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#33 念仏の声するところ
法然上人の晩年
弟子の一人が尋ねました。
法然上人には、
ゆかりのお寺がありません。
亡くなった後、
どこにお参りすれば
よいですか?
高野山金剛峰寺や
比叡山延暦寺のように
それぞれの宗派には
宗祖ゆかりの寺が
ありますが、
法然上人には、
そのようなお寺はありません。
その時、法然上人は、
一か所に決めてしまうと
お念仏が広がりません。
念仏の声がするところは
すべて、わが遺跡です。
と答えました。
遺跡とは、
ゆかりのお寺のことです。
法然上人は、お念仏を
全国津々浦々に広めることに
生涯をかけてきました。
全国から
人が集まるような
立派な建物を
望んではいなかったのです。
法然上人の御法語の
中にあるお話です。
法蓮房申さく、「古来の先徳みなその遺跡あり。しかるにいま精舎一宇も建立なし。御入滅の後、何処をもてか御遺跡とすべきや」と。
上人答え給わく、「あとを一廟に占むれば遺法遍ねからず。予が遺跡は諸州に遍満すべし。ゆえいかんとなれば、念佛の興行は、愚老一期の勧化なり。されば念仏を修せん所は、貴賤を論ぜず、海人・漁人が苫屋までも、みなこれ予が遺跡なるべし」とぞ仰せられける。