【最上級にかわいいの!】Hitの理由分析レポート〜TikTok今週の1曲 [No.3 - 24.08-15]
こんにちは!山本慶太朗と申します。
普段アニメとかの音楽を作曲したり、アーティストさんのSNS運用代行などをする会社を経営してます。
毎週1曲、その時SNSで流行っている曲をSNS面、マーケティング面、音楽面の全てから徹底的に分析する"スーパー楽曲分析シリーズ"
第3回は「女性TikToker達のカワイイダンス」で話題沸騰中の
【最上級にかわいいの!/ 超ときめき♡宣伝部】を解説します!
本楽曲のヒットに関して、
1、なぜTikTokでここまでUGCが伸びたのか?
2、音楽的要素から紐解くHit理由
3、SNSトレンドにおける本楽曲の立ち位置
4、バズの恩恵と再現性のある知見
これらに関して解説していきたいと思います。
現代楽曲バズの理由を理解し、
音楽×SNSにおいて一歩先の知見を手にしたい方は
ぜひ最後までご覧になって下さい!
最上級にかわいいの!/ 超ときめき♡宣伝部 はUGC数が驚異的
TikTok公式動画のうち1本が450万回再生を超え、それ以外にも公式動画のみでミリオン超えの数字を複数達成した本楽曲。
そして着目すべきはUGC数(User Generated Contentの略)が9万を超える点。
この数字は国内リリースの曲では今年最大級に匹敵するほどの驚異的な数字と言えます。
ちなみに楽曲使用数(UGC数)はこちらの方法で確認できます。
↓↓
参考までに似たような雰囲気でTikTokにてヒットした楽曲「わたしの一番かわいいところ / FRUITS ZIPPER」は、
初投稿が2022年5月ーーつまり2年以上前にリリースされーー現在のUGCが【9.9万】であることを踏まえると、
リリースから約半年で同等の数字を出した本楽曲の凄さが窺えるのではないでしょうか?
毎回本レポートシリーズをお読み頂いている方にはお馴染みですが、
ひとまず本楽曲が【TikTok内でどんなバズり方をしたのか】を分析しましょう。
これは大きく3つのパターンに分けられます。
例えば①は本家動画の再生数合計となりますので、再生数の上限値が高くなりにくい傾向にあります。100万再生でも大成功、国内作品かつその年1番のヒット曲でも数千万再生くらいです。
しかし②は不特定多数のユーザーが投稿した動画の再生数合計となりますので上限値が高いです。10億再生されることも珍しくないです。
つまり一概に「TikTokでバズった曲」と言えど、どんな形でTikTokで再生されているのかを知らなければ分析のしようがないのです。
本楽曲は②に該当する楽曲です。
何故ならリリース直後にTikTokerたちがこぞって利用した楽曲だからです。
それは先ほど確認した「楽曲使用数」とリリース時期を照らし合わせればすぐにわかることですね。
それでは早速、どのような順序で楽曲使用数が伸びていったのかを確認していきましょう。
なぜUGCが増えたのか?
ここからは本楽曲がTikTok内でUGC数がどのような流れで増え、
その後どのような流れで他PHへ遷移したり、バズの恩恵をどのような形で受けたのか順番に解説いたします。
1、バスの拡大経路
UGCが増えたということはリリースから拡散に至るまでに明確な流れが存在するわけで、その流れを押さえることがバズが起こった理由を知る最も重要な手掛かりになります。
ですのでまずは楽曲が公開された日から時系列順にどのようなタイプの動画がアップされ、どのように広がっていったのかを見ていきましょう。
弊社ではこれを【イノベーター理論】を用いて分析しております。イノベーター理論とはサービス等の市場での普及率を示すマーケティング理論の一つです。
詳しくはこちらのサイトの解説が分かりやすかったので拝見ください。
今回もそれに倣い拡大経路の順を以下の3つに区分してリサーチいたしました。
それぞれの区切りは本家リリースから投稿までの期間で判断します。
ざっくり以下の通りの認識で今回は分析します。
(1) イノベーター (一番最初に広まったきっかけ)
→今回は初期の投稿から約30以内で投稿されたもの
(2) アーリーイノベーター (初期段階で拡散されたきっかけ)
→今回は約30〜45日以内で投稿されたもの
(3) アーリーマジョリティ (早期段階でさらに拡散されたきっかけ)
→今回は約45日以降で投稿されたもの
(1)イノベーター
今回のイノベーターは【本家と複数のアイドルグループ】の動画であり、
一番最初に使った30動画の累計再生数は1,500万回を超えます。
そして本家も一つではなく複数の動画で多くの再生数を獲得しています。具体的には累計1,500万再生のうち本家が1,000万再生ほどを占めています。
一例がこちら。
本家以外のアイドルグループのUGC
イノベーターが現れるかどうかは、TikTokUGCバズの第一関門です。
例えば1993年にリリースされた「ロマンスの神様 / 広瀬香美」は執筆時現在使用数が4.7万を超えているのですが、
これも広瀬さんご自身や親交のあるインフルエンサー等が使用した動画を投稿したものがイノベーターとなりました。
つまりTikTokで伸びるポテンシャルのある楽曲でも、イノベーターが現れなければいつまで経っても伸びないのです。
そのようなイノベーターがいないだけでTikTok視聴者がめちゃくちゃ求めている楽曲は恐らく無数に眠っており、それが今後も次々と新規発掘されていくでしょう。
そんな中、自身らがイノベーターとなれる数字を持っている
「アイドルグループの新曲」や「インフルエンサーの新曲」は
『イノベーターが現れるのか?』という関門を無料で高い確率で突破できるのでTikTokUGCバズとは非常に相性の良いアーティストということができるでしょう。
僕は寧ろアーティストがTikTokアカウントを育てる理由はここが一番でかいとすら思っています。
超ときめき♡宣伝部さんは公式アカウントに加え、メンバーそれぞれが高い影響力を持つアカウントを持っていることが「すきっ!」に続いて2曲目のHitを出した事の大きな理由でしょう。
とはいえ無慈悲なTikTokAIはフォロワーが多いアカウントの動画=必ず再生数を出すということはあり得ません。
それでは本家動画が伸びた理由をもっとより詳細に分析していきましょう。
①TikTok視聴者とクリエイターが求める楽曲要素を満たしていた
→こちらは色々と書きたいことが多すぎるので、後の項目で詳しく解説しますが端的に言えば『他の曲にありそうでなかった感情を刺激する楽曲』に仕上がっていたのです。
②視聴限度回数の高いコンテンツだった
→ これは本家動画が複数伸びている大きな理由と考えています。
まずここで言う視聴限度回数とは「同じ企画を繰り返し見てもらえる回数」として扱っています。
例えば名古屋の居酒屋さんの公式垢「YADUKI/居酒屋 哉月」では
同じアカウントで同じダンス動画を擦っているのに毎動画かなりの再生数を獲得しています。
この状態こそまさに「視聴限度回数が高い」と言えるのですが、
シュールでぼーっと感情でみても面白い映像なのでそもそも仮に同じ動画でも何度も見れる
踊っている人や後ろで控えている人、背景の人などがちょっとずつ違いそれが面白いので同じ企画でも違う感情でみれる
などの理由がありこの状態を作れています。
つまり視聴限度回数が高い動画企画とは『アーティスト自身が自分でイノベーターとなり動画再生数を稼ぎやすい企画』でもあるのです。
話を本楽曲に戻しましょう。
本家の動画は女性アイドルが可愛い楽曲に合わせて可愛いダンスをしています。
これらの動画を見たときの視聴者の感情である「可愛さ」は出演する女の子や動画の切り口により当然異なりますよね。
ゆえにそもそも「可愛いを訴求する動画」は視聴限界回数が多くなりやすい傾向があります。
また極端な話下記のようなペット動画のBGMで使用しても「カワイイ」を引き出せた本楽曲は「可愛いのマス」をとれるBGMだったと言える点も視聴限界回数を伸ばした理由です。
実際にこちらの動画はイノベーターに近い役割を担いました。
またとき宣さん公式垢では下記のようなタイプの動画も初期に投稿しており
これらも「可愛いを様々な角度から切り取る事で、本楽曲を複数の切り口で見せ動画を量産し、イノベーターの再生回数を伸ばした戦略だった」のではないでしょうか。
このようにアイドルグループが自身らの曲を自身らがイノベーターとなり拡散するフェーズにおいては、
登場するメンバー(複数のカップリングパターンに変える)・異なる服装・異なるシチュエーションやアングル・背景や動きの変化
…などのアイデアを振り絞りバリエーションの動画を出す事で、
広告予算を投じずとも自然にイノベーターに再生数を獲得しやすい構造になっていると考えます。
例えばUGC9.9万を記録した「わたしの一番かわいいところ / FRUITS ZIPPER」もアイドルグループの楽曲で、初期UGC拡大に本家が複数回寄与しており、アーティストそれぞれが数字を持っている状態が強い事は様々な楽曲が証明しています。
【+@】本家以外もイノベーターとして取り上げたのはなぜ?
またここで注目すべきは、先ほど猫ちゃんアカウント「くうトム」さんを紹介させていただいたように「"本人たち以外"もイノベーターフェーズで積極的に拡散に協力していた」点です。
このような本人たち以外の協力者が最初期に現れた事も"内輪感を払拭し"アーリーアダプターに繋げた大きな理由です。
本人たちが動画を作る理由は「無料広告」の役割もあるので当然として、他の人たちが動画を作る理由は別にあると推察するのが自然です。
これらを最後に考察しましょう。
まず1つ目の理由は
過去のヒット曲によって知名度を獲得していた
です。
当然ですが、既存の特大ヒット曲を出している人たちであれば「次の曲もヒットするに違いない!」という打算が周辺のクリエイターにもありその先行者利益を取ってやろうという思考もあっただろうと推察できます。
これはTikTok界隈で過去Hit歴があり知名度もあるアーティスト全員に当てはまります。
但しその後それがアーリーアダプターへと繋がるかどうかは次に紹介する理由と、その理由を歓迎する界隈の規模によります。
この話は次のアーリーアダプターの分析セクションで詳しくします。
もう1つの理由は
自分の内側にある可愛さを訴求できる楽曲だった
です。
これは楽曲分析のセクションで詳しく解説します。
(2)アーリーアダプター
その後、アーリーアダプターとして女性TikTokerによるUGCが拡大していきます。
上述の理由の通りでイノベーターが現れ、そして楽曲そのものにもインフルエンサーが得をする理由があった本楽曲は難なく・速攻でUGCの流れが加速します。
ここではより細かく【女性TikTokerの中でもどこの界隈が使っていったか】をみていきましょう。
これを紐解くことでより詳細にTikTok内の業界勢力図が見えてきます。
①1番手:オタク女子界隈
まず広がったのはオタク女子界隈。
オタク女子界隈とは推しを応援することを生き甲斐とし推し活をコンテンツとして発信している一般人やインフルエンサーのクラスタです。
この界隈は「自分の好きなものを通して評価されたい」という欲求があります。その中でも本楽曲の持つ欲求に近い"とにかく可愛いものが大好きなオタク"が真っ先にUGCを広げます。
故に投稿理由は「推し活」であることが多いクラスタです。
一例がこちら。
※2/22 投稿 200万再生
②2番手:流行敏感女子界隈
その後、「流行敏感女子界隈」でUGCが徐々に広がり始めます。
この界隈は「バズって一発逆転したい!」などの欲求があるマイクロインフルエンサーを中心とした健気で力強い"次期Topインフルエンサー予備軍"とも言えるクラスタです。
超大手のような影響力がまだないが故にトレンド曲にいち早く食いつく事など様々な手段でコンテンツ力を高め彼女らと差別化をしようと奮闘しており、大手よりも早く楽曲を取り上げる傾向にあります。
ゆえに投稿理由は「打算」であることも多いクラスタです。
今回も一例動画の場合、先ほどのオタク動画から4日後に該当動画が投稿されています。
③3番手:量産型女子界隈
さらに時期を同じくして「量産型女子界隈」でのUGCも広がり始めます。
この界隈は可愛いものに敏感な女子たちのクラスタで、具体的に言えばアンクルージュやリズリサなどを好んで着る人たちです。
ここまでのバズをきっかけにそのアンテナに触れ、可愛いに正直な彼女らの可愛いセンサーに引っかかったから投稿したと言えます。
故に投稿理由は「可愛いと直感的に思った」となります。
④4番手:TopTikToker界隈
そしてここからTikTokトレンドの行方を決める「TopTikToker界隈」にUGCが拡大し始めます。
この界隈は文字通りTikTok内で人気のトップを担う層です。
彼女らは「自身のブランディング・魅力を引き出す曲を使う」傾向にあります。
逆を言えば、彼女らに取り上げられた曲は瞬く間にトレンドとして認知されていきますが、今回は最初のオタク動画から6日後に拡大開始。
(この規模のUGC曲では一般的な拡散スピード)
ここで複数名のTopTikTokerが取り上げたことによっていよいよ本楽曲はトレンドと化していきます。
ここで1つ、プロモーターの皆様へめちゃくちゃ有益な話をします。
TikToker達は文脈を重視します。
つまり日々変化するおすすめTLの流れ的にそのタイミングでその人が投稿する事の意味を考えているのです。
大手が最初から流行りはじめの曲をやるのはダサい、流行っているからと言って私がこのタイミングでこれをやるのはダサい
……などの文脈を読むことを彼ら彼女らはしています。
これらを無視して、案件などで強引に最初から大手にアクセスしようとするのは悪手です。
あくまでTikTokは自然発生文化が中心。
案件でアクセスできる道は限られていることを知りましょう。
なのでUGCを案件で無理やりお願いする場合は、誰に対してどのような順序でアクセスしていくかをちゃんと設計しないといけないんです。
これをやってない #PR はことごとく失敗していますね。
このように界隈によって楽曲の取り上げる理由は「打算」だったり、単なる「好きという気持ち」であったり様々です。
TikTokUGCバズを狙うのであれば、インフルエンサーがどんな気持ちで楽曲を使いたいと思うのかを逆算し、PRの仕掛けとシナジーを持たせた楽曲を作っていくことで成功率がグッと上がります。
(3)アーリーマジョリティ
ここまで広がった後は、推し動画や一般女子のUGCが生み出されるだけでなく「歌い手・VTuber界隈」など女子の踊り動画以外の界隈へも広がり始めます。
これ以降に波及した界隈は流行の最先端を行きたいというより、既にある流行りに乗っかって「自分も楽しみたい」や「着実に再生数を取りたい」などの欲求があり、流行りの波を感じ取った後に動く傾向にあります。
故にアイドル → 有名女性TikTokerと広まり「確実に人気のある可愛い曲」となれば、可愛い便乗で一般女子のUGCが広まるのはもちろん、数字が取れるという意味で「歌い手・VTuber界隈」に広がるのも納得と言えるでしょう。
特に「歌い手・VTuber界隈」は男性クリエイターが多く見受けられましたが、これには理由があります。
細かく解説すると歌い手のインサイトの話になってしまうので割愛しますが、男性歌い手界隈は多くの場合クリエイターに疑似恋愛をさせるビジネスモデルをとっています。
逆にクリエイター目線からすると「恋をさせる」必要があり、
その際に「可愛い」という感情は母性を刺激しファンになる重要なファクターです。
ですので、数字が確実に取れる楽曲という大前提はあった上で、
男性の「可愛い」を見せるのにも適していることから「歌い手・VTuber界隈」でもUGCが広がったと筆者は推測しています。
同時に女性YouTuberも取り上げるようになり更なる拍車が。
そして本家の新規動画も変わらず回り続けます。
一例として5/2投稿で1200万回再生されている本家動画がこちら。
ここで本家の動画が回り続ける理由として先程の「視聴限度回数が高い」というのは当然あるのですが、ここまでの長い期間を経てもなおまだこれだけ再生されるのにはまた別の理由もあります。
結論「感情的価値」が高いからです。
「感情的価値」とはそれ自体が資産としてストックされるものではないが、繰り返し味わっても充足感を得られるモノのことです。
例えば「綺麗な景色を見て癒される」「空腹でご飯を食べて幸せを感じる」などですね。
もちろんあまり連続すると飽きが来ますが、
これらは何回体験しても幸せを感じることができますよね?
一方で対として「論理的価値」(情報的価値)が存在しますが、これは一度手にしたら欲求が低下するもの (例 : 本で得た知識など) で、繰り返し獲得したいものではありません。
TikTokで可愛い女の子を見たいと思うのは「目の保養」や「憧れ」にしたいから。
つまり「感情的価値」が非常に高いのです。
そして「感情的価値」は繰り返し獲得したいと思える特性があるためUGCが拡大しやすいのですが、連続すると飽きが来ます。
つまり感情的価値が武器となるコンテンツをPRする本質は視聴限界数が高い状態を作れるかどうか。
それが成功した場合本家以外のUGCが回ると価値の切り口のパターンが無数に増え、それがしばらくすると「またこの子たちに立ち返りたい」という感情の循環が生まれるのです。
これは表面上の価値を瞬発的に摂取することが中心となるショート動画市場では特に考えなければいけないことで、二次創作され難い企画は長期的に見るとファンを獲得し難いのです。
感情的価値 × UGCの視聴限界回数の上限突破
まさに本楽曲はその成功例と言えます。
やはりバズの火を自ら再燃させられるという意味で「視聴限度回数が高い構図」が強いというのは間違いないですね。
本楽曲はこの後も順調にUGCが増えていくフェーズに入る事となりました。
-今までにない「可愛い」の表現
まず前提となるのが、多くのTikTokerが持つ欲求。
その一つが「自分の可愛さを評価してもらって認知獲得や承認欲求を満たすこと」です。
TikTokにおいて「可愛いをアピールできる曲」は1番王道です。
なぜなら前回までのレポートでも散々話していますが、楽曲はインフルエンサーにとってインスタグラムのフィルターのように『自分を盛るためのツール』であり「可愛い」方向に盛る事はTikTokで王道の勝ち方であるクリエイターが多いからです。
ですので今まで沢山の可愛い曲がHitしてきた歴史を踏まえ(それこそ同アーティストの過去曲「すきっ!」などもこれに該当)通常の可愛い曲では中々伸びなくなってきています。
そこで近年のTikTokでは、
様々な文脈を持った「可愛いを見せる」楽曲がヒットしています。
例えば筆者が面白いと思う今年のHit事例を挙げるなら
「全方向美少女 / 乃紫」でしょうか。
こちらの楽曲は「正面で見ても横から見ても下から見てもいい女」のように歌詞にカメラワークを促すような内容を入れることによって、それに沿った動画を撮影し、自然と自分を映すことができます。
そしてそれが可愛くても良いし、ネタ動画でも良いことで視聴限界回数も上げられていますね。
では本楽曲だけが持つ「可愛いの見せ方」とは何なのか?
それは「困難や逆境に立ち向かう乙女の姿」だと考えています。
「君に振られて最上級にかわいいの」
「自分史上一番トキメキ放つわ」
「認めなよ これが乙女の逆襲だ」
ただ単に可愛いだけじゃなく、努力の先にその可愛さがあるんだという強い感情。
これは多くの一般女性から共感を得るだけでなく、クリエイター側にとっても過去の苦労や裏に秘めた様々な想いを一つの動画に込めて爆発させるだけの感情を生み出しているように思います。
さらにこのような"負の感情"を力に変えるような歌詞が人気要素になり得るというのは、過去にヒットした「シル・ヴ・プレジデント / P丸様。」からも分かるのではないでしょうか。
「誇り高きアイドル / feat. Kotoha」なども似た要素を持つかもしれませんね。
…と、数ある楽曲の中でこの「最上級にかわいいの!」がアーリーマジョリティ以降まで広がった根本の理由はこの「努力する乙女の可愛い姿」をどストレートに表現した楽曲だからと考えています。
そしてそんな楽曲をアイドル本人達がイノベーターとなって上手く認知を獲得することができたため、アイドル (芸能人) → TikToker → 一般女子とまさに可愛いを追求する全ての者に滞りなく広がった。
これがUGCがここまで広がった理由ではないでしょうか。
-時代が求める「可愛い」のあり方
さらにこの楽曲がバズったもう一つの理由として「昨今の可愛いトレンドの空きポジションを上手く取ったから」という点が挙げられるかと思います。
2024年に流行った他の可愛い訴求楽曲を見てみると、先ほど挙げた「全方向美少女 / 乃紫」や「魔性の女A / 紫今」を中心に、
ストレートではない変化球的な可愛さを訴求できる曲が中心でした。
(そうなった理由は前述の通りですね)
…対して「最上級にかわいいの!」はどうでしょうか?
曲調はもちろん、内容に関しても失恋、努力する乙女など、より等身大の可愛い自分に目線を合わせてくれる楽曲に仕上がっています。
昨今のオシャレ系可愛い見せトレンドというTikTok全体の流れで欲を満たせずにいた「等身大の可愛い!を表現したい層」の感情を上手く刺激し、言うなれば「可愛くてごめん / feat.ちゅーたん〈CV:早見沙織〉」などの一昔前に流行ったどストレート可愛い系の一部需要の掘り起こし的な形でポジションを取ったと筆者は判断しています。
その上で過去に見てきたどストレートな訴求とは少しずらして嫌味をなくしたのが先ほど触れた「困難に立ち向かう系」という切り口ではないでしょうか。
まとめると、
TikTokで恒久的に人気のある「ストレート可愛い」
それが近年溢れすぎて若干それを避ける流れになっていっていた所で、改めて「ストレート可愛いっていいよね!」というストレート豪速球を投げつつ、しかしちょっぴりスパイスも入っていた。
これが今年この曲がHitしたカラクリなのです。
2、楽曲の音楽的特徴の整理
ここまで楽曲がバズった理由を「楽曲の描く感情」から解説してきましたが、やはりそれだけではバズは生まれません。
TikTokでUGCがバズるということは
楽曲そのものが何度も聞きたくなる魅力的な音楽要素を持っているというのが非常に重要です。
本セクションではそれが何なのか音楽面から紐解いていきたいと思います。
今回取り上げる要素は大きく2つ。
(1)可愛い声を作るヴォーカルアレンジ
(2)ハピネスを感じるオケ
これらの要素が「努力する乙女の姿」にピッタリマッチしていると考えているので、それぞれ解説します。
(1)可愛い声を作るヴォーカルアレンジ
①【重要】 可愛い声の解像度を高めよう
このセクションの話はとてもマニアックですが、
TikTokマーケティング戦略を考える上で"非常に重要な話"です。
まず前提として「可愛い声とは何なのか」を一定以上の解像度で理解しておくことは、バズ楽曲制作において非常に重要な意味を持ちます。
なぜなら、
「可愛い声の曲」+UGC(女の子のダンスなど)の「可愛い絵」
→これが視聴者の価値(目の保養や憧れ等)となりいいね・保存などのエンゲージメント獲得につながっており、
「どんな可愛い声」なら視聴者に何の影響を及ぼすのか
を理解しなければ取っていきたいエンゲージが取れないからです。
例えばあなたは「女性声優の可愛い声」と「女性アイドルの可愛い声」の差をTikTokマーケティング的視点から解像度高く違いを説明できるでしょうか?
"女性声優の可愛い声"は必然的にアニメや二次元的な要素と直感的に紐づくがゆえ、彼女らの職人技術によりある意味音声としては記号的で、海外ユーザーの聞きなじみが良いなどの効果もあります。
一方で"女性アイドルの可愛い声"はそれらと比べ素人みが強いが故記号的な印象はなく、逆に日本人にとっては親近感があります。
この差はまず海外エンゲージの取りやすさが違う事は想像に容易いです。
国内女性複数人アイドル曲で海外UGC回る曲がほぼないのはこれが理由かなと推察しています。
他にも親近感のある声である故に例えば韓流超トップ層のアイドルなどが取り上げる際に文脈を踏まえる必要が出てくる点や、逆に生え抜きで有名になった国内のTopインフルエンサーがその自身の魅力を再認識させるためにその声を使いやすかったりする、などの違いもありますね。」
これらの声が持つ根本の性質はコード進行や編曲では根本的にどうにかできる問題ではありませんので、
アーティストの声質を根底にマーケティング戦略を構築する必要があると考えております。
ここ読み間違えると全ての戦略が無に帰します。
このようにTikTokマーケティングにおいて「声」を分析する際は、
ジャンル感ではなく、その声がインフルエンサー達に直感的にどんな印象を与えるかが重要となります。
何故ならクリエイターらは音楽のジャンルや文脈までは見られておらず、そのサウンドが持つ空気感が彼らの作品に対してどんな演出効果を与えるのかを見ていますし、視聴者側も音楽 (ましてやショート動画で突発的に耳に入るもの) は右脳的 (感覚的) に印象や視聴の有無を判断しているからです。
さてそのような視点でとき宣さんの声を観察すると、親近感があるが故に取り上げてもらいやすかったインフルエンサーとそうでなかったインフルエンサーがいる事は今まで紹介したUGCを振り返っていただけるとわかるかと思います。
また本分析レポートの第1弾は「シカ色デイズ」を取り上げておりこれは女性声優モノですので、こちらで紹介したUGCとの差を再度観察してもらうことでもその解像度が深まる事を付け加えておきます。
②ヴォーカルアレンジに関して
早速細かなボーカルアレンジが全体の印象に与える影響について見ていきましょう。
ポイントごとに解説します。
まずは比較のしやすさからリフレインする「最上級にかわいいの!」のフレーズの歌い方に注目。
このフレーズはユニゾン (複数人が同じメロディを歌う) パートになっていますが、着目すべきは主に2つ。
1. 喉頭 (喉仏) を高めにセット
2. 声帯を薄めに使う
1. 喉頭 (喉仏) を高めにセット
→ 喉頭を高めにセットすることによって同じ音域を歌っていても高い声の成分がブーストされ、明るい印象になりやすいと言う効果があります。
2. 声帯を薄めに使う
→ 前提の仕組みとして声というのは基本的に声帯を閉じてそれらが振動することによって発生します。そしてその閉鎖具合が強いほど俗にいう「地声」弱いほど「裏声」に近づいていきます。
※分かりやすさのため、厳密な定義を若干無視して解説しています。
地声が多いほど「力強い印象」になり、弱いほど「優しい印象」になる。
そして今回は声帯の閉鎖をそこまで強くは行なっていないため、これが「優しい印象」を与える理由となっています。
これら1と2が組み合わさることによって「優しく可愛い」という印象を与えています。
サビ中間とサビラストで入る「U-HA コーラス」も筆者としては印象に残りました。
このアレンジでのU-HAの入れ方は"神秘感"を強調していますね。
これがUGCの映像に載せた時、インフルエンサーらを魅惑的で視聴者達の憧れの存在であることを強調しています。
また最後に「認めなよ これが乙女の逆襲だ!」のフレーズのアクセントの付け方にも注目。
最後のアクセントの付け方が良い。
アクセントとはその部分だけ強調するように歌うことですが…
具体的には「乙女の逆襲だ!」の「おと」「め」「ぎゃ」「しゅう」「だ」の部分にアクセントを短く軽やかに跳ねるようにすることで可愛く言い放つ爽快感を演出していると考えています。
(2) ハピネスを感じるオケ
マーケティングにおいて「編曲」とは「コアとなる魅力を増幅させる役割」です。
女性の衣装のような役割ですね。
本楽曲で編曲面でマーケティング的にいい役割をになっていると思った箇所は主に3つ。
①ブラス + 弦 + チューブラベル
②一定間隔で連打されるドラム
③Timp.のcresc. roll
①ブラス + 弦 + チューブラベル
本楽曲のサビは弦とブラスが両方鳴っています。
このようなウワモノモリモリのアレンジは一般的なアイドル曲からすると珍しく、ディズニーやブロードウェイ的なワクワク感と近いものを感じさせます。
さらにその上に"ハピネスの象徴"とも言える『チューブラベル』までもが重なっており、女としての幸せの絶頂感を感じさせる。
似た編成のPopsとして筆者が印象に残っているのはアイドルマスターの「Star!!」
こちらも同様に女の子達をシンデレラにして!というテーマで歌った曲であり、本楽曲と同様に女のハピネスを強く感じるサウンドという点で類似の印象を抱く。ワンチャンリファレンスかもしれない。
しかしながらここで編曲のうまいポイントが、こんなに音が載ってるのに整理されており重くない。
Star!!の方が断然重い。この曲はそれでいいけど、TikTok的にはそれだとややUGCが伸びにくくなります。というのもTikTokはBGMとして拡散される性質上、音数が多くて重い音楽は通常敬遠されます。
しかし編曲的に整理されている影響でウワモノの種類自体は多いのに同時になっている音数が少なく、BGMとして映像の邪魔をしすぎないよう配慮されている点はまさに匠の技がSNSにも活きています。
Star!!だとストリングスとブラスが同時に別々のことをやってたりするんですが、本楽曲ではそう言う箇所がほぼなくウワモノが1つの束になっているような感覚。とてもレベルが高いです。
②一定間隔で連打されるドラム
本楽曲は終始ドラムが一定の間隔で連打されていますが、このリズムは俗に「心臓ビート」と呼ばれ、等間隔で「ボンっ」という音が鳴るリズムになります。
文字通り心臓の鼓動と似ているため、これが本能的にワクワク感を演出する効果があると言われています。
よくクラブで流れているEDMに使われているのはこれが理由ですね。
この曲のUGCにおける効果は絵に対する『演出』であり、背景となることが求められるのでグルーヴに癖があってはいけません。
キメなども最後しかなく、一定間隔で打っているだけというこのリズム判断は完璧です。
③Timp.のcresc. roll(割と余談)
サビ前ブレイクのタイミングでオケはティンパにだけになります。
これが個人的にはアリだなぁと思っています。よりワクワク感出るからです。
後ほど解説しますが、ここは完全に無音でも、Timp.が入ってても正直どっちでも成り立つセクションです。マーケ的にはどちらでも同じような成果がでる。
こう言うマーケ的にはどっちでも箇所で音楽面を優先したジャッジができるの、マジ好きなんですよね、個人的に(笑)
「やっぱ俺らがやってるのっていい曲作ることだからさ、数字取れるならなんでもいいっていうんじゃなくて楽しい曲作んないとねぇー」っていう作り手の想いが伝わってくる2拍。個人的に凄いアガったので紹介でした。
3、楽曲構成の整理
上記でお伝えした要素は曲としての全体像です。
しかしこの楽曲がバズる理由は視聴者の感情から逆算された楽曲構成にもあると考えています。
それが以下の3つ。
(1) 冒頭のワンフレーズ「だって今!」
(2) 徐々に盛り上がるサウンド
順番に解説します!
(1)冒頭のワンフレーズ「だって今!」
「だって今!」と冒頭の入りでワンフレーズ入れるという手法は直感的に気になってしまい、スワイプ防止に寄与するというシンプルな効果が期待できます。
これは心理学の「カクテルパーティー効果」の応用です。
カクテルパーティー効果とは、カクテルパーティーのような騒がしい空間でも自分の名前を呼ばれると何故か気付いてしまう効果、のことであり、
スワイプすれば永遠に動画が出てくるカオスな市場はまさにカクテルパーティー。
その中で冒頭で「だって今!」と一言言われることで、つい指を止めてしまうのです。
これは冒頭で使うのに非常に効果的です。
さらに「だって今!」と同時にバックの演奏が一瞬消える"ブレイク"が入るため、よりボーカルのインパクトが強調されています。
弊社ではTikTok Hit曲の冒頭パターン分類表を制作していますが、
このような【キャッチフレーズ + ブレイク】のパターンは中でも往々のパターンとして様々な曲で定着しています。
一例でいうと『恋愛脳 / ナナヲアカリ』などですね。
…ただこの手法、安易に真似しては落とし穴にハマってしまいます。
こちら本シリーズ第1弾noteで言及したのですが、最近の冒頭は「シカ色デイズ / シカ部」の "ぬん!"というフレーズなど、より短期的で直感的なものが刺さりやすい傾向になってきています。
詳しくはこちらの4章を確認ください。
その観点から見ると「だって今!」の冒頭は昨今のTikTok的には若干不利です。
トレンド感で言えば2024年現在「ぬん!」の方が有利です。これは普段からTikTokヒット曲を分析していないと見えてこない視点ですね。
しかしそれでも伸びている理由は、
イノベーターが非常に強かった×第1章「今までにない可愛いの表現」などの時代の運とのハマりがあった
です。
ですのでこれを安易にトレンドだと思って真似することは悪手で、あくまで トレンドなのは「ぬん!」のような短期直感型であることを補足させていただきます。
逆に言うと音楽を構成する要素全てを一番トレンドなことにする必要はないとも解釈できますね。
(2) 徐々に盛り上がるサウンド
さらに本楽曲は
・「だって今!」= ソロパート
・「君に振られて」 = ユニゾンパート
・「最上級にかわいいの!」= ユニゾン + ハモリ
とワンフレーズごとに音数が増えて盛り上がっていくという仕掛けが施されています。
これを冒頭で行うことによって期待感の演出に繋がり視聴維持率を高めている、というのも本楽曲が伸びた理由の一つだと考えています。
ここまで音楽的な側面でどのような伸びる要素を兼ね備えていたのかを解説してきましたが、
やはり音楽というトレンドに大きく左右される領域の話をする以上、
TikTokにおける楽曲流行の時代背景についても触れておかねばなりません。
というわけでここからは、何故今の時代この曲がHitしたのか、TikTokトレンドの流れを踏まえた本楽曲の立ち位置についても解説していきたいと思います。
4、時代背景における本楽曲の立ち位置
結論:むしろ時代の流れに逆行した楽曲
TikTokは流行りを創設するプラットフォームのため、そこでバズるには『今時代が求める曲をリリースすること』は非常に重要です。
しかし前述の通り本楽曲はいくつかの要素でその流れに逆行していて、
例えば今年のTikTok特大ヒット曲を見るとわかるのですが、
「Bling-Bang-Bang-Born / Creepy Nuts」
「しなこワールド / しなこ」
「シカ色デイズ / シカ部」
など直感で面白い楽曲が伸びるようになってきています。
その中で本楽曲は感覚的に面白い曲かと言われると正直そうではないです。
ですが、第1章で解説した「可愛いの新しい表現」や「そもそものグループの魅力」がバズの大きな理由だと想像しています。
これについては第5章(1)と第6章(1)でも改めて触れますのでそちらをご確認いただければと思いますが、いずれにせよアーティスト自身の魅力と掛け合わせれば、直感だけでなく文脈優位の曲もまだ伸びるということ。
5、バズった結果得られたものまとめ
この楽曲がバズることに一体何の意味があるのか?
(1)成果
執筆時現在、フルバージョンMVがYouTubeで約600万再生を達成。
さらにLIVE映像も組み合わせると累計1000万再生を突破。
それだけでなくTHE FIRST TAKEにも出演し、こちらは400万再生を突破。知名度だけなくアーティストとしてのブランドが高まったのは言うまでもありません。
さらに2024年7月~9月、海外公演を含む全国9都市11公演の全国ツアーの開催が決定。
2024年12月のアリーナ公演も既に決定しているようです。
(驚異的ですね…)
このようにただ1楽曲がバズったのではなく、
「大きな箱でのライブ」というアーティストの最大の目的と言っていい部分にしっかり繋がっているのが本楽曲バズの注目すべき点だと思います。
しかし、楽曲が伸びれば必ずこのように日の目を浴びることができるのか?と言われればそうではなく、実際に一つのバズ楽曲以降日の目を浴びることのできなかったアーティストは少なくありません。
では、これらの違いは何なのでしょうか?
(2)「最上級にかわいいの!」 と ファン増加の一貫性
-結論1:歌が上手い
可愛い楽曲・可愛いビジュアル、これらを兼ね備えたアイドルグループは数多く存在します。
そしてアイドルを好きになる理由が「憧れ」や「疑似恋愛」という意味では、歌だってとりあえず可愛ければ良いと筆者は考えていました。
しかしそれだけでは売れないアイドルが存在する中で"超ときめき♡宣伝部"はどうでしょうか?
結論の1つとして、歌が上手いことが他のグループ以上の差別化になってファン増加につながったと考えていますが、これは複数動画のコメント欄から見受けられます。
例えばTHE FIRST TAKEの動画。
「ここまで歌える子達だと思ってなかった!」
「〇〇の声が良すぎる」
「歌声が良すぎて生でライブ聴きたい」
このようなコメントに数多くのグッドがつけられ、多くの視聴者がそのように感じでファンになっていることが証明されています。
さらに3年前に投稿された動画にも直近のコメントが多く見受けられるのもその強い根拠ではないでしょうか。
つまり「TikTokバズ → フルで歌を聴く → 他の楽曲も聴きたくなる → ライブに行きたくなる」の流れが綺麗に作れていて、それらを繋ぐ1つが「歌の上手さ」であったことが客観的に見て取れます。
-結論2:哲学や生き様にファンがつく
彼女らがグループを結成したのはなんと10年前の2015年。
2021年に『すきっ!~超ver~』がバズるまで長い下積み時代を乗り越えてきたわけですが、その中で特筆すべきは「一貫したコンセプト」
それは『「ときめく恋と青春」をテーマに世界中のみんなに“ときめき”を宣伝(お届け)する』というコンセプトで、実はこれは時代の流れに一部逆行している側面もありました。
具体的にはK-POPアイドルの台頭により日本のアイドルグループも似たようなスタイリッシュ型に寄せる風潮が押し寄せる中、伸びない期間も彼女らは自身のコンセプトを曲げませんでした。
「流行りに寄せた方が伸びるのではないか」という葛藤がないわけではなかったと思いますが、結果的に自分たちのアーティシズムを貫いて有名になったわけですよね。
そして直近でバズったのが『最上級にかわいいの!』
「君に振られて最上級にかわいいの」
「認めなよ これが乙女の逆襲だ」
…この背景を知ってからこの歌詞を聴くとグッと来るものがありませんか?
あくまで楽曲は失恋ソング・困難に立ち向かう乙女の姿ですが、どこか彼女らのアイドル人生そのものを謳ったような意志を感じずにはいられません。
TikTokでUGCが広がっているだけの段階では視聴者はこのような背景は読み取りませんが、それ以降に流入した視聴者は彼女らのことを知っていく過程でこのような背景を知りファンになっていくというのは結構あると思います。
TikTokバズからアーティストPRにつなげるための一つのセオリーとして、
TikTokで流行った見せ方と共通する部分がありつつも違う部分があると言う塩梅を作れると売上に結びつきやすいです。
SNSマーケの話ではなく、アーティストマーケの話ですが、
アーティストは多面性を理解させる事でファン化が促進されます。
現実の恋愛でも似たことがありますが、
最初のイメージと違った一面が見えるとその人を好きになってしまいます。
只今解説した本楽曲ととき宣さんの関係性がまさにそれで、
TikTokで本楽曲を聞いた人は「かわいい曲を歌う人たちなんだな」「元気をくれる人たちだなぁ」などの感想を抱くはずです。
しかし実際彼女らのパフォーマンスを見ると、泥臭い圧倒的な努力を感じさせられるわけです。
「可愛くて元気な感じの子達だと思っていたら、そんな自分を演じるために努力してたんだ…」
こんな状態になってしまえばもうファンですね。
このようにTikTokは新規接触層に対してアーティストの多面性を理解させるための装置として機能させるとちゃんとアーティスト活動に帰ってきます。
……これ以上考察するとアイドルやアーティストファン化の分析になってしまい本noteのテーマと離れすぎるので割愛しますが、TikTokUGCバズで重要なのはむしろ後ろのブランディングや控えているイベントへのPRへどう繋げるかです。
つまりアーティストにおいて一楽曲のバズはあくまでフェーズの1つ。
そこからライブ動員数や売り上げ増加のゴールまで着地させるには、歌の上手さ、刺激的な哲学など本人たち自身の魅力を持ってしてその流れを繋げることが重要だということです。
6、再現性のある要素
(1)可愛い訴求は"負"の切り口も使える
「自分の可愛いを見せたい」
「可愛いものを見たい」
この双方向の欲求は未だに健在です。
しかし可愛いの表現がどストレートすぎると特にクリエイター側にとっては抵抗が出てしまいます。
そこで第1章でも解説した通り、"負の感情"を力に変えるような切り口はクリエイター・視聴者双方からの共感を得やすいです。
具体的には「誰かに辛い思い・悔しい思いをさせられてしまった」というマイナスの感情からスタートし、それを「見返した、やり返した」などのプラスの感情で着地する。そしてその内容が視聴者・クリエイター双方の目線で共感できるものであればあるほど面白い。
同じ「可愛い」でもそういう目線で表現を考えると
面白い仕掛けを施せるかもしれません。
(2)視聴限度回数を高め、自身がイノベーターとなれ
伸びる楽曲を作った上で
同じ動画を繰り返し見てもらいやすい構図を作れれば
バズを狙うチャンスが増えます。
今回のようにグループという強みを活かすもよし、
一人でも複数動画で別のアクセントを加えられる価値を付与するもよし。
その中でやはり強いのは「イケメン・美女」
単純に憧れの対象や目の保養になるため当然ですが…生まれ持った外見は強みなので自身でUGCを回していくことがオススメです。
しかしそれ以外にも、ダンスがカッコ良いなど感情を強く揺らすものであれば視聴限度回数は高くなりやすいです。
最近ではTVアニメ『推しの子』2期OP 「ファタール」で話題になっているキタニタツヤさんが同じ手法を使っていますね。
自身が狙ってイノベーターになることができればチャンスは大幅に広がります。ぜひその視点も持ってみてはいかがでしょうか?
「最上級にかわいいの!」の分析は以上となります。
今後も新しい曲を分析しますので、
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