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[無料]架空遭難 20代男性ソロ 夏の奥多摩の稜線で悪天候の兆候
架空遭難とは?
架空遭難とは、筆者が設定した遭難状況、遭難しそうな状況に対して、自分ならどうする?と考えることで安全登山について考えてもらおうという企画です。ツイートに反応することで参加できます。
今回の条件
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20代男性ソロ
8月初旬の晴れ、8時半から奥多摩駅から石尾根を登って13時に赤丸の地点にいる
予定コースは赤い線
目的地は地図の左の先(七ツ石小屋)で到着予定は16時半
装備は夏山テン泊装備で水と食料は1泊分がある
空が暗くなり冷たい風が吹いてきた
場所は奥多摩の石尾根で、奥多摩駅から雲取山まで続く長い尾根です。
地理院地図のリンクはコチラ↓
書かれていないが推定できる情報
奥多摩駅から現在地までの標準コースタイム(休憩時間は含まない)は4時間半
現在地からゴールまでの標準コースタイムは3時間
登山経験は不明だが、テント泊装備を背負って真夏にコースタイム通りに歩けていることから、それなりに体力はあるようだ
今日の架空遭難。
— マツモトケイジ@ジオグラフィカ開発者 (@keizi666) February 14, 2024
・20代男性ソロ
・8月初旬の晴れ、8時半から奥多摩駅から石尾根を登って13時に赤丸の地点にいる
・予定コースは赤い線
・目的地は地図の左の先(七ツ石小屋)で到着予定は16時半
・装備は夏山テン泊装備で水と食料は1泊分がある
・空が暗くなり冷たい風が吹いてきた
どうする? pic.twitter.com/CRBUmaJ5lc
この先どうなるのか?解答例
まだピンチではない
今のところ遭難はしていないし、危機的状況とも言えません。ただ、「空が暗くなり冷たい風が吹いてきた」ことから、積乱雲が発生し近くにあることが推測されます。
しかしまだ雷鳴は聞こえていないので、落雷のリスクが無いわけではないけど逼迫まではしていません。心配ならスマホで雨雲レーダーを見るといいですが、当然ネット接続が必要です。石尾根は割と通じる場所があるので、時々確認してみるとよいでしょう。
ピークは巻いていくといいかも
一応の安全策として、ピークを目指すのはやめて巻道を通って行くとよいでしょう。積乱雲が近くにある状況で落雷リスクが高いピークには行きたくないものです。
計画では以降のピークもすべて踏むようになっていますが、先を急ぐことにして巻道を通れば40分の短縮になります。
一般論として、巻道は木の橋がありがちなので、雨が降って濡れていたらスリップのリスクがあります。慎重に通過しましょう。また、谷では雨量によっては増水のリスクがあります。渡渉が無理なら引き返してください。
避難小屋があります
鷹の巣山の西側には避難小屋があります。立派な小屋でトイレもあり、広い平坦地もあります。もし兆候から短時間で雷鳴が聞こえてきたのなら、避難小屋に避難するというのもいいと思います。
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雷雨は通常、短時間で通り過ぎます。雷鳴が聞こえなくなるまで待ってから再出発すればよいでしょう。ただ、頭の上で雷がドカドカ落ちる体験をしたあとで登山を再開出来るかどうかは、メンタル次第です。避難小屋に泊まる、もう帰るなど、自分の気持と向き合って決めたらいいんじゃないかと思います。20代男子なら悩まず行っちゃう気がしますが。
なお、雷鳴がまだ聞こえるなら落雷のリスクがあるので避難を続けたほうがよいです。過去の事例としては、槍ヶ岳山荘で雷雨になり山荘に避難した人たちのうち数人が、雨が止んだからと言って雷鳴がまだ聞こえるうちに山頂に向かい、山頂で雷に打たれたというものがあります。雷の音が聞こえる範囲は半径10km以内で、その距離だといつ真上に落ちてきてもおかしくありません。
落雷を受ければほぼ死ぬので…
落雷による遭難は非常に少なく、直近では2019年に3人が亡くなっていますが、以降は起こっていません。しかし、だからと言って雷を軽視していいわけではありません。なにせ、落雷を受ければほぼ確実に死んでしまいますので…。
2019年5月に丹沢(鍋割山)で落雷にあった方は、木の下に逃げ込んで側撃雷を受けて亡くなったようです。稜線上の木は雷が落ちる可能性があり、近くにいると側撃雷を受けるリスクがあります。雷雨の際は木から4mは離れてください。側撃雷について知っていれば亡くならずに済んだはずです。
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テントに落ちた雷で亡くなったケースもあります。雷鳴が聞こえたら、広場に張ったテント内も危険地帯となります。雷が鳴っているときはテントではなく山小屋などしっかりした建物が、5m以上の木から4m程度離れた安全地帯(木が避雷針となります)に留まりましょう。
登山中の雷については下記記事が参考になります。↓
コチラもよかったらどうぞ。
判断と運が悪ければどうなるか?
雷雲が近づいてきているのも気にせずにピークを目指した場合どうなるか?と言えば、運が悪ければ落雷に当たって死にますし、死なないにしても非常に怖い思いをすると思います。
そんな怖いもの知らずがいるのか?と思うかも知れませんが、私は実際にそういう人たちとすれ違ったことがあります。
「夏山を歩くための基礎知識3『雷雨編』」でも書いてますが、雷鳴が聞こえてきたので引き返してる最中で5人をすれ違いました。「雷雨が来ますよ、僕は下山します」と言っても全員そのまま登っていきました。私が安全地帯に着いた14時、山頂の雨雲レーダーはこの有り様。
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私が川乗谷を歩いているとき、山頂方向からは絶え間なく落雷の音が聞こえていました。こわかった…。
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このとき山頂にいた人たちは地獄を見たのではないかと思います。平日だったためか、ヤマレコやYAMAPで山行記録を探しても自分と、もっと早く登って降りて安全だった人の2名しか見つからず、何が起きていたのかは分かりませんが。
運が良ければ?
運良く雷雲が近づいてこず、遠くを通り過ぎただけで済む可能性もあります。雲が近づいてきて途中で大雨が降って多少雷が落ちても、運が良ければ死にません。ただ、天候に限らず運に頼っているといつかハズレを引いてしまい、そのハズレっぷりによっては死んでしまいます。運任せの登山を続けるべきではありません。
登山を運任せにしてしまう原因は「無知」です。知らないから怖いもの知らずの行動を取ってしまいます。登山をしたいのなら本を読んで勉強しましょう。無知なままやってると、仲間か自分が死にますよ。
本だけではただの知識で、実感するには実体験が必要です。知識と登山経験の両方を積み重ねるのが大事です。登山の講習を受けたり、山岳会に入って経験を積むのもよいでしょう。
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そもそもこの計画はどうなんだ?という話
到着が計画時点で遅いよね
この日のゴールとしている七ツ石小屋の到着が16時半というのは遅いです。夏は日が長いので19時くらいまで明るいですが、やはり登山の基本は15時ゴールですから、最初から16時半で計画するのはNGです。
15時に舗装路に出て、あとは駅まで普通の道を歩いていって17時に着く、みたいな話なら15時に登山自体は終わっているので問題ないでしょう。しかし今回のケースでは山小屋に着く時間が16時半という計画ですから、ちと遅い。疲労や休憩などでペースが上がらなければ19時到着になっても不思議ではありません。
七ツ石小屋のテント場は現在予約が必要で、予約の際は到着予想時間も伝えますから「16時半です」と言えば「遅いんじゃないかな?」と教えてくれるかも知れません。あるいは「こっちのコースのほうがいいんじゃない?」とか。
到着が遅れれば小屋番さんも心配します。到着が遅れそうだったり、辿り着けずに避難小屋や途中のビバーク適地でテント泊をする羽目になってしまったのなら、電話でその旨を伝えましょう。圏外だったら仕方ないし、無理することはないと思いますが、もし電話が通じるなら一報入れるのが人としてのマナーです。
まぁ、16時半到着って伝えている時点で、小屋番さん的にはある程度織り込み済みな気もしますが。後で電話が通じるようになったら電話するか、行程通りに小屋まで行くなら謝って、七ツ石山に登って下山ですかね。
前泊スタートがよいでしょう
どうしても奥多摩駅から石尾根を登って七ツ石小屋まで歩きたいのなら、最低でも7時、出来れば5時か6時には出発したいところです。8時半では遅い。電車では厳しいので、車で来るとよいでしょう。駅の近くにタイムズがあります。
電車で来るのなら、20代なら前夜の終電で奥多摩駅に来てステーションビバークも許される気がしますし(暑いかも知んないけど)、駅で寝るのが嫌なら近くの宿で一泊するのがよいでしょう。
鷹ノ巣避難小屋でもいいかも?
前泊も出来ないし電車で行くしかないのなら、1日目のゴールを鷹ノ巣山の避難小屋に設定すると無理がありません。計画して避難小屋に泊まることの是非はあるかも知れませんが、使わなければ安全な時間に宿泊地に着かないという考え方であれば、これも避難と言えなくもない。かも?
避難小屋を使わせてもらったら、出発前に掃き掃除などしていきましょう。せめてなにか貢献していくべきです。
※避難小屋の運用は地域によって違いますが、関東では無人無料が一般的です。
小屋番さんからコメントをいただきました
七ツ石小屋の小屋番さんからコメントをいただきました。とても参考になる内容ですので、一連のスレッドを是非読んでください。コメントありがとうございました!
お約束した「蛇足」の納品で〜す。
— 七ツ石小屋(雲取山/鴨沢ルート中腹/365日営業) (@nanatsuishigoya) February 15, 2024
皆様の回答と同じ、一つの意見としてご覧ください。
また、「現在の七ツ石小屋ではこう考えてこう対処する」ということで、運用は変わるかもしれないことをご承知おき下さい。
(昨今は山小屋業界も変化が激しいです。例えば数年前はテント泊は予約不要でした)
まとめ
今回のケースはまだ遭難していない状況で考えてみるという内容でした。しかし、判断と運が悪ければこの若者はどこかのピークで雷に打たれて死んでいたかも知れません。判断が悪くても運が良ければ、雷雨でびしょ濡れになりながら19時に頃七ツ石山に着いて、多少の指導(心配して言ってくれることなので感謝しましょう)を受けつつテントで寝られるかも知れません。
計画自体もタイトですから見直す必要があります。夏でも冬でも、余裕がある計画を作って、楽しく安全に登山をしてください。
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