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[無料]架空遭難 釜ノ沢東俣で遭難パーティと出会った

架空遭難とは?

筆者が設定した遭難または遭難しそうな状況について想像して、自分や当事者はどういう行動が出来るのか?を考えることで山岳遭難を予防しようという試みです。

今回の条件

  • 9月上旬の晴れた土曜日

  • 30代~50代の男女4人パーティで釜ノ沢東俣を遡行中、両門ノ滝で3人パーティーと出会った

  • 2名は20代の男女で、1名がリーダーの60代女性。両門の滝を巻いていたところ、足を滑らせて60代女性が滑落、滝壺に落ちたという

  • すぐに引き上げて意識は無いが呼吸はしている

  • 落ちてから30分後に4人パーティーが追いついてきた

4人パーティーとしては、どうする?という状況です。パーティーが出会った時刻はペースにも依りますが14時~15時半くらいですかね。

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地図の画像はコチラ

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両門ノ滝はこんな感じの滝です。

東俣は向かって右手の滝の右側斜面を巻いていきます。この写真の後ろ側が河原になっています。通常は標高差であと150~200mくらい登ってビバーク地点となります。

どうする?

遭難していたら手を貸す

登山中に遭難パーティーまたは、遭難しそうなパーティー(個人)に出会ってしまうことがあります。「遭難しそう」なら、あまり口を出すのも大きなお世話ということになりますから、多少の確認やアドバイスで済ませても悪くはありません。最後は本人の自己責任です。しかし、まさに遭難しているのならは人道的には救助に手を貸すべきだと思います。

安全確保と着替え

とりあえず、要救助者は引き上げられているので、周りの地形を確認して出来るだけ平らで多少増水しても水が来なそうな場所を確保します。落石がありそうな地形も避けてください。

『意識は無いが呼吸はしている』という設定ですから、頭を打っているかも知れません。移動は必要最低限にして、移動する時は頭や首を出来るだけ支えましょう。(自分で設定しておいてなんだが、面倒な設定にしたものだ…)

意識がない人を移動させるのはものすごく大変ですが、6人いれば短距離ならなんとかなるでしょう。ツエルトやタープなどを担架にして運ぶといいかも。

移動先は整地し、シートやマットを敷いておきます。濡れた服のままでは低体温症や体力の消耗を招くので着替えさせてください。今回はメンバーに同性である女性もいるので、着替えは任せてよいでしょう。異性しかいない場合は…それはもう仕方ありません。着替えさせたらツエルトやシュラフカバーに入れて保温し、近くでビバークの準備となります。分担して効率よくやりましょう。

怪我の確認

着替えさせるついでに、どこか怪我をしていないか打撲の跡などを確認してメモをしておきましょう。写真は…本人のスマホがあるならカメラアプリで撮っておくといいかも。怪我をしていて、応急処置出来そうならしてもよいでしょうが、意識が回復してから本人に痛むか聞きながらでもいいかも。内容次第ですかね。

救助要請するかしないか?

要救助者が軽傷で、すぐに意識を回復したのならビバーク後に沢登りを再開することも出来るかも知れません。が、今回は意識不明の時間が長く登るにしろ下るにしろ自力での移動は難しい気がします。

釜ノ沢は1回しか行ったことないので細かい部分は覚えてませんが、高巻きが多くまぁまぁな滝もあったと思うで、下るのもそれはそれで大変な気が…。特に、今回は3人パーティーのリーダーが要救助者になってしまったので自力で解決するのは難しそうです。もっとひどい状況になる前に救助要請しましょう。

谷は携帯の電波が入らないことが多いので、おそらく甲武信小屋まで登るか西沢渓谷入口くらいまで降りないと電話が繋がらないと思います。9月なら18時くらいに日没になるので、あと2時間程度で日が暮れます。

そして問題は誰が救助要請をしに行くか。考えられるのはこんなパターンでしょうか?

  1. 20代男女が最低限の荷物(ロープ、登攀ギア、行動に必要な装備)を持って沢を下降して救助要請をし、4人パーティーが要救助者に付き添う。この2人の経験や技術は設定していませんが、未熟な場合は二重遭難のリスクがあります

  2. 20代男女が要救助者に付き添い、4人パーティーが出来るだけ登って携帯の電波が入ったら救助要請をする。当日中に救助要請出来るかは分からない。日没になってリスクが高くなったら途中でビバークして翌日の救助要請。上部の滝は難しくはありませんが暗闇の中で登るにはリスクが高いです

  3. 4人パーティーのうち2,3名が最低限の装備で遡行し、稜線まで登って救助要請。残されたメンバーとの連絡や残した装備の回収が問題になるし、最低限の装備だと甲武信小屋でどう泊まる?小屋泊?

特小のトランシーバーを持っていれば多少は通信できますが、地形によって電波が遮られると数百mしか飛びません。救助要請をする部隊と付き添う部隊で連絡が難しいのも辛いですね。

どのパターンを選ぶのか悩ましいですが、自分が4人パーティーのリーダーだったら2を選ぶかなぁ…。1と3は選びたくない。60代女性リーダーが歩けるようなら、7人でまとまってビバークして翌日甲武信小屋まで一緒に登るという選択肢もあると思いますが。

こう書いちゃうと冷たいようですが、私は自分のパーティーのメンバーの安全が最優先なので、他のパーティーの遭難については「出来ることはするけどリスクが高すぎるようなら抑える」という選択をします。コミットしすぎて自分たちが遭難してはいけないので。

救助要請の際に必要な情報

救助要請をする際は、要救助者の氏名、年齢、生年月日、電話番号、緊急連絡先、住所、本来の行動予定、居場所の経緯度、怪我などの状況、装備、食料や水の残り、現場の天気などの情報が必要です。救助要請をしに行く人はそれらの情報をメモして行きましょう。

こういう場所では行動不能になってはいけません

と、考えるだけで気が重くなりますね。今回は死者はいないし要救助者の怪我も軽い状況ですが、それでも沢で1人が行動不能になっただけで総勢7人の動きが非常に制限されてしまいます。

この様なアルパインクライミングでは、絶対に怪我をしてはいけません。小さな滝でも落ちてはいけません。小さな転倒も命取りになります。

フリークライミングのノリで不用意な登り方をしてたら命がいくつあっても足りません。捻挫や多少の怪我で済んでも、それで行動不能になればパーティー全体のリスクが跳ね上がります。

フリークライミングのつもりでアルパインクライミングをやってはいけません。絶対に落ちてはダメです。「テンション」なんて言っても、中間支点の間隔は広く、支点強度も弱い。ビレイヤーに声が届かないなんて普通にあります。壁の中では一人きり、自分だけで落ちないように登りきれないと、良くて怪我、最悪死にます。慎重に登り、絶対に落ちてはいけません。

そういう遊びをしているのだと自覚し、絶対に落ちないように登りきること。それが出来ないのなら、沢登りなどのアルパインクライミング的な遊びをしてはいけません。やるなら、体力と登攀力をしっかり身に付け、身の丈に合ったルートを選びましょう。

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松本圭司@ジオグラフィカ開発者
わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。