[無料]2022年の山岳遭難概況雑感
2022年(令和4年)の山岳遭難概況が警察庁から発表されました。
ダウンロードは↓から。
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/r04sangakusounan_gaikyou.pdf
過去の分は1年経つと見られなくなってしまうのでダウンロードして手元に置いておきましょう。
まとめると
遭難件数は3015件、遭難人数は3506人で過去最多。
死者・行方不明者は327人。例年通り300人前後で、遭難件数の増加と比べると少ない。
遭難者の78%が登山者。9%が山菜採り。
態様別では、36.5%が道迷い。全体の割合としては減っているが件数は横ばい。(遭難件数全体が増えたので割合は減った)
年齢別では、50代以上の遭難が増加している。高齢登山者による遭難が増えている。
態様別で割合を伸ばしたのは滑落、転倒、病気、疲労など。登山者の高齢化が原因?
死者・行方不明の84%が50代以上。70%が60代以上。
単独登山者による遭難は微増。2021年1282人→2022年1394人。死者・行方不明は2021年174人→2022年201人。少し増えたが、遭難人数全体が増えたので割合としては微減。2021年41.7%→2022年39.8%
通信手段は78%が携帯電話で、携帯を使った件数は2021年2142件→2022年2351件
感想
予想通り増えてしまった
いや、予想以上に増えてますね。3500人を超えるとは思いませんでした。
道迷い遭難が減らなすぎて意味が分からない
いくらなんでも減らなすぎというか、むしろ増えてますね。GPSアプリが無ければもっと多かったりするのだろうか。これでもマシなのかな。遭難防止対策の文言として地図アプリが登場
「なお、登山地図アプリと紙の地図を併用することで、より正確な位置を把握 することができるため、道迷いの防止につながる。」として、地図アプリの活用が例示されました。登山用GPSアプリの登場から14年目にして画期的な出来事だと思います。ただ、そもそも地図やコンパスを使えない登山者もかなりいそうで、アプリの使用で直ちに遭難が減るとは思えません。結局、まず登山者としてのスキルや体力が低すぎるのでは…と。「バックカントリースキーによる遭難に注意」
バックカントリーに関する注意も書かれていました。それだけ、バックカントリースキーの遭難が増えているのでしょう。
今後の予想
山岳遭難が減る要素が無いので、今年もきっと増えるでしょう。結果が分かるのは1年後ですが、3600人程度が遭難して、330人程度が山で死ぬのだろうと思います。今6月ですから、残りの半年で1800人程度が遭難して165人程度が死ぬ。今、元気に山に登ってる人のうち、それくらいの数の人に不幸が訪れてしまう計算です…(※)。
数年先まで考えるならば、遭難者4000人突破もそう遠くないのかも知れません。少なくとも、団塊の世代が登山を引退するまでは増えるでしょう。あと10年くらいは登りますか?4500人くらいがピークになるのかも知れませんね。その後は登山人口が減るのと情報化された世代の台頭で減っていくんじゃないかと思います。でも、より難しいことをしようとして遭難するとか、温暖化による天候の変化で増える可能性もあります。先のことは分かりませんね。
※…軽めの遭難で自力下山した場合は統計に出ないので、遭難人数的にはもっと多いと思います。死者・行方不明は正確でしょうけど。あと、単純に半分にしてますが遭難は夏山が多いので実際はもっと多いと思います。今気をつければ、夏の遭難は減らせるかもよ?
せめて自分や仲間、見える範囲の人を救ってください
登山者全体を一気に救うのは無理ですから、せめて、自分や仲間が山で不幸にならないように注意していくしかありません。
余裕のある計画を立てましょう。基本は15時までの下山です。普通の人は、コースタイム3時間の山からはじめてください。ある程度慣れたら5時間まで。7時間以上は体力がある人のためのコースです。10時間を超えるコースは一泊が基本です。普通の人は10時間のコース(例えば雲取山鴨沢コース)を日帰りするととっぷり日が暮れて足もボロボロになります。
「登山は危ない遊び」と自覚して、必要な知識を学びましょう。遭難したくて遭難する人はいません。でも、無知なまま登山を続けていればいつか地雷を踏みます。分かってリスキーな事をやるならそれは個人の自由です。でも、リスクを知らずに危険な行為をして死ぬのは不幸です。
自分や仲間が、今、どういうリスクを背負っているのか理解して行動しましょう。なんてことない登山道は本当に「なんてことない」のかよく考えましょう。事故はなんてことない場所でよく起こります。
身の丈に合った山に登りましょう。山のグレーディング表などを参考にして、自分のレベルに合った山を選んでください。
登山の難易度は標高では決まりません。メジャーな3000m峰より難しい低山はいくらでもあります。
登山中、危なそうな人がいたら、優しく、カドが立たないよう声を掛けましょう。まぁでも、ほどほどの距離感で。
調子がいいときは心とカラダがズレてしまう事があるので特に注意してください。調子良いからと山のグレードを安易に上げていくと、早晩見えてない地雷を踏み抜きます。
「良い記録を残したい」とか「いいとこを見せたい」など、邪念があると判断を誤ります。最優先すべきは、安全に1日を終えることです。
年齢を考えて、若いときの感覚で無茶してはいけません。若い頃の感覚でギリギリの登山をすると、条件が悪くなった時に遭難します。余力を残してゴール出来るくらいが趣味としてはちょうどいい。
頻繁に登山できないのなら、ウォーキングやスクワットなどで普段から足腰の運動をしておきましょう。
「まぁいいか」と呟いたら、本当にいいのかよく考えてください。
「~だろう」と都合のいいように考えるクセがあるなら「~かもしれない」と考えるようにしてください。天気が悪いかも知れない、道が悪いかも知れない、怪我をするかも知れない、道を間違えるかも知れない、今日帰れないかも知れない。「かもしれない」を想定して登山をしましょう。
「暑い、寒い」は我慢しない。出来るだけ早くウェアを調整してください。熱中症や低体温症になってからでは遅いです。我慢してても改善しません。手持ちの装備で寒さや暑さに対応出来ない状況なら撤退を考えてください。
パーティー登山をするのなら、最後まで一緒に行動してください。目が届かないくらい離れたらパーティー登山の意味がありません。
リーダーはメンバーに思いやりを持ちましょう。一人でどんどん先に行ったりしてはいけません。パーティー内の一番弱い人を基準に判断しましょう。それが出来なければパーティー登山の意味がありません。
雑な登山をしていると事故ります。丁寧に登山してください。
わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。