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[無料]登山の装備をイチから揃えるなら?

登山を始めたいのだけど、最初に何を買ったらいいのかって意外と難しいんですよね。何を買ったらいいか分からないし、全部登山用品店で揃えると高いし、種類が多いし、自分がどういう登山をしたいのか分からないし、っていうか登山に種類があるの?って感じだし。

そんな人のために、コスパがそこそこ良くて、とりあえず数年は幅広く使えるのではないか?と思う装備を紹介してみようと思います。

前提、どんな登山をするのか?

一口に登山と言っても春や秋のハイキングと、厳冬期の雪山やアイスクライミングでは装備がまるで違います。最初から厳冬期の雪山を目指す人は稀だと思いますので、今回は、

  • スリーシーズンの2000m峰または冬の1000m峰まで

  • つまり、そこそこ高い山まで登りたい、登山を趣味にしたい

  • 基本的には日帰り、泊まるなら山小屋泊で食事も付ける

  • 18歳以上で性別問わず

という条件にしたいと思います。

必須装備

三種の神器とかなんとか言いますが、登山にはどうしたって必要な装備がいくつかあります。

  • 登山靴

  • リュックサック(ザック)

  • 雨具、レインウェア

  • ヘッドランプ

  • 登山用のウェア

  • ファーストエイドキット

最低限としてはこんなもんでしょうか。あれば便利な小物は他にもたくさんありますが、絶対に必須というのはこんなもんでしょう。では、実例を出しながら説明していきます。

モンベル中心で考えてみることにしました

登山の道具で悩んだらモンベルです。とりあえずモンベルに行っておけば間違いないので、基本モンベルで考えて、都度他のメーカーについても言及することにしましょう。

登山靴

モンベルの登山靴は名前の後ろに数字が書いてあって、大雑把に言えば数字が大きいほど高負荷に耐えられる、高剛性の靴になっています。靴底が硬く、ハイカットで足首を保護し、頑丈で重い。上は3000から下は400まで。

最初に買うならマウンテンクルーザー600くらいですかね。800でもいいけど。種類としては、ミドルカットの軽登山靴です。これより上はゴツすぎるし、下は簡易すぎる感じです。私は実際にマウンテンクルーザー600を履いていて、無雪期なら日帰りでもテント泊でも問題なく歩いています(個人の感想です)。

足の幅が広い人向けのワイドモデルがあるのも、日本メーカーらしくて良いですね(日本人は幅広甲高な人が多い)。

靴は足の形で合う合わないがありますから、モンベルの靴が合わないなら、登山用品店で他のメーカーの靴も履いてみてください。富士山に登る予定が無くても、「富士山に登りたいんです」と言えばこれくらいの靴を見繕ってくれます。

試し履きして合うものがあったらそのお店で買ってください。試着だけして買うのはネットってのは倫理的にNGです。

これくらいの靴で登り始めて、その後は自分のスタイルに合うかどうかを考えながら次の靴を考えてみてください。登山をやっていれば登山靴は徐々に増えていきます…。

リュックサック(ザック)

ザックは入る容量ごとに各種あるので、膨大な種類があり選ぶのが難しい装備です。

無雪期の日帰りなら20リットルくらいの容量でも荷物は十分入りますが、寒い時期の防寒着や雨具、山小屋泊で縦走など、少し荷物が増える状況でも対応しやすいのは30リットルでしょうか。私が最初に買ったのはカリマーのリッジ30でした。

モンベルだとチャチャパック30とかアルパインパック30あたりになるんですかね。

肩ベルトや腰パッドなどもしっかりしていて、長時間背負っていても体が痛くなりにくい気がします(持ってないので使用感はわかりません)。

ちょっと登山を知ると、「ザック自体が意外と重いな…」と気づいてしまい、軽量なザックを探しがちです。モンベルだとバーサライトパックが軽量ザックとしてラインナップされています。

約400gですから、アルパインパック30よりも1kg以上軽いということです。しかし軽量ザックは軽い反面、

  • 肩ベルトや腰パッドが簡略化されているため背負心地はイマイチ

  • 生地が薄く耐久性が低い

  • フレームが入っていないので自立せずパッキングが難しい

  • 背中のパッドが薄くパッキングが下手だと背中に当たる

などの欠点があります。要は、使うのが難しい。メーカーも努力をして、出来るだけ軽く、でいて欠点を無くすようにしていますが、それでも限界があります。ザックを選ぶ際は、重さなどのスペックだけでなく実際の背負心地をお店で試してみてください。

ちなみに私は、モンベルの30リットルザックだとリッジラインパック30の旧モデルを使っています。

シンプルでそれなりに軽量、でいて生地が薄すぎません。ポケットは雨蓋部分だけで、あとはメインの荷室のみ。サイドやボトムのファスナーなどは無く、上からしか荷物を取り出せません。慣れていないとパッキングも難しい。便利なザックではないのですが、個人的にはシンプルで使いやすいと思っています。気に入ったので40リットル版(これも旧モデル)も購入しました。

え?10リットル刻みでザックを買うのかって?そうです。登山を続けていくと、結局ザックは10リットル刻みで30、40、50、60と揃えていくことになります。60を飛ばして70や80にいく人もいますが、それだけの大きさになると入る荷物も多く、全体の重量は20kgをゆうに超えてきます。ザックを買う前に、その重さを自分が背負えるのか考えてください。

ザックは容量だけでなく色やデザイン、ポケットの位置や数など、好みが分かれる装備です。そして好みは時と共に変化します。

私は最初の頃、ポケットやファスナーが多いザックを好んでいました。細かいものを入れられるポケットが多いほうが良いし、ザックの横や底を開けて荷物を取り出せる方が便利だと思っていたわけです。

ですが、最近の好みとしては、「出来るだけシンプルで防滴性が高いもの」を好んでいます。岩や沢など、クライミングを頻繁にするようになったため、ザックに求める性能が変わったからです(軽量、シンプル、密閉などを重視)。スタッフバッグやジップロックを使えば、細かいものもザック内で散らばらないしジャンル別に管理できます。

最初に買ったリッジ30は内側のウレタンコーティングが劣化(湿気で劣化する=加水分解)したため、7年ほどで廃棄となりました。海外メーカーは日本の湿度を理解していない場合があり、よく加水分解します。

ザックカバー
最初からザックカバーがセットになっているものもありますが、付いてないものもあります。ザックを買ってカバーが付いてなかったら一緒に買っておきましょう。

防滴のザックもありますが、内側に浸水しなくてもザックの外側がびしょ濡れだとテントや山小屋に入る時に困ります。まったく濡れないわけではありませんが、カバーを掛ければマシになります。

レインウェア

登山用のレインウェアと言えば防水透湿素材を使ったセパレートタイプが必須です。ビニールの雨合羽とかじゃダメですよ。

登山は運動量が多く、汗をよくかくので透湿性が無いと雨具を着ても内側から衣類が濡れていってしまいますし、風が強ければ横から下から水が入ってくるのでポンチョタイプでは浸水を防げません。

ざっと見た感じ、モンベルではレインハイカーというのがエントリーモデルとして用意されていました。ジャケットが12,980円くらいでパンツが9,350円なので上下で22,320円です。

ただ、スペックを見ると透湿性が「8,000g/m²・24hrs」となっています。一つ上のモデルであるレインダンサーが「25,000g/m²・24hrs」なので、3分の1くらいの透湿性ということになってしまい、いささか性能が低すぎる感じもします。この数字が低いと蒸れるってことです。

レインダンサーはジャケットが24,750円でパンツが14,520円の合計39,270円と、値段もそれなりにしますが…。

もし安く抑えたいのなら、ジャケットはレインダンサーにして、パンツをレインハイカーにするのもアリです。より多くの汗をかくのは上半身なので、とりあえず下半身は安いレインハイカーで済ませてもいいかも知れません。差額は5,000円くらいです。

レディースはコチラ。

ちなみに、ワークマンでは「イナレムストレッチレインスーツ」というレインウェアを売っていて、上下5500円だったりします。透湿性は「25,000g/m²・24hrs」ですから、スペック的には悪くないと思いますが、価格差を考えると同等の性能とは思えず…。

物好きの方は試してみてもいいかも知れませんが、レインウェアはいざという時に命を守る装備ですから、あまりケチらない方がいいです。特に最初のうちは良いものを買いましょう。

ヘッドランプ(ヘッデン)

ヘッデンは登山の必須装備です。どんな低山に登る場合でもザックに入れておいてください。日帰りでも高尾山でも必須です。

レインウェアは雨が降ったり寒くなければ使いませんし、ヘッデンは明るいうちに下山できれば使いません。なのになぜレインウェアやヘッデンが必須装備なのかというと、『登山中にトラブルがあればその日のうちに帰れないかも知れないから』です。夜の山は信じられないくらい暗くて、当日は晴れていても翌日は雨が降るかも知れません。日が落ちた山は夏でも凍える寒さになります。行動不能になって天気が悪くなった場合でも生き残れるか?という想定をしてください。

で、ヘッデンをモンベルで買うならこれがオススメです。

HIGHモードで60ルーメンなので決して明るいわけではないのですが、手元を照らすには十分ですし、単3電池1本で使えるので電池の管理が楽です。予備の電池も1本で済みます。

コンパクトで軽量、デザインも可愛くてダブルクリックでスイッチを入れると、まず電球色のLEDが点灯します。優しい光から始まるため、山小屋などで使いやすいわけです。夜間行動を想定しないなら、コンパクトヘッドランプがオススメです。

モンベル以外だと、ジェントスのヘッドランプもなかなか良いです。私はこのCP-195DBというのを使っています。これも単3電池1本で使えます。

価格がモンベルより安く、120ルーメンとけっこう明るめ。赤色LEDが付いているので山小屋泊でトイレに行くときに寝てる人の迷惑になりにくいです(その状況だと電球色LEDでも明るすぎるので)。デザインは好みではないのですが、コスパと使い勝手で選んで愛用しています。

夜間行動もするから、より明るいほうがいいと言うなら最大360ルーメンのCP-360シリーズなんかもいいでしょう。充電式で小型軽量、2500円前後と値段も安めです。

ただ、HIGHモード(360ルーメン)だと2時間しかもたないので、長時間の夜間行動をするなら予備のヘッドランプを持ったほうがいいかも知れません。

その点、120ルーメンのCP-195DBは単3電池を予備に持てばいいだけなので荷物が軽くなりますね。電池交換時のために小さい明かりがあるとベターです。私はキーホルダーにタグライトを付けています。

夜の山は皆さんが思っている以上に真っ暗です。くれぐれも、照明器具を持ってください。スマホのライトは光が弱くスマホのバッテリーを消費します。スマホを手で持てば片手しか使えなくなります。スマホの明かりだけで行動するのは危険です。スマホは現代登山の命綱ですから、バッテリーは温存しておきたいものです。照明は専用の器具を必ず持ちましょう。

登山用ウェア

登山用のウェアは速乾性能が必須で、綿素材はNGです。基本は重ね着で、下着、シャツ、防寒着、アウター(レインウェアやハードシェル)で温度調整をします。

一番下に着る下着はモンベルだとジオラインですかね。私は持ってませんが。

私はファイントラックのドライレイヤーを使うことが多いです。ジオラインでもドライレイヤーでもどっちでもいいとは思います。

ミレーのドライナミックメッシュも悪くありません。見た目は変態っぽくなりますが、風呂場くらいでしか見られないので問題ありません。「肌から汗を遠ざける」という性能はドライナミックメッシュが一番高いように思います。(網の厚みがあるので距離が出る)

この手の、『汗を肌から遠ざける下着』を着ていると汗冷えが起こりにくくなります。個人的には必須のウェアです。

シャツは、モンベルだとウィックロンという素材を使ったものが多くラインナップされています。速乾性、通気性、保温性、防臭などの機能を持っている素材のようです。速乾性が高い素材は匂いが気になりがちなので防臭機能があるのは良いですね。

登山では基本的に肌を出さないように、と言われていますが私は夏は普通に半袖で行動しています。暑がりなので…。虫や日焼けが気になる場合は虫よけや日傘などで対応しています。

防寒着はとりあえずフリースですかね。登山用はそれなりに高性能ですが、ユニクロのフリーズでもぜんぜん問題ありません。大抵はこの手の防寒着は持っていると思うので、それらを流用して大丈夫です。

パンツはモンベルならO.Dパンツシリーズなどですかね。ポケットの位置や数、ジッパーの有無などで好みが分かれると思います。お店で試着して買うとよいでしょう。

私は、パンツについてはワークマンのフィールドコア一択となっています。なにせ1900円ですからね…。1シーズンで破れても惜しくないような値段でいて、意外と長く使えています。売り切れが早いのでシーズンが始まる前に買いに行ってください。

ユニクロやワークマンのウェアも十分使えるものがあります。ダウンジャケットはユニクロのULダウンとシームレスダウンを使っています。他のスポーツで使った速乾性シャツやジャージなども活用してください。

登山中はこれらの衣類を適切に脱ぎ着して行動します。衣類を調整したり、歩行ペースや休憩タイミングで調整するのですが、暑い、寒いは我慢しても改善しません。出来るだけ汗をかかないように、面倒くさがらずに調整してください。汗は水の無駄ですし、汗による濡れは低体温症の要因になります。

ウェアの調整も知識が必要です。山に慣れている人を観察して真似したり、ツアー登山や登山の講習でリーダーやガイドさんに聞いたりしてみてください。

ファーストエイドキット

救急セットです。

モンベルだとガワだけ売ってて、中身が無かったのでAmazonで探してみました。

こういうセットを買ってもいいかも知れませんが、ポーチが小さいとテーピングなど追加したい時に入らないのでイマイチです。

なので、こういう感じの袋を用意してください。

細かい持ち物は袋に入れて管理するとザックや雨蓋の中で散らばらずに済みます。ダイソーなどで適当な袋を買ってもいいです。

ジップロックも細かいものをまとめるのに使えますし防水性が高くなります。食品に使うには古くなった物を洗ってお下がりを使ってもよいでしょう。

中身は適当に集めて入れていきます。絆創膏、テーピング、粘着包帯、三角巾などが定番です。家の救急箱にあれば、それを入れてもよいでしょう(家族には言っておきましょう)。

ハイドロコロイド包帯は傷の大きさに合わせて切って使えるので、大きな傷から小さな傷まで対応しやすくオススメです。

汚い手で治療をすると感染症を起こすので使い捨ての手袋も数枚入れておくとよいです。他人の血もまた感染症の原因となり得るので、接触しないほうがいいです。

その他、小さめのハサミやピンセットなどは100円ショップで買うか、家にあるものを入れておけばよいです。大体どこかの引き出しに眠っているものがあるでしょう。

洗浄用の水

買うようなものではありませんが、真ん中に穴を開けたペットボトルキャップも入れておいてください。傷の洗浄に使えます。洗浄用の水は小さめのボトルに水道水を入れて持ち、基本的には飲水としてはカウントしません。

怪我をしたらキャップを穴開きに付け替えます。

ボトルを押すと穴からピューッと水が出ます。沢の水は一見キレイに見えますが雑菌だらけなので、そういう水で傷を洗うと感染症を起こしてしまいます。洗浄用の水道水で洗いましょう。

これらの資材を使って正しく応急処理をするには知識と練習が必要です。ただ持っていても使えなければ意味がありません。東京近郊だと、都岳連の遭難対策教室でそのような講習を行っているので受けてみてください。

本も読みましょう

登山は装備も大事ですが、知識が無ければ装備を正しく使えません。登山を始めて続けるのなら本を読んで勉強してください。多少の勉強もできないのなら、登山なんて危ない遊びはしない方がいいですよ。

「昔登ってた」という人も改めて読んでみてください。昔と今では装備も考え方もマナーも違います。知識をアップデートしてください。

まとめ

  • とりあえずモンベルに行けば一通り揃います

  • ザックは30リットル、靴はスリーシーズン用の軽登山靴。試着して選んでください

  • レインウェアは防水透湿が必須。良いものは高いがリスクを考えて良いものを選びましょう

  • ヘッドランプは電池の管理がしやすい単3電池1本のものを推奨

  • 登山のウェアは速乾性が重要。ユニクロやワークマンを使うと出費を抑えられます。ただし下着は登山用を推奨

  • ファーストエイドは自分で中身を揃えて袋に入れて持つのがよいです

  • 登山の本も読みましょう

これらの装備を正しく使うには知識や練習が必要です。私が主催しているおくたま登山学校では、装備の使い方や歩き方の指導もしていますので(講習のメインテーマは毎回変わります)、興味がありましたらお気軽にご参加ください。


わぁい、サポート、あかりサポートだい好きー。