための過渡期として必要なこと?

今回の番組の趣旨としては、

「衰退ポルノブームはけしからん。自虐をやめて前向きな話をしようぜ」

…っていう展開を目指していたんだと思うし、衰退ポルノを加速するメディア論調はけしからん・・・という役割を僕は期待されてたところがあると思うんですね。

実際、今回出演依頼が来たのは、去年出したこの本の抜粋である以下のウェブ記事がスタッフさんの目に止まったからなんですが…

この記事を書いた頃は、コロナ対策その他において、日本のメディアが完全に機能不全になってた事にものすごい怒ってたんで、僕はかなり強い口調で批判してたんですよね。

日本の対策が完璧なはずはないし、どこを改善するべきか考えなくちゃいけなかったわけですけど、「日本の10倍死んでる国」の事例を全く無批判に持ってきて「日本は間違ってる」「こんな国は最悪だ」とか言ってたら冷静な改善とかできないじゃないですか。

欧米と日本が対策のやり方に違う部分があったとして、

・なぜそうなっているのか?
・その違いによってむしろ日本側の死者が抑えられている側面はないか?

…をも冷静にフラットに検証した上で、その先で「どう改善していくべきか?」を考えなくちゃいけない。

そのあたりで具体的な検証が全くない状態で、「政府のやり方はけしからん」しか言ってない状況はどうなんだ、っていうような話を当時の僕はしていて、番組でもそういう話をすることを期待されてたところがあったんだと思うんですが…

ただなんか、当時とは状況も僕自身の考え方も変わってきた部分もあって、

「衰退ポルノブーム」

…も過渡期的には必要な事なんじゃないかと思うようになりました。(コロナみたいな非常時には最悪でしたし、今も改善が必要な部分は沢山あるでしょうけど)

2●「”日本はダメだ”と思う存分言ったら、”ダメって言ってるだけじゃダメ”と気づく」

なんか、結局内容はどうあれ「今のままじゃダメだよね」っていう気持ち自体が共有されること自体は良いことかも、というように最近は思うんですね。

「どうすればいいかはわからんが、なんとかしなくちゃ」みたいな気持ちをとりあえず共有しているんだ、と思えば、「衰退ポルノ」も一応は意味がある。

幕末の日本だって、強烈に盛り上がってた「志士」運動家が言ってた「ガイジン見たら全員即切り捨てるべき」みたいな「言ってる内容」は全然後の時代に活かされてないけど、「このままじゃイカン」というエネルギーだけはとりあえず発露することで「機運を高める」こと自体が必要だった部分はあったと思うので。

で、その上で、「ダメって言ってるだけじゃダメだよね」っていう状況は、「ダメだダメだ」って言いまくった後に出てくるはずですよね。

それは、「ただ日本はダメだって言うことしかしない人たち」が自業自得に信頼を失っていく先で、「具体的な改善策を積み上げていった先」で初めて見えてくるものだというか。

番組ではアメリカの宇宙産業の話が出てましたが、アメリカもスペースシャトル墜落してからかなり長い間宇宙産業が停滞していて、宇宙に人を送るにはロシアのロケットを使うしかないっていう状況が続いてたんですよね。

それをほとんど独力で覆したのがイーロン・マスクなんですが、そのあたりは以下記事なんかが昔よく読まれたのでぜひ読んでいただくとして…

イーロン・マスクがスペースXを創業した頃は、アメリカの航空宇宙産業は惨憺たる状況で、リスクを取ってそこにお金を使う意味ってないよね、みたいな感じだったんですよね。

だから、

まず、「この国ダメだよね」っていう事だけ言う人達があふれる

それに対抗して「いや、ダメって言ってるだけじゃダメだよね」と思う人達が集まって具体的な改善を積んでいく

成果が出る

「人々の考え方が変わる」

…という、こういう順番で話を進めていくことが大事なんじゃないかと。

番組内でもちょっと触れられてましたが、「衰退ポルノ」の前には「愛国ポルノ」としか呼べないような、あまり現実的とは言えないレベルのものも含めた「日本スゴイ論」みたいなものも溢れていたわけで、どっちがいいか、っていうとどっちも良くないですよね。

動画では碓井シンシアさんが「日本はとにかく自分たちを客観的に見れない国」って言ってましたけど、過剰な「日本スゴイ」も「日本終わった」も両方ちょっと客観的じゃないという意味ではオカシイですよね。

一時期の「愛国ポルノ」風潮が剥げてきて、今度は逆の「衰退ポルノ」風潮に振れちゃってるところもあるかもしれないけど、そういう状況になってこそ、

「ダメだダメだって言うだけじゃダメだよね」

…という具体的な積み上げが可能になる道が拓けるってことなんじゃないかと思います。

そしてちょっと辛辣なことを言うと、今の「衰退ポルノ」ブームの状況の中で、

「この人、日本はダメだ、って言うだけで、別に日本に対して何も貢献しようとも思ってないよね」

っていうタイプの人が可視化されることが大事なんですよね。

そして、

そういう「衰退ポルノ的なことしか言わない人が徐々に信頼を失っていくことによってのみ、「具体的に何かを積もうとしている人」たちが消去法的にフレームアップされて現実を変えていける流れになる。

そういうプロセスに持っていければいいんじゃないかと思います。

3●「理屈」と「日本人の気持ち」をどう繋ぐか?を皆で考えるべき

番組後半は、「自虐ネタ文化」のお笑い論みたいな話になってて、YouTubeだけ見てるとちょっと話が拡散してってるように見えますが、フル動画を見ると、弁護士でLGBT活動家の南和行さんがかなり印象的な話をされていました。

南さんはゲイ当事者としてLGBT関連の啓発運動をされてる方なんですが、各地で講演とかするときに、「どんな難しい話をされるんだろう?」というように身構えている観客に対して、「個人レベルで打ち解けるような話」があったらそれだけで全然違う印象として終わる・・・みたいな話をされていました。

「理屈の言葉を話せる人」の意見だけを通してしまうと日本社会が受け止めきれないときがあるので、「理屈」と「日本人のこころ」みたいなのをいかに繋いで、「丁寧に理屈を浸透させていく」ことが大事だ、という話を僕も番組内でしていましたが、それの良い例が南さんの講演の話だと思うんですね。

とはいっても(YouTubeコメント欄で警戒してる人がいたんですが)これは「理屈をグダグダにする」という話ではなくて、今みたいに「理屈」と「日本人のこころ」が分離した状態だとどうせグダグダになり続けるので、「あと一歩理屈が迎えに行く」コミュニケーションをすることで、むしろ「ちゃんと理屈を通していく」ことが可能になるんだ、という話なんですよね。

僕は外資系コンサル出身で、今はローカルな日本の中小企業相手の経営コンサルタントで、以下の本に書いたようにクライアントの中には10年で150万円ほど平均給与を上げられた成功例もあるんですが…

日本人のための議論と対話の教科書

そういう「成功例」を見ていると、

最終的にやってることの9割5分は頭が良い人がちゃんと考えておいたことである事はぶっちゃけ多い(笑)

…んですが、ただそれをただ「勉強できる人の範囲内だけで全部考えて、あとはただやらせるだけ」にしていくと、「残りの0割5分」の部分で大事な細部のブラッシュアップができなくて、うまく現実と合致させられないところがあるんですよね。

「理屈じゃねえんだよ」って理屈を全拒否にしてグダグダになってしまう日本あるあるは、むしろそういうときに生まれるのだと私は感じています。

「理屈で考える人」と「日本人のこころ」との間の双方向的なやりとりを生み出していくことは、むしろ「理屈をちゃんと隅々まで通す」ために必要なことなんですね。

結果として実現したものは、「9割5分まで勉強できる人が考えたこと」であっても、「残り0割5分」の部分で、「日本人の現場のこころ」と共鳴関係を維持して、細部のブラッシュアップができるように持っていけるかどうかがめっちゃ重要なんですよ。

そこの「双方向性」が実現するかどうかで、「結果」は全然違ったものになってくるからです。

そのあたりが、番組の中で「”頭がいい人”の方が”ミルクボーイの漫才”みたいに”一緒に考えてあげるから”という感じで向かう部分が日本には必要」っていう話をした部分ですね。

こないだ以下の記事で紹介した、普通のスーパーの”倍”も売り上げる凄い地域スーパーのクックマートも、こないだ社長さんと会食してきたんですが、「知的に仕切る部分は一切揺らがず知的に仕切って」るんですが、そうやって「仕切って」いるからこそ安心して「現場発の工夫」をバンバン吸い上げられるサイクルにもなっている。

「経営」的な話以外でも、番組に出てきた話で言えば南さんの講演の「内容」は、グローバルにほぼ共通なLGBT啓発運動に近いものだと思いますが、ただそれが「人々のこころ」にまで具体的に接続されるようなものになっているかによって、その「浸透度」は大きく変わってくるんですよね。

正直言ってLGBT運動は、海外においてはそこで「こころ」レベルの等身大の共鳴みたいなものを軽視しすぎて上から目線で断罪しまくった結果、余計に「必死に逆を言ってやる」みたいなバックラッシュが止められなくなっている側面はあると思います。

LGBT関連にしろ、経済経営関連の改革にしろ、そういう「理屈で考える人」の合理性から、「日本人のこころ」までのラストワンマイルをいかに地道に繋いでいけるか、そこが分断した状態にならないか?ということが大事なんですね。

4●「感情問題」をクリアすれば、あとは「具体的な制度の工夫」の話を積んでいこう

そうやって「感情」レベルで分離しないようにしていくっていう話をやっていった上で、あとはメディアの役割としては、冒頭に書いたように「誰が悪い」って話にするんじゃなくて「具体的な制度とか仕組みとかがどうズレているのか?」という工夫についてちゃんと考えるようにしていくことが大事だと思います。

たとえば僕が出演した部分の一個前は自民党の裏金問題をやってたんですが(生放送では続きでしたがYouTubeは別動画に分離されてます)、

「自民党がけしからん」という話も大事ですけど、「どういう制度にしたらいいのか」を掘り下げるのがもっと大事ですよね。

こっちの動画でも弁護士の南さんが、「現実的な落とし所」についてアレコレ考察していて興味深かったんですが、それに対して青山繁晴氏が「いや、俺の場合はできたんだから本当は派閥なしでも政治はできるはずなんだ」みたいなことを強く主張していて、なかなか面白かったです。

確かに、自分でウェブ発信できて、個人で数万とか数十万単位のファンをつけられる時代には、過去の派閥とは何らか違ったメカニズムで動かせるようになってるはずだ、という青山氏の主張はそれ自体ある程度説得力はあると思うんですね。

ただ、じゃあ派閥的なものを突然一切排除してしまうと、そういう「インフルエンサー型の注目を集めること第一優先」みたいなモメンタムがそのまま国政に反映させられるようになっちゃうかもしれずそれでいいのか?という大問題はあると思います(笑)

そういう意味で、南さんの意見と青山さんの意見の、間ぐらいで具体的な制度をどういう風に構築していけばいいのか?というのを、今国民はちゃんと考えるべきなんですよね。

で、アベマにも色々問題はあると思いますが、「自民党がけしからん」という話だけをするんじゃなくて、そういう「制度の細部がどうあるべきなのか」が大事なのか?っていう視点はちゃんと持ってる放送局ではあると思うんですよ。

これはアベマに限りませんが、伝統メディアの中の人でも、僕の世代以下ぐらいになってくると、そういう視点は当たり前に持っている人が増えていると思います。

「色々と曲解しまくってでも日本政府が悪いっていうことをいかに強くいえるか競争を徹底的にやるのがメディアの役割」

↑こういう発想のメディア人は世代が下になるごとにどんどん減っている実感がありますしね。

そういう「メディアの考え方の変化」をもっと後押ししていって「誰がけしからん」と叫んでみせるだけでない「具体的な細部の話」ができるようにしていくことが大事ですよね。

過去の僕の記事で言うと…

たとえば日本の医療制度をどうするべきか?とか…

電力問題をどうするか?とか…

日本の地方創生をどうするか?とか…

日本の女性活躍をどう考えるか?とか…

そういうアレコレについて、

「あいつが悪い。けしからん。だから日本はダメなんだ」

ではなくて、

「制度上こういう部分がスレ違っているので自分たちの良さが出せなくなっているのでそこから変えていこう」

…という具体的な話を積んでいけるかどうか。

そうやって前向きな話ができる人の間でちゃんと改善を積み上げていって、イーロン・マスクがロケット打ち上げに成功したようなところまで行けば、やっと「幻想ではない日本スゴイ論」がやれる時代も来るはずだと思います。

だから、「衰退ポルノ」で盛り上がるのもそういう変化の「入り口」だと考えたらいいと思うんですね。

むしろ今回の番組企画のように「衰退ポルノじゃ何も生まれないよね」っていうところまで来ているのは、良い傾向だと言っていいはずだと思います。

ただ「衰退ポルノ」的なことを言って悦に入ってるような人は、一時期持て囃されても結局自身の信頼をどんどんすり減らしていくだけになる運命なので。

「衰退ポルノ」でもなく「愛国ポルノ」でもないリアルな議論を積んでいける環境に持っていければいいですね!

5●こういう機会がまたあったらどんどん呼んでください

長い記事をここまで読んでいただいてありがとうございました。

ところで、前にTBSの番組に出た(以下記事参照)ときにも言われたんですが、

倉本さんて、動画出演NGの方ですよね?なので取材だけでも・・・

って妙に言われるんですが、別にそんなつもりはないので、よろしければこういうのに呼んでいただければ嬉しいと思っています。

前回のTBSのときは何も告知してなかったのに高校の部活の同窓会LINEグループで盛り上がってくれてたし、今回は幼馴染のヨシダくんが共演した青山繁晴氏の大ファンだから番組見てて興奮してうちの母親に連絡してきてくれたらしいし、そういう効果って侮れないなと感じてるんですよね。

こういう動画メディアとか講演とかでリアルに話すことでしか決してメッセージが伝わっていかない層って明らかにあるなと感じているので、積極的に誘っていただけると嬉しいです。(こちらからご連絡ください)

TBSでもアベマでも、自分がいることである程度話全体がポジティブな方向に向きつつ、出演者の方々の持ち味もうまく出せるような流れに貢献できたところがあると思うので、今後もある程度こういう機会を持っていければと考えています。

よろしくお願いします。

以下の部分では、最近の「安倍派裏金問題」みたいなものが今のタイミングで噴出する本質的な理由について、もうちょっと考察してみたいと思っています。

今回の問題について、「今噴出した」ってことは、僕は結構ポジティブに感じてるんですよね。

これは、「衰退ポルノをやりきった先に希望がある」って話と同根の問題で、それを今の世界情勢とか国内情勢と関わらせて深掘りしてみます。

YouTubeではカットされてたけど、アベマ動画本編ではほんのちょっとだけ冒頭に話していたようなことを深掘りした内容となります。



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また、この連載の趣旨に興味を持たれた方は、コロナ以前に書いた本ではありますが、単なる極論同士の罵り合いに陥らず、「みんなで豊かになる」という大目標に向かって適切な社会運営・経済運営を行っていくにはどういうことを考える必要があるのか?という視点から書いた、「みんなで豊かになる社会はどうすれば実現するのか?」をお読みいただければと思います(Kindleアンリミテッド登録者は無料で読めます)。「経営コンサルタント」的な視点と、「思想家」的な大きな捉え返しを往復することで、無内容な「日本ダメ」VS「日本スゴイ」論的な罵り合いを超えるあたらしい視点を提示する本となっています。

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