仕事でうつにならないために ①環境変化への適応
前回のブログで、「仕事でのうつ病リスク要因」についてお話いたしました。
色々原因は想定されるなかで、環境変化・モチベーションの有無・業務への適性、を大きな要因としてピックアップしました。
3つの要因に対し、どのように対処することでうつ病などのメンタル危機を回避できるのか、を、見ていきたいと思います。
本日は1つ目の「環境変化」への適応についてです。
1.環境の変化に適応するためのスキル
周辺環境が変化した時に、自分がどのように適応しているのか、自分の中のどんなスキル(資源)をどのように活用できるのか。
今回はシュロスバーグの「4つのS」を元に考えてみたいと思います。
2.4つのSと事例
<事例>急な人事異動で上司が変わった
①Situation(状況)
起きた原因…人事異動
予期の可能性…ほぼ不可能(定期的な異動とはタイミングが違ったため)
期間…未定
同じ経験の有無…過去にも上司が変わった経験はある
ストレスの有無…大:新しい上司とは初対面
認知の仕方…知らない人と一緒に仕事をしていくことへの不安が大きい
②Self(自己)
仕事の重要性…家族が生計を立てるためには自分の仕事が必須
仕事と他の生活とのバランス…7:3で仕事の比重が大きい
変化への対応…未定
自信の有無…多分なんとかなるだろう、と思いつつ、自信より不安のほうが大きい
人生の意義…家族と安定して生活していくことが最優先
③Support(支援)
良い人間関係…同じく上司が変わる同僚との関係は良好
励まし…家族を不安にさせないため、人事異動による悩みは話していない⇒家族からの励ましは無し
情報…一般的な人事情報(過去の経歴)
照会先…元上司から入手
援助者…無し
実質的援助の有無…無し
④Strategy(戦略)
状況…新上司は着任したばかりで、まだどんな人か分からない
認知の仕方…不安は大きいが仕事をしないわけにはいかないのでやるしかない
ストレス解消のための対応策の有無…同僚たちと情報交換、自分の担当業務に変更が無いかを新上司とすり合わせ⇒不安の軽減
3.事例分析
このケースの場合、「急な人事異動で上司が変わった」という、仕事においては結構大きな環境変化が起きています。
自分自身が異動になったわけではないので、自分の業務内容が大きく変化することは無さそうですが、新上司がどのように仕事を進める人なのか、部下にどんな接し方をする人なのか、部署のミッションをどう解釈しているか、は、長い目で見ると自分にも大きく影響してきます。
影響が大きいにもかかわらず、知りたい情報はほとんどない。
けれど「家族と安定して生活してきたい」ため、転職する、という選択肢はありません。
仕事を続ける、しかし上司がどんな人か分からず不安、という2極の間で葛藤が起きています。
これに対して、この人が持っている「資源」が、①~④として分類されます。
この資源のなかで、不安に対して活用できるものは何でしょうか。
活用出来そうなものは、
①ー4:同じ経験の有無…過去にも上司が変わった経験はある
③ー1:良い人間関係…同じく上司が変わる同僚との関係は良好
④ー3:ストレス解消のための対応策の有無…同僚たちと情報交換、自分の担当業務に変更が無いかを新上司とすり合わせ⇒不安の軽減
だと思われます。
反対に環境適応の足かせになりそうなのは、
①ー6:認知の仕方…知らない人と一緒に仕事をしていくことへの不安が大きい
③ー6:実質的援助の有無…無し
だと思われます。
つまり、情報不足に対する不安が大きく、それに対する直接的援助は見込めないながら、同僚と協力出来そうで、過去にも同様の経験があるので、その時の学習結果から対策を立てることは出来る、ということになります。
4.具体的な対応策
このケースで私がお勧めしたいのは以下の3点です。
不安な気持ちを押し隠そうとすると、言動に無理をせざるを得なくなります。
相手はほぼ初対面の上司ですから、自分の無理をした言動を「そう言う人なのだ」と解釈します。
結果、長い目で見てスムーズで安定した関係は築きづらくなります。
上司が変わるというのは職場では大きな変化です。不安を感じているのはおそらく自分だけではないでしょう。
他の人と気持ちを共有することで、「自分だけではない」という安心感を得られ、不要に焦ったり怖がることが無くなります。
長く働いていれば人事異動は珍しい経験ではなくなります。過去にも似た経験があるなら、その時自分は・周囲はどうしていただろうか、異動後3か月、半年後はどうなっていたか、を思い出してみるといいかもしれません。
全く同じ流れとはいかないでしょうが、「なんとかなるだろう」という自信を取り戻せると思います。
次回は2つ目の「モチベーション」について考えたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします!