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これからインフレはどうなる    (インフレと国家債務の関係)

高いインフレーションの発生原因

 高いインフレーション(物価の上昇)は、紙幣に対する信用が失われたときに発生します。
 高いインフレーションが発生する原因は二つあります。ひとつは、紙幣が大量に発行されることです。もうひとつは、紙幣発行の仕組みが変わることです。たとえば、金との兌換を約束した金本位制の廃止等が、紙幣発行の仕組みの変更にあたります。
 第二次世界大戦以降、先進国では、二度の高いインフレーションを経験しました。一度目は、第二次世界大戦直後の混乱期(1945年~1952年)です。この時は、戦費調達のために大量の紙幣が発行されていました。
 もう一度は1971年のニクソンショックによるドルの金との兌換停止です。ここに1973年の第一次オイルショック、1979年の第二次オイルショックが重なり、インフレが高進しました。この時は、基軸通貨ドルの価値を担保していた金(正貨)との兌換が停止されたことで、ドルとの固定相場制をしいていた各国通貨も含めて紙幣の仕組みが変更され、その裏付けを失いました。
その結果、紙幣に対する信用が揺らぎ、モノやサービスに対する評価が下がり、高いインフレーションが発生しました。

グラフ1
IMF(国際通貨基金)からのデータをもとに
スパークス・アセット・マネジメント社が作成
されたものを引用させて頂きました。    

現在のインフレーション

 2021年から発生した世界的なインフレーション(CPI消費者物価指数の上昇)について考えてみたいと思います。
 上記グラフ1をご覧ください。2020年時点で、世界の先進国の政府債務残高が、GDP比で第二次世界大戦終戦時に比肩する水準に到達しています。
 世界の政府債務は、各国の中央銀行の紙幣発行により賄われていますので、政府債務残高の急上昇は、インフレーションの原因である紙幣の大量発行を意味しています。

グラフ2
JPモルガン・アセット・マネジメント社が作成
されたものを引用させて頂きました。    

 上記グラフ2をご覧ください。いかがでしょうか、グラフ1の政府債務残高の伸びと、グラフ2の中央銀行の総資産の伸びがほぼ一致していることが、見て取れると思います。
 つまり現在は、第二次世界大戦終戦時に比肩する高いインフレーションが発生する条件がそろっていることになります。
 ここで、こんな質問を持つ方もおられると思います。「なぜインフレーションは、紙幣の大量発行を続けた後、ある時期を境に急に発生するのか。」
その理由は、以下の要因が考えられます。
まず第二次世界大戦時のケースでは、戦争の為の兵器製造という大きな需要があるので、紙幣の供給と需要がバランスし、高いインフレになりにくい。しかし、戦争が終了すると兵器需要が途絶えるので、いっきに金余りとなり、高いインフレーションが発生します。
では、現在はどうか、現在は戦争はありませんから、余った紙幣は、株などの金融資産に集中投資されました。つまり、CPI消費者物価指数の上昇には結びつきませんでしたが、資産インフレーションが発生していたのです。しかし、株も債券も価格が上昇し、これ以上の上昇が難しくなってきている様子です。この為、金融市場からあふれ出した紙幣がCPI消費者物価指数の上昇に結びつき始めていると考えられます。
米(FRB)欧(ECB)中央銀行は、金利を上げて、インフレーションと戦うことを宣言していますが、金利の上昇は、金融マーケットの価格下落を引き起こし、金融市場からあふれた紙幣が、更に高いインフレーションを引き起こす可能性があります。
いずれにしても、今回のインフレーションは、長く続く可能性が高いと考えておくほうが良いでしょう。次回の記事では、これから起こるであろう経済状況について、考察してみたいと思います。


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