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[無料]架空遭難 中高年2名、天狗岳の下りで道迷いから行動不能

架空遭難とは?

架空遭難とは、こんな遭難が起きたらどうする?当事者だったらどう行動するだろう?自分だったらどうだろう?と想像することで、山岳遭難を疑似体験してみようという試みです。

今回の条件

  • 50代男1名、60代女1名

  • 1月中旬の八ヶ岳、天狗岳

  • 前日は小屋泊して翌朝7時に出発

  • 天気は曇り、強風(強風はだいたいいつものことです)

  • 8:50に西天狗に登頂後稜線に戻り、途中で天狗の奥庭方面に下山し、視界不良の中でルートから逸脱

  • 装備はピッケル、アイゼン、ハードシェル、ツエルト、ファーストエイド、行動食、お湯、防寒着、ココヘリ。スコップとビーコンはなし

  • 逸脱後標高差150mをルートを外れて行動停止、現在地不明

  • 雪が深く行動不能。携帯圏外

です。

天狗岳はどんな山?

八ヶ岳の南北中央に位置しており、険し目の南八ヶ岳、優しめの北八ヶ岳の中間的難易度の山です。険しい東天狗岳、たおやかな西天狗岳ぼ東西双耳峰となっています。

西天狗岳から見た東天狗岳

冬山初心者でも比較的登りやすいため、日帰りまたは黒百合ヒュッテをベースとして多くの登山者に登られています。しかし天候によっては強風と視界不良に見舞われ、稜線上は樹林帯も無いことから厳冬期の遭難リスクはしっかりあります。初心者向けの山と侮ってはいけません。

まぁまぁな斜面もあります。ピッケルと前爪アイゼンは必要。ストックと軽アイゼンで登ることも出来ますが、あまりオススメしません。

天狗の奥庭とは

厳冬期、多くの登山者は中山峠からの稜線沿いを登って、黒百合ヒュッテに戻る場合は下りも稜線沿いを通ることが多いようです。稜線の西側にある窪んだ地形が天狗の奥庭で、稜線沿いよりも複雑な地形となっています。窪地は池になっており、無雪期や雪が少ない時は池を見られます。

左の方に池っぽいものが見える。
天狗の奥庭を見下ろしている状態。右手に池の窪地がある。

通る人が少ないのでトレースは薄め、岩と樹林によってやや見通しが悪く、視界不良時は正確にトレースを追っていくのが難しいです。

山頂方向を見ている状態。

行動不能、さてどうしよう?解答例

行動不能と設定してしまったからには行動不能なのでしょう。

つまり、疲労と吹き溜まった雪で動けなくなってしまったということになるのかなと思います。この2人は視界不良からコースを外れ、勢い、そのまま標高差150mを下ってしまいました。雪が多少深くても下ることは出来てしまったりします。

10時にコースアウトしたので、11時くらいには行動不能になった、または30分くらい足掻いて諦めた感じでしょうか。まだ日没までには時間があります。

雪崩のリスクは?

周辺の雪崩傾斜を見ると、雪崩のリスクはそれほど大きくなさそうですが、谷ですから、積雪量や雪の状態によっては怖いですね。雪崩についてはあまり詳しくないので、詳しく書けません😅。とりあえず、この谷を更に下るのはやめたほうが良さそうです。(というのは今回の遭難者には分からないことですが)

オレンジや赤で色が着いている斜面は雪崩が起きやすい斜度です。斜度だけで色分けしているので必ずしも起きるわけではないし、色が着いていなくても雪崩れる可能性はあります。

↓雪崩傾斜をオーバーレイした地理院地図のリンクはコチラ

現在地は不明

現在地が分かっていないので、自分達がどこにいるのかは分かりません。設定から考えると、GPSの類は持っていないか使えないということになります。

現在地が谷底で、視界不良で景色も見えていないので降りた方角も分からない状態です。ただし、太陽が見えればワンチャンあるかも知れません。太陽の位置から予定より西にズレてしまったと分かって上で、紙の地図を持っていれば現在地の当たりを付けられるかも知れません。

たぶん、こんな感じで間違えて谷に降りたと思われます。

現在地が分かっていても分からないままでも、行動不能ですから休憩するしかありません。ツエルトはあるのでとりあえず被って、温かいものを飲んで行動食を食べて休みましょうか。雪山で谷にいるのはあまり気分がいいものではありませんが、行動不能という設定なのだから仕方ないですかね。

休憩しても動けないようなら?

休憩しても行動出来ないくらい消耗してしまったなら、もうその場でビバークするしかありません。50代や60代という年齢、カロリー不足、残りの体力などを考慮すると、停滞して体力を温存した方がいい可能性もあります。ただ、それも装備や食糧事情、今後の天気次第では低体温症のリスクがあるので判断が難しいですね。

動けるようになったのなら、なだらかな尾根に登ってみる?

もし少し動けるようになったら、傾斜的には南側、2350と書いてある方に登るのが良さそうです。休んで動けるなら行動不能とは言わないだろう、と怒られそうですが少しは動けたほうが話が展開しやすいので😅

北側の斜面を登っていくのは、雪が深い場合はなかなか難しそうです。だったら下るのも難しかった気もしますが、そこは設定とパニックで下ってしまったってことでご容赦ください。

樹林帯ですし、西側には尾根もあるので風を遮ってくれるような気もします。

ビバークするかまだ足掻くか?

30mばかり登ってなだらかで広い尾根に出たとしましょう。まだ現在地は分かりません。一時的に視界が晴れれば自分たちがいる場所を推定できて、東へ復帰できれば自力で帰れる可能性もあります。

ただ、復帰するには谷を通る必要があり、時刻は早くてもおそらく14時くらい。体力が低下した状態で、明るいうちに雪深い谷を渡って50mほどを登り返せるか…難しいかも?

どこに行くにも厳しい地形。

こうなったら、もうビバークするしかない気がします。50代男性に超体力があって深い雪でもガンガンにラッセルしていけるのなら復帰出来るかも知れませんが、最初に行動不能になった点を考えると、そこまでの体力や登山経験は無さそうです。60代女性でも強い人はいますが(本当に、マジで?って先輩達もいますからね…)、一般的には腰以上のラッセルを長く続けるのは厳しいと思います。

ビバークすると決めたなら、木や岩、地形、雪などを利用し、ツエルトと合わせて出来るだけ風を避けられるようにします。雪が硬ければピッケルのブレードで掘れば、そこそこ快適なサイトを作れるかも知れません。雪の量や固さによっては雪洞もいいかも(体力と相談)。雪がサラサラ過ぎたら、頑張って踏み固めるしかないですかね。それも体力を使いますが。

サーモスのお湯と行動食は持っていますが、それだけで極寒の夜を耐えるのは厳しいかも知れません。ガスコンロとコッヘルがあるとだいぶ違いますね。リーダーはアタックザックにツエルトだけでなく、コンロ、コッヘル、シュラフカバー辺りを入れておくとよいでしょう。

ビバークしたら、あとはココヘリが頼りですかね

今回の設定ではココヘリを持っていることになっています。登山計画を出していて、家族が帰ってこないことを心配したらなら通報してくれるはずです。

ココヘリは会員証端末が発する信号(IDを含んだ920MHz帯)を受信機で受診することで、最大16kmから距離と方角を知ることが出来る捜索システムです。捜索を始めるには登山計画の提出が必須です。

計画を出していないと捜索のしようが無いので、必ず計画を作って警察やコンパス、ココヘリのマイページから提出してください。もしくは、最低限家族には送っておきましょう。口頭で「八ヶ岳に行ってくる」ではだめですよ。文字情報で「八ヶ岳の天狗岳に登ってきます。黒百合ヒュッテ泊で天狗岳に登って、ピストンで渋の湯に戻ります。14:55のバスに乗ります」など、具体的なコース名を残してください。

捜索が始まって、ココヘリ端末が信号を出していたら早期に現在地が判明します。このとき、端末が雪で埋まっていたり、お尻の下に敷いたザックの底に入っていたりすると信号の発信が阻害されます。出来るだけ空に近い場所に入れておきましょう。

現在地が分かれば救助が来るはずですが、救助側の都合や天気によってはすぐには来られない場合があります。ココヘリは位置の特定までで、実際に救助に来るのは警察や消防の山岳救助隊です。彼らには彼らの都合があります。

来られなければもう一晩掛かる可能性もあるので、厳冬期のアタック装備はビバークについてよく考えたものにした方が良さそうです。天気と体力の回復、現在地の推定次第では自力下山も目指せるかも知れませんが。

Bさんの手記

ここでBさんの手記をAIに書いてもらいました。

1月20日 7:00
私たちは黒百合ヒュッテを出発し、始めての厳冬期天狗岳登山に胸を躍らせていました。Aさんと私は軽快な足取りで進みました。天気は曇りで、強風が吹いていましたが、私たちの気持ちは高まるばかりでした。

8:50
西天狗岳に登頂し、一時の達成感に浸りました。しかし、天候は次第に悪化し、強風は私たちの進行を妨げました。私たちは稜線に戻ってから天狗の奥庭方面に下山しましたが、視界不良からいつの間にかコースを外れてしまいました。

10:00
下りながらもおかしいなと思っていましたが、かなり下ってからいよいよ逸脱したと自覚し、不安が私たちを襲いました。私たちは正しいルートを見つけようと試みましたが、深い雪が行動を妨げました。

11:00
深い雪に阻まれ、行動不能になりました。私たちは力尽き、現在地がわからないまま、座り込みました。1時間ほど休んだ後、南側の斜面が緩く見えたため、そちらに進むことにしました。が、進むにつれて力は消耗し、不安は増すばかりでした。

14:00
なだらかな尾根にたどり着き、ここでビバークする決心をしました。私たちはツエルトを設営し、風雪をしのぐ準備を整えました。しかし、心の奥底では、この厳しい寒さの中で一夜を越えられるか、不安が募るばかりでした。

16:00
日が落ちるにつれ、周囲は一層の寒さに包まれました。私たちは防寒着を身につけ、行動食を分け合いながら、体力の維持を図りました。しかし、寒さは容赦なく、身体の芯まで冷えていく感覚がありました。お湯を飲んで少し体を温めようとしましたが、その温もりもすぐに消えてしまいました。

18:00
暗闇の中、風の音だけが私たちの耳に響き渡りました。私たちはお互いに寄り添い、体温を共有することで寒さに耐えました。しかし、風がツエルトを揺らすたびに、不安がよぎりました。私たちは話をして気を紛らわせようとしましたが、心の中は不安でいっぱいでした。

夜通し
一晩中、眠ることはほとんどできませんでした。寒さと不安で心身ともに疲れ果て、夜が明けるのをただじっと待ちました。Aさんと二人で、これまでの人生や家族のこと、そして山への想いを語り合いました。そんな会話が、この厳しい状況の中での唯一の慰めでした。

1月21日 7:00
朝日が尾根を照らし始めた頃、私たちは再び生きている実感を抱きました。しかし、体は凍え、動くことさえ困難でした。私たちの手には軽い凍傷があり、それがこの遭難の痛みを物語っていました。

15:00
永遠とも思える待ち時間の後、救助隊が到着しました。ココヘリのおかげで位置が特定されたようで、その瞬間は言葉では表せない安堵感に包まれました。私たちは軽い凍傷を負いましたが、無事に生きて帰ることができました。

この遭難体験は、私たちにとって計り知れない教訓をもたらしました。初心者向けとされる山でも、厳冬期の登山は予測不可能なリスクをはらんでいること、そして、適切な装備と十分な準備、コース計画の重要性を痛感しました。救助隊の皆さんには感謝の言葉も足りません。これからは、山への敬意を持ち、より慎重に行動することを誓います。

今回は助かったようですが…

  • 下山に天狗の奥庭を選ばなければ良かったかも?選ぶのなら、コースを外れないようによく踏み跡、ペンキのマーク、地形、方向を確認しましょう。奥庭以外でも、天狗岳周辺は道迷いが多いです。ご注意を。

  • 違和感があったらすぐに現在地を確認、不安があるなら進むのではなく戻るのが基本です。行動不能になる前に対処しましょう。

  • 尾根に上がれば携帯電話が通じる可能性もあります。谷に下るとまず繋がらないので、動くなら尾根やピークを目指したほうがいい場合が多いです。

  • 遭難後、無理に行動せず体力温存に努めたのが良かった?もっと体力や技術があれば当日中に自力で脱出できたかも?留まるのが正解か、動くのが正解かは状況次第なのでなんとも言えません。

  • ラッセルのコツが分かっていないと吹き溜まりから脱出するのは困難です。トレースが無い雪山を歩いたことがありますか?トレースが無い場所を歩くのは体力と時間、ラッセル技術を要します。

  • 天候や体力の残り具合、ビバークの仕方によっては低体温症で死ぬ可能性も十分にあります。今回はたまたま助かったと考えてください。天候と対応次第ですが、1月に雪の中でビバークして生き延びるのは難しいです。

  • ココヘリで早期に居場所が分かって、天候悪化もせず救助が早く来たので助かったが、ココヘリが無い、または計画を出していない、電池が切れていたら詰んでたかも。

  • ココヘリがあっても一晩や二晩はビバークできないと死んでしまうので、ビバーク装備やビバークの知識は必要です。装備によっては凍傷も避けられたかも。

  • 初心者向けの山でも条件によっては遭難して死ぬリスクがあります。初心者だけで行動せず、経験者をパーティーに入れて慎重に行動しましょう。特に厳冬期は行動不能になれば致命的です。

左が東天狗岳、右が西天狗岳

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松本圭司@ジオグラフィカ開発者
わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。