ピア仲間の持つ意義
うつ病をはじめとして、メンタルな病気になった家族を持つ者同士で繋がることは、色んな点でメリットが考えられます。
家族同士も「ピア」なのです。
どんなメリットが考えられるでしょうか。
また、ピアとしてつながる上で、守るルールは何でしょうか。
1.ピアのメリット
①孤独、孤立の解消
家族が精神疾患になると、同居家族には強い孤独感と孤立を感じます。
一番身近な人が病気だから、頼れない。
自分にも専門的知識はない。
誰に相談すればいいか分からない。教えてくれる人もいない。
どんな問題も全て自分が解決しなければいけない。
と考えてしまいます。
その時、似たような経験や立場にいるピア仲間と繋がることは「一人ではない」という連帯感を感じることが出来ます。
②経験の共有
本などで勉強しようとしても、実際の生活の中で感じる
という具体的な要望に応えてくれるものは少ないです。
自分より先に経験している人の話は、大きな手助けになります。
③自己開示/自己受容
家族の病気についてどう思っているか、自分が今出来ていることは何か、もっとやらなければいけないことがあるのではないか、など。
家族の悩みは尽きませんが、それを人に話すことも難しいし、しづらいものです。
ですが、実際に困っていることを他者に話すことは、直接的なアドバイスや助けを得られなかったとしても、自分の中で大きな変化や気づきに繋がります。
言葉に出来ることで、自分で自分を受け入れることが出来るようになります。
ただし内容が内容なだけに、誰にでも話せるものではありません。
やはり同じ悩みを持っている・経験したことがある人だと思うことで、開示へのハードルが下がります。
ピア仲間には、他の人には言えない本心が話せるのです。
④モチベーションの向上
病気の家族との生活の中で、「あれもこれもやらなければ」と自分を追い詰めてへとへとになる日々が続きます。
義務感と疲労感ばかりが高まって、エネルギー切れを起こします。
本当にエネルギーが枯渇した状態で無理に自分を働かせると、家族もうつ病などの病気になりかねません。
共倒れです。
ピア仲間の話を聞いて、自分の気持ちを聞いてもらうことで、「自分ももっと頑張れるかも」というモチベーションの向上につながります。
息抜きをしながら、必要なモチベーションをアップさせて、そのおかげで頑張れることは「無理を続ける」こととは違います。
自己効力感、更にはPTG(心的外傷後成長)にも繋がります。
2.ピア関係で気をつけたいこと
①個別性の尊重
例えば同じ「うつ病の夫」を持つ者同士だとしても、うつになった理由、今の生活環境、家族構成、復職への筋道、主治医との関係性、薬の効き方などは千差万別です。同じ家族は二つとありません。
ピア仲間であっても、「お互い違うのだ」という、個別性を尊重する姿勢は大事です。
②上下関係を作らない
病歴が長いから偉い、ということはありません。あくまでピアは「仲間」であり、その関係は対等です。
長く頑張ってる人がすごいとか上とか、自分の家族は軽症だから自分は下なのだ、のような上下関係を感じる必要はありませんし、作れば害でしかありません。
③無理な自己開示は求めない
前項で、メリットの一つに「自己開示」を挙げましたが、これも、するもしないも当人の選択です。「仲間なのだから話すべき」のような無理な自己開示にメリットはありません。
他の人の話を聞いているだけでも十分自分の役に立ちます。
聞いてもらっている、という状況も、話す人にとっては大きな効果があります。
話したくなければ自己開示する必要はありません。
3.どこでピア仲間と繋がれる?
①家族会
一番積極的に活動している人が多い場だと思います。
大きな会からこじんまりした会、うつ病、依存症、発達障害など、疾病種類別にたくさんあります。
②病院の家族教室等
大きな病院だと、家族への心理教育の場が設けられているところがあります。そうした勉強会の場だと、同じ病院・同じ主治医に診てもらっている者同士として信頼感があります。
③SNS
一番手軽ですね。Twitter、Instagram、Facebookなど、一定のセキュリティ管理の元で交流出来るグループがあります。
手軽な分、マナーや個人情報の取り扱いには十分な配慮が必要ですが、対面ではないからこそ共有できる思いがあるでしょう。
4.まとめ
病気の治療そのものは、主治医の指示や相談が第一優先です。
しかし、毎日の生活の中で起きる問題や、家族自身のストレスや愚痴は、同じ悩みや経験を持った者同士のほうが共感しやすく、打ち明けやすいです。
そしてピア仲間との繋がりは「一人じゃない」と思えることが一番大きなメリットです。
自分なりの「ピア」とのつながり方を模索したいですね。