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50年目の御礼参り
あ、ここにあったんだ。
いつ両親から手渡されたのかも忘れてしまいましたが、母子手帳と臍の緒と一緒に渡された中に『布多天神社』と書かれた御守りがありました。
七五三の写真に写る『大國魂神社』の場所を知ったのも、確か仕事で出かけた先だったと思います。
鳥居の脇の『安産祈願』の立て看板を目にし、若かりし頃の、私の知らない母の姿が浮かびました。
その御守りを母が直接買い求めたのか、父だったのか、近所に住む伯母だったのかは、もはや、知る由もありませんが、無事に産まれてきますようにと願ってもらい、私はこの世に生を受けたのだと思うと、まるで自分の出生の地に帰って来たかのような、有難い気持ちになりました。
神様、その赤ちゃんはこんなに大きな大人に成長いたしました。
今は亡き母の代わりに、神様に報告をしました。
ついに私は、自分の身に命を宿らせることはできませんでしたが。
そして、姉も同じく出産を経験しなかったので、せっかく繋いでくれた両親の血を守ることはできませんでしたが、今は『育てる』と言う形で、少しでも父母の教えを次の世代に伝えていけたら嬉しいと思うのです。
お母さん、私の娘への小言は、びっくりするぐらいお母さんに似て、幼い子どもに理詰めで自分でも笑ってしまうわよ。
お父さん、娘が嘘をついたりだらしなかったりするときに、自分のことを棚に上げてよくこれだけイライラできると驚くけれど、曲がったことが嫌いなお父さんの気持ちが、きっと私の奥底に宿っているんでしょうね。
娘もずいぶん私のやり方に慣れてきたようで、最近は少しずつちゃんと話を聞いてくれるようになっています。
子どもの幸せが親の一番の願いであるならば、お父さん、お母さん、私は今、心から幸せです。
神様、両親の願いを叶えていただき、ありがとうございます。