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【Bunny girl】Hitの理由分析レポート〜TikTok今週の1曲 [No.11 - 24/11-4]
こんにちは。山本です!
本日はTikTokの分析です。
先月の最大ヒット曲とも言える「Bunny Girl / AKASAKI」を今回は分析します。
本楽曲を取り上げる理由
今回は、「夜の始まりさ Bunny Girl」というキャッチーなフレーズで最近大バズりしている【Bunny Girl / AKASAKI】を掘り下げていきたいと思います。
@akasaki_0727 「bunny girl」という曲です#オリジナル曲 #作詞作曲 #バズれ #AKASAKI
♬ Bunny Girl - AKASAKI
AKASAKIさんの驚くべき点は、まだ音楽活動を始めて1年程度であるにも関わらず、billboard JAPAN の発表するチャートである Hot 100 に自身の楽曲がランクインしていることです。その楽曲が、今回取り上げる「Bunny Girl」です。
![](https://assets.st-note.com/img/1732008893-INHZWkCc3RQxA2uvGa5Bi1j7.png?width=1200)
周りに並んでいる楽曲をみると、錚々たる面子の中にランクインしていることがわかりますよね。しかも、AKASAKIさんはまだ現役の高校生というのも驚き。
これまでの分析は、アーティストが起こしたバズの火種をどのように大炎にしていくか、というのが主な視点でした。つまり、ある程度「楽曲の良さ」を前提とした上で、どのようにヒットを育てていくかが話題の中心でした。それに対して、「どういうコンテンツだと火種が起きるのか?そこに再現性はあるのか?」という、0→1の部分でのそもそもの疑問に切り込んでいきたいというが今回の分析の動機です。
詳しくは次の章で述べますが、【Bunny Girl / AKASAKI】は、UGCの拡大ではなく本家動画の再生でバズった楽曲です。こういった楽曲を分析することで、現代におけるユーザ視点でのいいコンテンツとはなにか?という問いに迫ることができると考えています。
バズの拡大経路
まずは、どのような経路でヒットした楽曲なのかを見ていきましょう。結論からいうと、本楽曲はTikTok発でバズを生んだ曲です。YouTubeや各種ストリーミングサービスでは2024年10月から楽曲配信がされていますが、最初にBunny GirlがTikTokに投稿されたのは 2024/07/05。他プラットフォームより大分先にTikTok動画が投稿されていたことになります。
@akasaki_0727 「bunny girl」という曲です#06 #オリジナル曲 #作詞作曲 #bunnygirl #AKASAKI
♬ オリジナル楽曲 - AKASAKI(17) - AKASAKI(18)
TikTok動画の再生数の推移を取ることができなかったので、厳密に数値で証明することはできないのですが、夏〜9月の時点でTikTok内では既に話題になっており、フル版のストリーミングリリースが切望されているような状況でした。これらのことを総合的に考えて、TikTok発でバズった曲であると判断しています。
では、TikTok内ではどのように広がったのか?これまでのノートでも述べていますが、「TikTokでバズった曲」には大きく3つのパターンがあり、このどれに当てはまるのかを正しく捉えなければなりません。
その3つとは、
①TikTok内で公式動画が多く再生された曲(例:Overdose/なとり 香水/瑛人 など)
②TikTok内で使用数が多かった曲(例:シカ色デイズ/シカ部 など)
③TikTok外でHitしていたものがTikTokに持ち込まれ更にブレイクした曲(例:美少女無罪♡パイレーツ/宝鐘マリン ヴァンパイア/DECO*27 など)
です。
冒頭でも述べましたが、本楽曲は「①TikTok内で公式動画が多く再生された曲」に該当します。これまでに解説してこなかったパターンですね。
先ほど述べたように、MVやストリーミングリリース前からTikTok内で話題になっていたことから、③の可能性はなくなります。
次に、TikTok内での本家動画の再生回数を見てみると、なんと合計で5,000万回を超える再生回数となっています。複数回に分けて投稿されてはいるのですが、コンスタントに100万回再生を叩き出しています。
(但しオーガニックの再生だけでなく広告での再生数も含まれていると思います)
再生回数上位の本家動画を3つ挙げます。
本家動画①:844万回再生
@akasaki_0727 「bunny girl」という曲です#オリジナル曲 #作詞作曲 #バズれ #AKASAKI
♬ Bunny Girl - AKASAKI
本家動画②:724万回再生
@akasaki_0727 「bunny girl」という曲です#オリジナル曲 #作詞作曲 #バズれ #AKASAKI
♬ Bunny Girl - AKASAKI
本家動画③:504万回再生
@akasaki_0727 「bunny girl」本人が歌いました。フル作ってるから待っててね#オリジナル曲 #作詞作曲 #弾き語り #バズれ #AKASAKI
♬ Bunny Girl - AKASAKI
これに対し、記事執筆時点でのUGC数は約3万弱程度となっています。TikTokへの楽曲投稿から4ヶ月経っているので、仮にUGCが要因で認知を広めたのだとすると、少し控えめな数値だと思います。
例えば、【はいよろこんで / こっちのけんと】はリリースから約3ヶ月時点で約18万件、【一目惚れ / 舟津真翔】はリリースから4ヶ月時点で約17万件のUGCが生まれていました。この状態で「Bunny Girl」自体がバズっていることを考えても、相対的に見て、バズ拡大の要因としては本家動画の影響が大きそうであると分かります。
今後UGCが拡大する可能性もなくはないのですが、現時点でのUGCの傾向的に可能性は低いと思っています。これまでにヒットしたBunny Girl関連のUGCを紐解いていくと、大きく3つの方向性に分かれていることが分かります。
① 本家動画および本家紹介動画
@senkyokubiyori 一人で過ごす夜はこの系統に限るんだよね🌚 #曲紹介 #チルい曲紹介
♬ Bunny Girl - AKASAKI
② PV風切り抜き動画
@m____wip 髪型変わりすぎ
♬ Bunny Girl - AKASAKI
③ その他
@ritsukendo 【Eじゃないんだって言われがち】ISFPからのリクエスト多かった!#isfp #mbti #isfpあるある
♬ Bunny Girl - AKASAKI
Bunny Girlの場合、「① 本家動画および本家紹介動画」が圧倒的に多く、ヒットしたUGCの約60%を本家 or 本家紹介動画が占めています。UGCでヒットした楽曲と比べてみましょう。例えば、【一目惚れ / 舟津真翔】ではヒットUGCの中での本家率は5%以下となっていて、上位動画の大半が一般ユーザによって投稿されています。
「② PV風切り抜き動画」の方向性は、約20%の割合を占めていて、ヒットする可能性もあったと思います。曲の持つ雰囲気によって、クリエイターの可愛さの「儚い側面」がグッと引き出されていますよね。しかし、大きく広がるまでには至りませんでした。こういった映像タイプはどちらかというとIGライクな方向性でTikTokっぽくはないことや、カットを多用する動画編集のハードルの高さもひとつの要因だと思います。
2024/08/28に最初にこの方針の動画が投稿されて以降、最近はこの系統の動画はあまり出ていません。
「③ その他」の方向性も約20%くらいを占めていますが、動画と楽曲とのシナジーが生まれているUGCは見つからず、上に挙げたような単にBGMとして使われているものが散見されました。
UGCでヒットする楽曲は、「② PV風切り抜き動画」のようなヒットの可能性がある方向性が何個も何個も提案されて、その中から真に良い方向性だけが生き延びて多様なUGCが生まれていくのが傾向です。「Bunny Girl」はそことは合致していないこともあり、純粋に本家動画が再生されて認知を広めた曲であると判断しています。そのため、記事では「なぜこんなにも本家動画が再生されたのか」を考えていくことになります。
分析の方針
これまでの記事では、大量のUGCからある程度傾向やマクロな流れを捉え、UGCが拡大の理由を、視聴者心理、クリエイター心理から紐解いてきました。一方、「Bunny Girl」は先述のように純粋に本家動画が再生されて認知を広めた曲でしたね。よって、基本的には本家動画が分析対象になります。
今回は、本家動画のさまざまな要素のうち、視聴者の感情にポジティブに作用したであろうものを列挙する、という方針で分析を進めようと思います。
ヒットに繋がった要素
動画とサウンドにシナジーがあった
そもそも本家がコンテンツとして優れていたよね、という話です。一番再生数の多い本家動画を再掲します。
@akasaki_0727 「bunny girl」という曲です#オリジナル曲 #作詞作曲 #バズれ #AKASAKI
♬ Bunny Girl - AKASAKI
多くの人が「なんかかっこいい」といった感情を抱いたのではないでしょうか。私も「かっこいい」と思います。これは動画とサウンドのシナジー効果によるものだと考えています。詳細を説明していきます。
既聴感によるフック
この曲を聴いて、「新しいジャンルの曲だ」「奇抜な曲だ」と感じる人は少ないと思います。いい意味で耳馴染みがあるんですよね。まずは、どんな要素がそう感じさせるのか見ていきましょう。
①声質
AKASAKIさん楽曲の既聴感を語る上で外せないのが声質です。本家動画についている視聴者コメントを一部見てみましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1732008892-nPWlhSmoA0sqzjReMtvGUbyk.png?width=1200)
上で一部抜粋した通り、かなり声に関するコメントが多いんですよね。中でもポイントは、back numberのボーカル清水さんに似ていると感じている人が多いことです。back number の新曲だと勘違いしてしまった人すらいます。
中高生の好きなミュージシャンランキングを見てみても back number はトップ10にランクインしていることが分かります。普段若者が聞いている音楽、ということですね。
これらのことから、まず声質要因で視聴者にとって既聴感があった、と言えそうです。
ギターサウンド
ハイポジションよりでカッティングを織り交ぜつつ刻むギターも既聴感に寄与する部分があったように思います。最近のヒット曲で、かなり Bunny Girl に近いギターバッキングの曲があります。
【愛とU / Mega Shinnnosuke】のAメロ開始からずっと後ろで鳴っているギターですね。この曲もかなりバズったので、TikTokユーザーはほぼ聴いたことあるのではないでしょうか。
サウンドメイキングも、リズムの刻み方も、かなりこの曲に似ていますよね。これによって、似た雰囲気になっていることも、視聴者に既聴感を生じさせていそうです。
ここまで、声質とギターサウンドの面で視聴者の耳馴染みが良かったことを述べてきましたが、これ単体では「Back numberの曲かな?」と言った程度の弱いフックにしかなっておらず、視聴者感情の揺さぶりにまでは繋がっていません。重要なのは、この「既聴感」をどう感情の揺れに繋げるかですが、それについての詳細は後述しますので、ひとまずここでは「声質とギターサウンドの面で既存人気アーティストとの類似点があった。それによって、冒頭のフック効果があった」とだけ認識しておきましょう。
映像とサウンドとのギャップによるポジティブな裏切りがあった
この動画が流れてきた時の視聴者感情も整理してみましょう。動画が流れてきて、一番最初に目に止まるのは「画」ですよね。いきなり動画説明文を読み始める人は少ないと思います。まずは画から見ていきましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1732008893-IuXOdJYyfpZvm7QqFHxK214T.png?width=1200)
本家動画冒頭のスクショです。これをパッと見て「あぁ、いまから高校生が綺麗な声でオリジナル曲を披露するんだな」を思えましたか?おそらく、そうは思わない人が多数派なんじゃないかと思います。どちらかといえば、「ん?なんの動画?」という印象ではないでしょうか。実際、この動画で最も「いいね」がついたコメントはこれです。
![](https://assets.st-note.com/img/1732008892-qolKNa6fwd9enc1W20zSYXvI.png?width=1200)
開始1秒以内の印象は、
「画質悪い。よく見えない。」
「垢抜けてない人がもぞもぞ出てきたなぁ。」
「お笑い系?」
といったところでしょうか。仮にこれだけだと一瞬でスワイプされる可能性が高くスキが多いと言えます。しかし、先ほど「既聴感によるフック」で述べた通り、サウンドは耳馴染みのよいものになっているわけです。ギターサウンドはもちろん、なによりも声質がback number という有名ポップスアーティストに似ているので、プロっぽく聞こえるわけです。単にサウンドがそれっぽいだけの場合に比べて、映像とのギャップがあることによって視聴者の「感動」は増大します。
分かりやすいように、同じような効果がある動画を1個ピックアップします。この動画、なんと230万回再生されています。
Bunny Girl 本家動画においても、この映像とサウンドとのギャップが視聴者感情を動かすことに対してポジティブに作用した側面はあると考えています。
ちなみに、Bunny Girlの投稿から本記事執筆までの約4ヶ月間で、AKASAKIさんはものすごい勢いで垢抜けていっており、最初の投稿の頃から大分見た目が変化しています。今後視聴者に対してどのような惹きを作っていくのか、ウォッチしていきたいですね。
@aya.aaronkunfan 流行りのやつ👯♀️ #AKASAKI #BunnyGirl #シンガーソングライター #路上ライブ @AKASAKI(18)
♬ Bunny Girl - AKASAKI
音楽的観点からの補足
単に既存アーティストに寄った声質・サウンドというだけでなく、楽曲自体がアダルトな空気感をもっていることも上述のギャップ効果を生むことに寄与していたと考えています。
本家動画を先ほどいくつか引用しましたが、どれも楽曲冒頭の「夜の始まりさ Bunny Girl〜」の部分を歌っています。このメロディラインは、終止感のある場所は全て「ラ」への着地となっており、マイナースケールを強く感じさせるものとなっています。例えば、「夜の始まりさ」のメロディラインは「ミミファミレドシラ」です(全て移動ドで記述しています)。そして、それを支えるコード進行は4563進行(王道進行と呼ばれることも多い)という、メロディラインによってメジャーキーっぽくもマイナーキーっぽくもなるやや切ない進行です。これを少しマイナーの側に倒すことによって、やや物悲しい、大人っぽい空気感に繋がっています。シンデレラボーイの分析記事で記載したような、メロディラインにコードに対するテンション音を使ったりしてみても、似たような効果に繋がるかもしれませんね。
ここまで述べてきた内容を一度まとめます。
声質・ギターサウンドが既存ヒット曲に似ており、視聴者の耳馴染みの良いものになっていた(プロっぽく聞こえる要素が入っていた)
映像とサウンドとのギャップを作って視聴者をポジティブに裏切り、「すごい」という視聴者感情を強めていた
アカウント属性が若者に対して魅力的に映った
AKASAKIさんは現時点で18歳高校3年生です。
![](https://assets.st-note.com/img/1732008892-rd2M7CgDLZ60flKOo91FaWJv.png?width=1200)
メインの視聴者であると思われるティーンエイジャーと同年代な訳ですが、この属性も視聴者感情を動かすことに寄与していたと考えています。
そもそも、サラリーマンは孤独のグルメに共感するし、子持ちは育児タレントに共感する訳で、同じような属性を持った人に共感しやすいのはティーンに限った話ではないです。しかし、ティーンエイジャーが他の世代と一線を画す点は「未来が分からない」という点です。なので、同年代の活躍に対して、人一倍憧れや羨望の気持ちが生じやすい年代と言えます。
似たような事例をテレビ番組から紹介したいと思います。例えば、AbemaTVでは、様々な恋愛リアリティショーが番組化されています。例えば、「オオカミ」シリーズや「ドラ恋」シリーズ、「シャッフルアイランド」シリーズなどが挙げられますね。その中でティーン市場で圧倒的に勝っている番組があります。
実際に、高校生が選ぶ「今一番好きなテレビ番組」ランキングTOP10を見てみましょう。
第3位にランクインしている「今日、好きになりました。」シリーズですね。これが恋愛リアリティショーの中で圧倒的な人気を誇っています。
有料ですが、下記記事を読むと、視聴者インサイトに基づいて番組のコンセプトをしっかり定めているからこそ、この人気を維持できていることが分かります。
詳細は記事を読んでいただくとして、視聴者インサイトとして「同じ世代の人が真剣に恋をしていることに憧れる」「隣のクラスの子の恋愛を見ているよう」と言った感情を呼び起こしていることは注目ポイントだと考えています。
近年だと、tuki. さんの「晩餐歌」のヒットにおいても同様のことが起きていたのではないかと思います。
ここまで述べてきたように、「高校生」というティーンの感情を動かせる(≒ティーンからの支持を得られる)アカウント属性を持っていたことも、バズをさらに一段盛り上げる要因となっていたように思います。
これまでのアカウント運用でバズる土壌を作ることができていた
本楽曲は、それ単体で十分魅力的ではありますが、さすがにフォロワー0の状態からいきなりbillboardランクインレベルのヒットを生むのは難しかったのではないかと思います。その意味で、Bunny Girlが出た時点である程度TikTokフォロワーが増やせていたことも、ヒットの要因として大きいのではないでしょうか。
AKASAKIさんは初期の頃に結構試行錯誤をされていて、企画っぽいこともやっています。例えば、AKASAKIさんのアカウントでの一番最初のバズり動画はこれです。
再生回数 48万回
従姉妹さんの可愛らしさで冒頭の惹きを作って、中盤からはAKASAKIさんの歌声がギャップとなって視聴維持に繋げる、といった構成になっていますが、AKASAKIさんが普通にアイドルを歌うよりも企画として優れていることが見て取れます。
また、以下のような「高校生感」の感じられる動画も投稿しています。
再生回数 140万回
@akasaki_0727 三者懇談会で萎えたので栄で歌ってきました#弾きこもり #アカペラ #栄 #蚊 #うざい #高校生
♬ オリジナル楽曲 - AKASAKI(17) - AKASAKI(18)
「三者懇談会で萎えたので栄で歌ってきました」という説明文の動画ですが、ティーン達から「そういえば君高校生じゃん!」と親近感を寄せられています。先ほど説明したように、この親近感と楽曲性質とがギャップとなってエンゲージメント向上に繋がる側面もあるので、こちらも非常に優れた企画だと思います。
このように、Bunny Girl以前から、楽曲投稿+フォロワーを増やす工夫を重ねてこられているので、「オリジナル曲作ってみた」界隈では一歩抜きん出た存在になっていました。正確な数字は取れませんが、おそらくBunny Girl以前から10-20万程度のフォロワーは居たのだろうと推測しています。そのファン基盤があったうえで、若者が求める要素を多く持ったBunny Girlという楽曲の投下に繋がったので、これだけのバズに繋げることができたのだと思います。
また、Bunny Girlのヒットの理由は、小手先のSNSテクニックではなく、「視聴者にとって良いコンテンツである要素」を本質的に満たしていたことです。これってある意味分かりにくい側面もあって、全くフォロワーがいない状態だと発掘されない可能性もあったと思っています。そういう意味では、分かりやすく動画の面白さでフォロワーを増やした後に、Bunny Girl という良いものを投入したことも、アカウントの成長段階に対して必然性のあるリリースの順番だなと感じました。そのタイミングも含めて、非常に優秀なSNS運用だったと思います。
これの答え合わせは、向こう数ヶ月でできると思っています。以下動画はAKASAKIさんが初めて投稿したオリジナル曲ですが、再生数は約2万に留まっています。
で、現在フォロワーが十分に増えた状態で、もう一度これを発表したらどうなるか?実は、記事執筆時点での次のリリース曲はこの曲になるらしいです。
@akasaki_0727 「今夜は君と」11/4にリリースします!#オリジナル曲 #作詞作曲 #バズれ #今夜は君と #AKASAKI
♬ 今夜は君と - AKASAKI(18)
切り取り箇所は違いますが、現時点で80万回再生。これが Bunny Girl と同規模のヒットに繋がっていくのか、楽しみですね。
説明が完全にはつかない要素
いろいろとBunny Girlのヒットに繋がった要素をあげてきましたが、これまでのTikTok UGC分析と違って、他のクリエイターとの確固たる違いを説明し切ることはできていないと思います。
例えば、この辺りのアカウントも、若くして良いオリジナル曲を作っているとは思うのですが、AKASAKIさんとの決定的な違いはなんなのか?
例えば上記例で言えば、AKASAKIさんと共通する良かった点として、
前提としてクオリティの「聴ける」曲は作ることができている
ティーンが好むアカウント属性を持っている
等が挙げられますし、逆にAKASAKIさんと異なる点として、
既存有名アーティストとの類似点がなく、「この曲をどう聞けば良いのか?」を視聴者が感じ見出さなければならない
「ギャップで感情の動きを増大させる効果」がない
などを挙げることはできます。
ただ、それだけでは数多いる作曲家の中でも、「なぜAKASAKIさんだったのか?」という問いに対する説明としては弱い気がしています。
ここで【PRの上手さ】という音楽外の要因が必要になって来ます。
文脈とプロモーション
このように幾つかHitの要件を満たしているけれど、一方はHitしていて一方はHitしていないというケースは長年この業界で働かれている方ほど何度も見かけて来た光景かと思います。
これに対する僕なりのアンサーを書かせていただきます。1つの考え方だと思い聞き流しください。
まず順序として、時代が求めるクオリティの高い音楽が作れている、これが前提となって来ます。
これを満たしている人が今回で言うとAKASAKIさんとゴゴゴさんら、という話です。
そしてそれを求めるユーザーに適切に届ける、これがプロモーションの仕事です。
これが出来ていたのがAKASAKIさんで、現状彼ほどはうまくいっていないのがゴゴゴさんら、という事になります。
AKASAKIさんは火種がついたタイミングで本家動画に広告を回していました。推測になりますが合計で50万円以上の金額を投下していると考えています。このタイミングと投下のさせ方がとても上手でした。
また「バトルドーム」のミームがUGC的に発生したのものとてもよかった。
このミームパターンのみでもUGCが1000以上発生しています。
こればかりは運ですね。
このような形で【0→1】が作れていたアーティストをプロモーションするのがとても上手だった。端的にいうとこれが理由です。
プロモーションやSNSマーケティングの技術では時代に求められる曲を作る事はできませんが、求められる兆しのあるものをスケールさせることはできます。
前提に文化の文脈があります。
時代の情勢とか、技術の進歩とか、生活環境の変遷とかに左右される形で様々な文化が隆盛しては衰退し…と混沌とする中で、人は生きて文脈を持つ。
そして人一人一人がもつ背景の類似点同士が交わって、交流を始め『界隈』や『ファンダム』が形成される。
それを読み解き、当てにいく曲を作る。これがSNSマーケティングでいう「マーケットイン」の発想です。ここまではプロデューサーやクリエイター/アーティスト本人が主に担当する分野。
ここを理解した上で拡大させるプロモーションが打てるかがプロモーターの力の見せ所となります。
楽曲のバズとはこのような要素が複合的に交わって起きるものだと思います。
アーティストを育てるときの0→1フェーズの話に一旦限って話すと、
あまりにも才能のある音楽や、あまりにも時代にはまっている音楽においてプロモーションはあまり大きな役割を果たしません。自然に広がるからです。
しかしはまっていつつも少しずれている、勢いが足りないもの、競合が多いものはプロモーションの質やプロモーションの爆発が起きるかどうかの運によって結果は左右され易いです。
AKASAKIさんはプロモーターの技術と運の勝者といえます。これが競合との違いなのではないでしょうか。
バズった結果得られたものと今後のさらなる認知拡大
BuzzTracker選出
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001075.000030435.htmlフォロワー
TikTokフォロワー数30万人
YouTubeチャンネル登録者数18万人
TikTokに関しては差分を取りにくいのですが、YouTubeに関してはBunny Girl 投稿時点では5,000人以下のチャンネル登録者数でした。ゼロからのスタートと言えるので相当大きい増加ではないでしょうか。
かなりリアルタイムで記事を書いているので、現時点では「アーティストとしてやっていく地盤を作ることができた」という具合の成果になると思いますが、ほぼゼロからのスタートであることを考慮するとかなり大きな成果と言えるのではないかと思います。
来年、日本の人気アーティストとして定着していくためには、「より広い認知」がポイントになってきそうですね。良い楽曲作りの継続は前提とした上で、
back numberさんを始めとした大手アーティストとのコラボを複数実現させ、アカウントへの流入を増やす。
「シカ色デイズ」や「はいよろこんで」のようにUGCが広まる楽曲と動画投稿企画を練る。
などできれば、「より広い認知」に繋がり、事務所が楽曲のタイアップに費用をかけることにも繋がるのではないでしょうか。それで徐々にアニメタイアップなど獲得できていけば、アーティストとして定常的な地位も築かれていきそうです。
また、単にいい曲というだけだと埋もれてしまう今日において、Bunny Girlにおいてはギャップやアカウント属性など、いろいろなことが作用して大きなヒットにつながりました。今後はいちアーティストという文脈でAKASAKIさんの楽曲が聞かれる場面も増えてくると思います。そんな中、今後流入する新規ファンに対しては、AKASAKIさんのなにで「惹き」を作っていくのか?音楽の独自性なのか、アーティストとしてのキャラクターなのか。そこに対するAKASAKIさんのアンサーも楽しみですね。
渋谷トレンドリサーチによる高校生を対象とした調査では、「次に来ると思うトレンド」にランクインしています。私もAKASAKIさんのさらなる飛躍が楽しみです!
再現性のある要素
既存楽曲との類似性とオリジナリティとのバランス
人気アーティストとの声質や、流行りのジャンルとのサウンドのマッチなど、初見の人に対して耳馴染みが良い要素があった方が、POPSとして広く理解してもらいやすい傾向にあります。既存楽曲とオリジナル楽曲との位置付けをはっきりさせて、何が同じで、何がオリジナリティなのか。楽曲を世に出す時にはっきり言語化させておくと、バズったとしてもバズらなかったとしても次の改善に繋げることができそうです。ギャップが魅力を増大させる
自分が提供したいものの良さを際立たせるための一つのテクニックとして「ギャップ」を使うことは効果的に働きそうです。AKASAKIさんの動画の場合は、映像とサウンドとのギャップでサウンドを引き立たせる効果がありました。これは前半と後半の映像のギャップでもいいですし、サウンド内でギャップを作るのでも良いと思いますが、「一番いいところを惹き立たせる」ために何ができるか?という意識はできそうですね。若者の嗜好を踏まえたアカウント設計
音楽にしろファッションにしろ、トレンドを作り出すのはいつの時代もティーンです。よって、楽曲をヒットさせたければ、ティーンの嗜好に合うコンテンツでなければなりません。AKASAKIさんは素の状態で若者の嗜好にあったアカウント属性を持っていましたが、全員が全員そうではないと思います。例えば、AKASAKIさんが30歳だったら同じようにバズることは難しかったように思います。例えば、ティーンとは年齢感が合わなくなってきているのだとしたら、年齢と顔を隠して、隠していることがむしろ面白さに繋がるようなアカウント設計をするなど、トレンドの主役にどうミートさせていくかは戦略を練る必要があるように思います
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今回の執筆助手は「cosmeyさん」でした。
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