第4話:アメリカマーケティング協会のマーケティングの定義の変遷にツッコむ
前回のおさらい
どうもです!今日も明日絶対に役に立たない知識をお伝えしていきますね!
前回までは、経済学の誕生からマーケティングの誕生までの社会状況から読み取る必然性をご説明してきました。
今回は、アメリカマーケティング協会の定義を見ていきたいと思います。
アメリカマーケティング協会(AMA)は、世界中のマーケティング実務者、教育者、研究者、学生の3万人の会員を擁する団体です。
AMA:1935年の定義
AMAは1935年にマーケティングを、「マーケティングとは生産地点から消費地点にいたる商品及びサービスの流れに携わるもろもろの事業活動である。」として定義しました。
その後4回の改定を経て、2007年の定義が最新版です。先般申し上げている通り、マーケティングは生まれて100年も経っていないのでこれが定義だ!というものが定まっていません。
1935年の定義でのポイントは、A地点からB地点の、モノの移動によって価値が生まれるということが中心として考えられているわけです。いわゆる、流通業や商業に近い考え方をしていたんですね。要するに”マーケット”を見ることが大切なわけです。どこで、売るのが最も良いのかを焦点に検討していくんですね。
AMA:1960年の定義
初回の定義から25年後の1960年。改定が行われました。
「マーケティングとは生産者から消費者もしくは利用者への財の流れを方向づける企業活動の遂行である。」と定義づけています。一見、あまり変化がないように見えますが、よく見てみてください。
生産地点が生産者へと、消費地点が消費者へと変わっています。マーケティングの主体が、商品の移動ではなく、人になった瞬間です。マーケティングの主役が商品ではなく、人にフォーカスが当たったということがとても大切だと言うことは覚えておいてください。
AMA:1985年の定義
その後、また25年後の1985年に改定が行われました。(AMAは四半世紀に1度改定するのがお好きなのかな?と思っちゃいますね笑)
「マーケティングとは、個人及び組織の諸目的を達成させる交換を創り出すために、アイデア、財、およびサービスをめぐるコンセプトの創生、価格、プロモーション、及び流通にかかわる計画と実行のプロセスである。」と定義を変更しました。
ここで確認しておくべきことは、マーケティングを行う人が“企業(組織)”だけではなく”個人”も含まれるということと、消費する商品が、モノ(財)だけでなくアイデアやサービスも対象だということがここで再定義されます。
さらに、マーケティングをするためには、いわゆるマッカーシーのマーケティングの4Pを中心に検討すべきで、それをPDCAしていく必要があるよって言う時代になったわけです。
よく、ビジネス書で出てくるマーケティングとは、4Pを中心に戦略を立てて企業活動をすることだよ〜って言ってるのはこの時代に定義されている情報のまま止まってるってことで、時代錯誤も甚だしいと思っているので、これを機会にアップデートしてみてはいかがでしょうか?
AMA:2004年の定義
さて、次の定義の更新は25年後かと思いきや、19年後の2004年です。
「マーケティングは、組織的な活動であり、顧客に対し価値を創造し、価値についてコミュニケーションを行い、価値を届けるための一連のプロセスであり、さらにまた組織及び組織のステークホルダーに恩恵をもたらす方法で、顧客関係を管理するための一連のプロセスである。」と定義されています。
価値を連呼しているのが印象的な定義ですね。せっかく、1985年の定義まではより具体的に深ぼってマーケティングの定義を作ってきたのに、一気に「価値」という抽象的な表現に変わってしまいました。(個人的には非常に残念です)
経済学では価値はどこから生まれるのかということが、未だに真面目に検討されている分野です。安易に使っちゃうと地雷を踏むことになる危険な言葉です。前回の投稿で伝えたとおり、価値の源泉は、労働にあるとしている労働価値説や、効用によって生まれるとする効用価値説が存在していたり、人間が効用を得るすなわち価値が生まれるタイミングはいつなのか?ということはまだ定まっていません。人間が商品を消費するタイミングは、お店にお金を支払うときでしょうか?購入した財・サービスを使うときでしょうか?
そんな議論なんか知ったこっちゃないというアメリカらしい大胆な定義であるのは間違いないです笑
価値を連呼しているだけでなく、顧客いわゆるお客さんとの関係性を非常に重要視しています。購入者や消費者だけでなく、組織に属している人も対象だし、組織が世の中に送り出す価値の恩恵を受ける人全員、すなわちステークホルダーを重要視するようになります。
また、顧客関係を管理すると書かれているように、ライフタイムバリューを最大化することや、買ってもらっておしまいということでは済まされないということが書かれていますね。
また、1985年からの変化でいうと、公害や過激なプロモーション活動を通して、マーケティングに疑問を感じている人が出てきたため、このような定義に変えたということが言えるでしょう。
AMA:2007年の定義
さて、次の定義の変更は、25年後ではなく、なんと3年後の2007年。どうした、AMA!?と思っちゃいますよね笑 その定義はこちら。
「マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・配達・交換するための活動であり、一連の制度、そしてプロセスである。」と定義されています。
マーケティングは、人対人、人を拡大して社会との関わりがとても大切だと言うことが言われるようになったわけです。要するに、ものを売るための活動だけではダメであるとしました。
マーケティングは人を操作して買わせようとする悪魔のような方法だと言われた時代もあったのでこうして社会に媚びようとしているわけですね。
マーケティングの主体が一企業ではなく、私のようなPR会社の人や広告代理店やクリエイティブの人すべての人が主体であるということが明記されるようになりました。
この3年の間に何があったんだ!?と思っちゃうぐらいの大転換が起きたわけです。
この定義だいぶシンプルになったと思いませんか?
2004年に定義された、ステークホルダーから対象を拡大して社会全体に発展的に変更し、その上で、経済の大原則である「交換」という言葉を使っていることも、原点回帰でありながら最新に更新されていると思います。
私としても、この定義が一番しっくり来ます。
ただ、ざっくりしすぎているのでしっかりとマーケティングで何が行われているのかということを、知っている人以外はこの定義を覚えたからと言ってマーケティングのことがわかるわけではないだろうな〜と思っています。
まとめ
さあ、ここまでAMAのマーケティングの定義を振り返ってみました。時代の変化とともに定義が大きく変わっていることがわかりましたでしょうか?
大切なことは、時代の変化についていくこと。どんな変化にもついていく力を身につけることがマーケティングにとって重要なんじゃないかなと思っています。
それは、最新の情報を常にキャッチアップすることも大切だと思います。その最新情報は、他の人のnoteにたくさん書かれていて有益すぎるし、私はそんな有益な情報を与えることが出来ません。
大学院で勉強して一番大切だなと思ったのは、マーケティング論の諸先輩方である、経済学や経営学を学ぶこと。また、裾野を広げて社会学、心理学、哲学といった学問を学んで基礎固めをすることが大切だと思っています。
「明日絶対に役に立たない」の意味
今日のエントリーで一区切りです。
なぜ僕が、明日役に立たないマーケティング論と言っているかの意味を説明したいと思います。
明日役に立つような即効性のある情報は伝えることが出来ないけど、1年後、2年後じわじわと基礎があることでどんなシチュエーションでも対応できる人になれるのかなと思っています。(少なからずマーケティング論を学ぶにおいては)
今役に立たなくても、将来役に立てるようなことがあれば筆者冥利に尽きるものです。
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