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【TikTok音楽攻略の教科書】バズ曲・十四分類大全 - ヒット曲を"科学"する

※引用動画数があまりにも多過ぎてスマホからだと正しく読み込めません。
その場合PCで開いて頂けますと幸いです。申し訳ございません。

バズるかどうかは『運』ーーその考えに終止符を打ちます。

本noteは『TikTok音楽攻略の教科書』を目指して執筆されました。

そのためにTikTok Hit曲全250曲以上を『何故ヒットしたのか?』14のパターンに分類し徹底的に分析。それらを基に2025年以降TikTokヒット曲を作るにはどうすべきか具体的な提案しております。
具体的かつ即実践の音楽制作で使えるプロユースの教材です。


突然ですが皆さんは「曲がバズるかどうかは運だ!」と思いますか?
僕はこの意見に、一つの回答を持っています。むしろ本noteはそれをつらつら語るものだとも言えます。


事実として全てのバズった曲のプロモーションには大なり小なり運要素が確実にあります。これに例外はないと思います。

しかし例えば、
PPAPをジャスティンビーバーが取り上げたのは運か?
こっちのけんとや瑛人がTikTokでバズったのは運か?
Vaundyや藤井風の動画がYouTubeで再生数を取ったのは運か?

……僕はこのようなSNSに於ける脅威的な結果を包括的にただ『運』と、濁ったもやの掛かったような単語で一緒くたにするのもまた違うと思うのです。それはただの勉強不足です。だって彼らの曲にはその数字がつく確固たる理由がある部分と、曖昧で偶然だった部分の両方があるのですから。


そう考えると『運』とはもっと輪郭がはっきりとしたモノじゃないですか?


バズる曲を再現性高く何曲も作るにはどうすればいいか?
研究を詰めれば詰めるほど"どうしようもない運要素"と"ロジック"の境界線がどんどんとくっきりしていく感覚を味わいました。

だからある意味本noteはTikTok楽曲バズにおける『運』とは何を指すのかを徹底的に言語化したものとも言えると思うのです。

これ一つ読むだけで、

  1. 2024年までにTikTokでどんな曲が流行ったのか

  2. それが何故流行ったのか

  3. 2025年以降はどんな曲が流行るのか

この3つを体系的に言語化できるようになる事を目指しました。
総文字70,000字以上、18~24年にバズった全237曲を分析。
僕の今の全知識を言語化した魂の玉稿です。

読み終わった後「バズるかどうかは運だよね」なんて絶対に言わせません。
そしてTikTokバズ曲のなんたるかを、音楽面、マーケティング面、Mixの話なども含めて"全て徹底して言語化"できるようになっています。


…ちなみに「価格があまりにも安すぎる」と心配する方もいるかもしれませんが、買った後別の商品を売られるとか、公式ラインに登録させて云々……みたいなことはありません。
なので普通に赤字です。

しかしこのnoteの読後「山本のチームはSNS音楽攻略に関して間違いなく日本トップクラスだ!」と思ってくれると確信しています。
そしてその信頼があればいつかタイミングがあった時、読者から仕事の依頼が来るだろうとも思っています。だからnote単品の利益は赤でも多くの人に手に取って貰う方がいいと思い一般的な書籍と同じくらいの価格設定にしました。


今回はいつもnoteを執筆している弊社チームメンバーたち全員一丸となって全身全霊の執筆をしました。我々の本気と、覚悟と、ちょっぴりの遊び心を体感していただければ幸いです!

株式会社ハイトリンク 代表 山本慶太朗


【序章】TikTokバズ曲の全体像


0-1、TikTokでヒットする曲とは何か?

TikTokでヒットする全ての曲に"ある共通する事"があります。
それは、

その曲が使われた動画を視聴者が「面白い!」と思っている

です。

まず前提としてTikTokでHitした曲の殆どは所謂『UGC(User Generated Content)』と呼ばれる他のTikTokクリエイターたちによって楽曲を使った動画が多数投稿され、その動画がバズっています。

@kaneko_miyu

このエフェクト誰でも童顔になれるので絶対盛れると思う!!もう誰状態w

♬ オリジナル楽曲 - ローカルカンピオーネ🗾👑 - ローカルカンピオーネ🗾👑

例えばこれはダンスのUGCです。

言い換えればTikTok楽曲マーケティングに於いて主役なのは曲ではなくUGCーーーーもっと言えばUGCを見る視聴者たちなのです。
誤解を恐れずに言えばTikTokで流行る曲とはかっこいい曲やいいメロディの曲ではなく『面白い動画で使いやすい曲』です。
この考え方が本Note全体の主軸となるのでよく覚えておいて下さい。

ですから『TikTokでバズっている曲』は実は少なくて、その殆どが『TikTokでバズっている現象で使われている曲』なのです。
TikTokバズの中心は『文化の流行』であり、音楽はそれを囃し立てるBGMに過ぎません。


ではどんな動画を視聴者は面白いと思うのでしょうか?
分析しやすくする為大きく3つに分類致しました。


  1. 視聴者需要動画
    →視聴者が普段から面白いと思っている動画

  2. インフルエンサー価値動画
    →動画を見て面白いと思った動画

  3. アルゴハック動画
    →TikTokアルゴリズムに面白いと思わされた動画


1の『視聴者が普段から面白いと思っている動画』とは
『その人が好きでいつもみているジャンルの動画』や『最近マイブームになっている動画』など、その動画を面白いと視聴者が既に知っているものです。

2の『動画を見て面白いと思った動画』とは
インフルエンサーたちが工夫し、自分に求められている価値をしっかり訴求できてた動画です。
美人なら可愛い動画、お笑い芸人なら面白い動画などが該当します。

3の『TikTokアルゴリズムに面白いと思わされた動画』とは
視聴者自身は無意識かもしれませんが「面白い!」と思ってしまうことを分かっているTikTokのアルゴリズムが優遇し露出を増やしたいと思っている動画です。
例えば冒頭に引っかかりがあってついつい最後まで見てしまう動画や、おもわずいいねを押してしまう仕掛け作りができている動画などです。


更に、これら3つの動画にどのような音楽が使われているかを分析しました。すると楽曲を全14のパターンに分類する事ができました。
これが本Noteのタイトルの由来です。

過去TikTokでHitした曲は全てこの14パターンのどれかに当てはまるのです。


視聴者需要動画
①陽キャRap/EDM
②病み曲
③恋曲
④エンタメ/アニメ/スポーツ映え曲
⑤季節曲
⑥流行曲
⑦特定界隈流行曲

2、インフルエンサー価値動画
⑧可愛いアイドル曲
⑨遊び心訴求曲
⑩可愛い訴求曲
⑪エモい訴求曲

3、アルゴハック動画
⑫ギミックが優れている曲
⑬訴求できる要素を創り出している曲
⑭本人アカウントが伸びている曲


今回分析をするのはこの237曲です。
これらを全て14のいずれかのパターンに分類していきます。

※なお過去のヒット曲は2018年から2024年末までで1万本以上UGCが作られた楽曲を最低基準に満遍なくセレクトしましたが採用基準は独自のものです。「この曲が入っていないじゃないか!」というものもあるかと思いますが、何卒ご了承ください。


本noteは次のような構成で進行します。

14パターンそれぞれ概要を説明
↓↓
視聴者インサイトを言語化
↓↓
インフルエンサーの使う理由を言語化
↓↓
そのジャンルの主なUGC拡大経路を解説
↓↓
(あれば)18~24年での変化を解説
↓↓
2025年以降そのジャンルでバズるにはどうするべきか仮説を提唱

🔥これを14パターン繰り返します
🔥


0-2、TikTok楽曲バズのセンターピン

TikTokでバズった曲のバズ理由をケーススタディする際、事実を正しく認識するために必要なセンターピンは3つです。


  1. UGC拡大経路

  2. インフルエンサーインサイト

  3. 視聴者の界隈インサイト


1.UGC拡大

0-1で解説の通りTikTokでバズった曲は十中八九他の投稿者が使った動画がバズっています。

つまり、


初めに誰かが使う(イノベーター)
↓↓
その投稿がバズる
↓↓
それを見て他の誰かが使いたくなる(アーリーアダプター)
↓↓
その曲を使ってバズる文化が出来始める
↓↓
著名なTikToker達が投稿に参加して文化が隆盛する
(アーリーマジョリティ)


大半の曲がこの流れを辿りバズります。

これがそれぞれ「誰だったのか?」「何の動画だったのか?」正しく認識する事がTikTokの文化を正しく理解することにつながります。


これをマーケティングで言う『イノベーター理論』を用いて弊社では普段分析をしております。
これについて詳しくは過去レポートでより具体的な分析の流れをまとめておりますのでご覧ください。

また日々のレポートでは、1曲1曲詳細にどのような流れでヒットしたのか分析しています。
今回のレポートでは調べる曲数が膨大な為、1曲1曲の拡大経路を詳細に語ることはしません(いつも1曲で約1万字程度書いているので…)


2.3.インフルエンサーと視聴者界隈のインサイト

インサイトとはマーケティング用語で『本音・行動意思の理由』みたいな意味です。

要は
「なぜインフルエンサーがその曲で投稿したくなったのか?」
「その動画をなぜその視聴者界隈は試聴するのか?」

"本人より言語化しろ"と言うことです。


普段からインサイトを掘っている僕ら視点で正直なことを言ってしまうと、有名なTikTokerであっても特に二十二歳以下の女性などであれば投稿する事に特別理由や戦略がないことも多いです。
そして選曲理由は「私がもっと可愛く見えるから(承認欲求の肥大化)」という場合はしばしば目にするケースです。

…そうかと思えば僕らの想像も及ばないほど戦略的に投稿している人気TikTokerもいて、また若い女性は「可愛く見えるから」でしたけど投稿ジャンルが変われば理由もガラリと変わってきます。

この感覚のすり合わせをせず、大人の感覚やマーケティングの論理だけを当てはめようとしても絶対にうまくいきません。


これはリスナーの感覚も同じです。
リスナーも楽曲ではなくまず動画を見ます。
だけど動画を見た後でフル尺も聞かれます。

でも「何故動画を最後まで見たの?」「何故動画を見た後サブスクに飛んだの?」と本人に聞いても「えっなんか楽しい動画だったし曲も好みだったから…」としか返ってこない訳です。

数値を根拠に正しく視聴者感覚を認識していく事が重要なのです。

今回は全ての曲や現象をこの3つの視点で解説しております。


0-3、楽曲バズ確率の方程式

バズ曲の運要素を紐解く『下ごしらえ』として、
1曲1曲のバズの現象を3つに大きく大別することから始めます。


  1. 楽曲の要素

  2. 施策の要素

  3. その他の要素


【楽曲の要素】とはリリース楽曲に含まれる音楽的な要素のことです。
『メロディ』『歌詞』『構成』『編曲』『声質』『音質』『テンポ』
などです。

【施策の要素】とはリリース楽曲のPR施策の内容です。
『ダンスをはじめとする動画投稿フォーマットの選定』『投稿するアカウントの影響力』『投稿する動画の面白さ』『コラボ先の選定』『キャンペーンの内容』『アカウントコンセプトと楽曲の合致度合い』『TikTokのトレンドを意識したコンセプトメイキング』『TikTok外PRのタイミングや規模感』『予算』
などです。

【その他の要素】とは上記に該当しないがバズに関与する要素です。
『同時期に同様のUGCが生まれる別ヒット曲がリリースされた』『TikTokトレンドが試作考案時期とリリース時期で変化した』『実力以上に面白い動画が作れて伸びた』『関係値のないインフルエンサーがたまたまとりあげてくれた』
などです。


楽曲の要素と施策の要素は全て言語化し作り込むことができます。
しかしその他の要素は完全に運となります。

これがある意味冒頭「運と運じゃないの境界線」のアンサーとなります。


ただし『運という日本語』は難しいもので例えば
「TikTokで使い易いメロディを書いたつもりはなかったけどたまたまTikTokでウケてしまった」
「TikTokでそんなバズるとは思ってなかったけど有名なTikTokerがダンス動画を勝手に作り拡散してくれた」

ということもまた「運」と表現したりもしますよね。現実問題過去のバズ曲はそういうたまたまがないものの方が少ないでしょう。

しかしそれが「運か運じゃないか」は外部からでは真偽はわかりません。
もしかしたら仕込みかもしれないし、本当に偶然かもしれない。

なのでこのnoteでは一旦【楽曲の要素】と【施策の要素】に関して我々が認識できる範囲では全て『狙ってやっていた』と仮定し考えることとします。


今回のnote全てに共通する結論を今から言います。


【楽曲の要素】×【試作の要素】+【その他の要素】
=バズ確率(%)

計算方法
楽曲の要素【80点満点】
施策の要素【1点満点】
その他の要素【-20点〜+20点】
 =100点満点


として考えます。
100点の曲はTikTokでUGCが増える可能性が100%であるということです。
(つまり現実的に出る数値感は10%~90%)


この計算式が成り立つ理由を簡単に解説します。

まず当然ですが最も配点が大きいのは【楽曲の要素】のクオリティです。
おさらいですがここで言う"クオリティ"とは、楽曲の音楽的な質ではなく『面白い動画で使いやすい曲』に迎合できているかどうかです。

次いで楽曲のクオリティを活かすか殺すかを左右するのが【施策の要素】です。
極端な例を出すと例えば『女の子がダンスで使うと映える可愛いアイドル曲』を作ったのに、男性インフルエンサーに案件委託をしまくる施策を打った場合楽曲の要素の点数が高くても施策がそれを減点させバズ確率が落ちます。
ここの相性の良さを最大1点として掛け算しています。

そこに運の要素である【その他の要素】が減点したり加点したりしてくるという構造です。


本noteではこれに基づいた点数を「楽曲総合力」と項目だて、先に紹介した200以上のTikTokバズ曲にすべて必然性があったかなかったのスコアを便宜的に10点満点でつけております。
(各曲の詳しい計算式は煩雑になるので省略しました)


前置きが長くなり失礼しました。
それでは実際のヒット曲を見ていきましょう。



【視聴者需要動画】

「視聴者需要動画」とはTikTokに多い視聴者属性が求めている動画です。TikTokの主な視聴者層とは『10代の女性』と『20~30代の男性』を中心に老若男女幅広い層が視聴しています。またTikTokユーザーは他のSNSと比べ起動する理由に『暇つぶし』を多く挙げる傾向にあります。
詳しくはこちらのレポートを拝見ください。

『暇つぶし』ーーーーその解像度をもっと上げると『ぼーっと眺めているだけで短時間で多くの感情が芽生えること』です。
『本能を刺激する体験』とも言い換えられます。

僕がこう考えるのにはいくつか根拠があります。
まずショートフィードとはベルトコンベアのようなもので、ユーザーは自分で見る動画を選択していません。
例えば映画を見る時は、映画館に足を運び、自分のみたい作品を選び、チケット代を払っています。ショートフィードはそれの正反対で、任意の場所で、AIに勧められたものを、無料で見ているのです。

よくショート動画のライバルに上がるのが『YouTubeの長尺動画』ですが、こちらは無料で好きな場所で……までは当てはまりますが『好きな作品を選んで』は映画寄りです。サムネイルをタップしないと動画が再生されないからです。
『ショートフィード系アプリ起動時の脳みその中』は他の映像媒体やアプリと比較しても非常に受動的と言えます。


またTikTok自体がそれを掲げているのも根拠の一つです。
現在ショートフィードを持つ強豪アプリ3社を挙げるなら『Instagramのリール』『YouTube Shorts』そして『TikTok』でしょう。
これらは似ているようで同じ人でもおすすめされる動画が違います。

どのように違うのか答えは誰もわかりませんが、仮説を立てる時各社が掲げている『理念』が役に立つでしょう。

例えばInstagramは『大切な人や大好きなことと、あなたを近づける』を理念としています。

YouTubeは『すべての人に発言力を与え、それを世界に伝えること』

そしてTikTokは『人々の創造性を引き出し、喜びを提供すること』

これらの前提を理解した上で各SNSを毎日研究した肌感として、僕は各社のアルゴリズムの動きをこう噛み砕いて解釈しています。


インスタグラムは『仲間や趣味を大切に思う時間を助長させる動き』
YouTubeは『面白いコンテンツに正しくも正当な脚光が浴びる動き』
そしてTikTokは『世の中に新しい面白さを提供させる動き』


勿論あくまでこれは我々が普段からアルゴリズムを観察していて感じた感想の言語化に過ぎないので、間違っている可能性は大いにありますが攻略する上の認識としてであればそこまで乖離していないと思います。

前提としてショートフィードアプリの目的は『本能を刺激し、アプリに長時間滞在させる構造を作る』で共通していつつも、各社その結論に至るまでのプロセスに違いが出ているのです。

そしてTikTokの動きは競合他社と比べて『トレンドを創造する動き』に重点を置いているのです。(これが楽曲バズがTikTokから生まれることが圧倒的に多い理由の一つでもあります)
つまりTikTokはショートフィード系アプリの中でも特に感情的な動きが乱高下することを好むと言うことです。


前置きが長くなりましたが、このような場所に集まってくる10~20代女性と30代男性がマジョリティでありつつ老若男女が集う場所では『どのような感情にさせてくれる動画の"BGM"』が人気があるでしょうか?

その答えが

--
①陽キャRap/EDM
②病み曲
③恋曲
④エンタメ/アニメ/スポーツ映え曲
⑤季節曲
⑥流行曲
⑦特定界隈流行曲
--

この7つなわけです。

『陽キャRap/EDM』はいわゆるEDMと印象的なラップが中心となるレゲエなどです。トレンドを生み出そう!というバイタリティを持っている人たちが集まりがちな場所ーーーー俗っぽい言い方をするなら"陰キャ"より"陽キャ"が集まる場所ーーーーなので、人気です。

『病み曲』は病んでる歌詞のダウナーな歌です。今SNSを見る若い子全般のトレンドで、つまりSNSによって簡単に自分と他者を比較し、世間を知ることができるようになった弊害から、自己肯定感が全体的に下がっているので、共感を呼びやすく人気です。

『恋曲』は恋愛映像が映える恋の歌です。想像に易く、10~20代の女の子が中心に集まっていれば話題の中心は自ずと恋になるので人気です。

『エンタメ/アニメ/スポーツ映え曲』はアニメやドラマを再編集した所謂"MAD"と呼ばれるものや、スポーツやゲームのスーパープレイのまとめなど、エンタメ動画全般に使われる"映えBGM"のことです。
これは世代に関わらず誰もが暇つぶしで見るものなので当然人気です。

『季節曲』これは今までと比べると少し熱は小さいですが、日本人は四季折々を楽しむ文化があるので比較的人気です。

『流行曲』はTikTok内外問わず世間的に流行っている曲です。流行に敏感な人たちの集まりなので当然人気です。

『特定界隈流行曲』は自分の属しているコミュニティで局所的に流行っている曲です。内輪ネタ曲です。同じ推しや同じ趣味のたちの間だけでめちゃくちゃ聴かれてる曲です。アルゴリズムの個人最適化は年々進化しているので、自分の好きな文化の曲を的確におすすめしてきており人気です。


弊社では視聴者から需要がある動画で使われるTikTok曲の大雑把に9割はこの7つに分類できると考えております。


こういうと……

などの意見が聞こえてきますがグルメの動画は確かに人気ですが、グルメの動画にあると嬉しいBGMというのはとても少ないです。

例えば『うますぎやろがい』

『ダイエットは明日から』

などが数少ない例としてあるのですが、グルメ動画の大抵の動画は絵が圧倒的な主役であり音楽で補助できる要素というのが少ないです。
投稿者視点で言えば『どの音楽をつけるか』がバズるかどうかに影響しにくいジャンルなのです。勿論『動画』である以上全く影響しないことはないしトレンドなどもあるのですが他のジャンルと比べるとパイが小さいので、15ジャンルとする程ではないと今回は判断しました。

例えば上記で引用したのがTikTokで特に人気のあるフォーマットで作られ実際に再生数も奮っているグルメ系動画ですが、この動画のBGMが変わることで視聴者にさらなる価値提供ができるでしょうか?

同じ理由で14ジャンル入りを果たせなかった他動画ジャンルの例を挙げるなら『美容系』『筋トレ系』『暴露/ニュース系』『ASMR』『生放送切り抜き』などがあります。

つまり動画の需要があるもの、イコール潜在的に音楽の需要があるもの…というわけではないです。
今回は『バズ曲の作り方』の教科書ですので、TikTok内で音楽の需要が大きい箇所に絞って分析をお届け致します。


それではこの7パターンのBGMのトレンドの変遷やバズる理由を分析し、2025年以降どんな曲が流行るのか考察していきましょう。



1、陽キャRap/EDM

本章メイン執筆担当:宮本隆平

「陽キャRap/EDM」とは、クラブでかかっているようなダンス曲と印象的なラップが中心となる(レゲエなど)曲を指します。
この二つは音楽的には全く異なるジャンルですが、TikTok内での伸び方や使われる界隈が所謂"陽キャ"と呼ばれるクラスの中でも明るい人たちである点が類似している為今回は便宜的に一緒に取り扱います。

黎明期である2018年頃から今日まで根強く人気のジャンルで、特に2024年の「Bling-Bang-Bang-Born」はUGCが3Mを超える特大ヒットとなっています。

毎年コンスタントにヒット曲が出ているところを見ても、TikTokにおいて中心となるジャンルといっても過言ではないでしょう。

代表的なTikTokヒット曲と大まかな分析を以下に記載いたしました。

なお「おともだち」「UCHIDA 1」は過去詳細なヒットの理由分析レポートを書いた事がありますのでよろしければこちらもご参照ください。


①何故動画がバズるのか?(視聴者インサイト)

RapやEDMを使った動画の主なジャンルは『ダンス動画(可愛い、かっこいい、セクシー)』です。これはTikTok黎明期からずっとアプリを代表する動画ジャンルです。

@moemomo0307

ジェットコースターで意識失っちゃいます#コスモワールド

♬ UCHIDA 1 - GINTA & ODAKEi

これらのフォーマットは変化をしつつも依然として人気です。黎明期から現代まで一切衰える事なくずっと人気なので、今後も流行りは続いていくといっていいでしょう。

そもそも何故TikTokではダンスする動画がバズるのでしょうか?
当たり前すぎるこの問題を改めて考えてみたいと思います。


結論、根本的にTikTok自体が陽キャの文化と深く根付いているからと推察できます。
まずは、初期の2018年にどのような動画が流行っていたのかを見てみましょう。

上記サイトは、TikTokの「Year in Rewind」というTikTokでその年にどんな動画が流行ったのかを発表しているものです。その中の「2018年に日本で人気があったチャレンジのランキング」で1位を獲得しているのは「一生パリピ」です。

これは1つの企画に過ぎませんが、この時代を象徴する企画だといえます。
実際に2018年頃の動画を見ると、「一生パリピ」の動画に限らず、上記属性界隈が投稿している動画が非常に多いです。

つまりTikTok初期は陽キャや外見が派手で強そうな印象を与える界隈の方々(俗に言う“やりらふぃー”)が多く、そういう明るい人たちが中心となって盛り上がっていたメディアということが分かります。必然的に彼らが好むものが中心となった為ダンスUGCが広まりやすかったのです。

それを裏付ける根拠を幾つかご紹介いたします。

例えば興味深いのは2019年のTikTokユーザーの生活観TOP3です。

1位:変化に富んだ人生を送りたい
2位:生活を楽しむためにお金を使う
3位:楽しいことしかしたくない

下記サイトより引用

常に変化を求め、楽しいことをしていたいという価値観を、陰の属性の人が持つことは考えにくいので、やはりこの時代のTikTokユーザーは陽キャ属性が圧倒的に多かったといえます。

また当時のTikTokの方向性を見ても、「アガる思い出つくっとく?」というキャッチコピーでCMを流しており、明らかに陽キャ属性の方をターゲットにしていることがわかります。
2019年放映のTikTokのCMを引用いたします。

そもそも今ほどショート動画がマス化していない時代に、顔を出してダンスをしたり、楽しんでいる姿を世に出すというのが、ハードルの高いものだったというのは優に想像できると思います。
その中で先陣をきってくれる存在が、楽しいことが好きな陽キャ属性であったと言えるでしょう。

その後、時代がショート動画を求めるようになり、2021年頃からInstagramのリール、YouTube shorts、LINE VOOMなど、ショート動画自体が流行ったフェーズで老若男女に広がりマス化しました。

その結果現在では以前ほど一定の属性だけのとがりのあるわけではないマスメディアに成長はしましたが、陽キャ属性からの人気は今でも根強く残っています。

(愛故のリスペクトだとご理解頂きたいのですが)例えばニコニコ動画は所謂"陰キャ"の集まりなので、歌ってみたやMADなどの家でクリエイティブな事をやっている動画が中心です。それは初期も隆盛した後も変わりません。
TikTokはその逆で、ダンスなどで顔を出し、表情で感情を表現し、思い出を人と共有する事から文化が始まったので依然としてそういったものが人気があるという事です。


②投稿時期による違い

以上のような背景から、楽曲が作り出す動画文化が陽キャ由来であっても陰キャ由来であっても、EDM・Rap系の音楽は近年『マス受けする主張でなければ伸びにくくなっている』というのが現状です。

例えば、2024年に大ヒットしたGINTA&OdAkEiの「UCHIDA 1」の主張は「俺たちスーパースター」です。
これは確かに陽キャ由来ですが、アニメの主人公なんかを思い浮かべていただければ分かりやすいと思いますが、陰キャにも共感できる内容です。
また、KOMOREBIの「Giri Giri」の主張は「ギリギリハッピー」で、こちらも陽キャ陰キャに関わらず理解できるし共感できると思います。

@moemomo0307

この音源といえばこの子でしょ!

♬ UCHIDA 1 - GINTA & ODAKEi
@amika0429.14

ギリはっぴー✌️✌️

♬ Giri Giri - KOMOREBI

ですが初期のTikTokで大ヒットした「イイ波のってん☆NIGHT」は、現代で流行るのは難しいと推察します。
「イイ波のってん☆NIGHT」の主張は「いい波のってんね〜」ですが、陰キャからするとこれは自分には関係のない界隈の話だなと感じて、すぐにスワイプされてしまうでしょう。

陽キャマインドのテーマ曲だとしても、マスが理解できて共感できる哲学がなければ、その界隈の中で人気が出る可能性はありますが、TikTok全体でのヒットに繋がるのは難しいといえます。

また、興味深いのは2021年に投稿された「TEENAGE VIBE」のイノベーター『ローカルカンピオーネ』のUGCのコメント欄で、「流行るな!」とか「次はこれが流行りそう」みたいなコメントが多いです。

@localcampione

新幹線より早く走れるように頑張るからみんなついてきてぇぇえ🥺❤️ #LC新幹線 #新幹線チャレンジ #kzm #tohji #ローカルカンピオーネ🗾👑 #ローカルカンピオーネ

♬ TEENAGE VIBE - kZm & Tohji

「ミーハーばかりになるだろ」ということは、2021年当初はTikTokにおいてレゲエやHIP-HOPがもっとマイナーなものだった(リアル世界に近い感じ)ということがわかります。みんながTikTokでダンスを楽しんでいる今の世の中とは空気が少し違ったんですね。

最近はTikTokから曲が有名になることは当たり前になりすぎた為、このジャンルの新曲にこのようなコメントは当時と比較して少なくなっています。

2020年以前は、まだTikTok自体がマス化していないため、TikTokで流行ったからといってミーハーばかりになることはなかったでしょう。つまり、TikTokがマス化していく過渡期だったからこそついたコメントというわけです。
メジャーに変化した最近のヒット曲のコメント欄では出てこない、時代を読み取れる特徴的なコメントですね。
最近インフルエンサー系の曲が増えているのもその変遷が影響しているからといえます。

2021年がまさに過渡期であった象徴と言えますね。


そして、決め手となったのは「Bling-Bang-Bang-Born」の大ヒットです。
この曲はジャージークラブ的でありつつもサビのメロディはアニソン的でとてもわかりやすくなっています。
このハイブリッド感があるものが大ヒットしたことこそが正にこの考えを裏付ける根拠ともなっています。


③何故楽曲が使用されるのか?(投稿者インサイト)

続いて何故このジャンルの曲をTikToker達が使いたいと思うのかインサイトを掘っていきましょう。

本ジャンルの楽曲を動画で使いたいと思う理由は上述した時代の変遷によって、2020年までとそれ以降で変わってきます。


まず2020年までは、楽しいことや面白いことをしたい、それを見てもらいたい、思い出を記録したいという理由が大きかったと思われます。まさに陽キャ属性の性質ですね。
この性質とマッチしている楽曲が多いのが本ジャンルでした。

一方2021年頃からはショート動画がマス化したことで、バズって人気者になりたい、お金を稼ぎたいという理由で動画を投稿する人が増えました。
そんな方々が本ジャンルの楽曲を使用する理由は、以下の2つが大きいです。

①自分の価値を訴求できる
②動画のインスピレーションが湧きやすい

1つ目の自分の価値を訴求できるというのは、SNOWのフィルターを選ぶのと同じようなことです。
つまり、自分が自覚している"売れる為の武器"ーーーー例えば「可愛さ」「エロさ」「想い」「信念」などーーーーをこの楽曲(≒フィルター)なら輝かせることができると思ったら採用されます。

特にレゲエやHIPHOPは、社会的抑圧への反抗や果てしなき挑戦、変わらない友情など、自分の考えや思想を歌詞にしている楽曲が多いです。この哲学が自分の武器に合っていると判断されれば、多くの方に使用してもらえるでしょう。

@awich098

私のこと嫌いなヘイター、え?悲しい。。。🤑💀💕with 本家 @YURIYAN.RETRIEVER 💘

♬ Bad Bitch 美学 Remix (feat. NENE, LANA, MaRI, AI & YURIYAN RETRIEVER) - Awich

2つ目の動画のインスピレーションが湧きやすいというのは、この楽曲を使ってどんな動画を作ればいいのか直ぐにイメージが湧くということです。
いい曲だから動画に使いたいと思っても、この楽曲を使ってどんな動画を作ればいいのかインスピレーションが湧かなければ採用されないわけで、使い勝手のいい使い方を提案する必要があります。

その点、「陽キャRap/EDM」は、元々ダンスとの親和性が高いジャンルでダンス動画にしやすいという特徴があります。簡単に言えばTik的に映えるダンスが作りやすいジャンルなのです。
よって、使い勝手、再現性、再生数のバランスが良い「ダンス動画」として使用されることが多いのです。

例えばEdhiii boiさんの「おともだち」の歌詞にある「カメラ目線でみんなでハイチーズ」など、キャッチーなダンスにしやすい歌詞が多いのも理由の1つです。

@sawamura_kirari

多分久しぶりの🤖#おともだち

♬ -


④主なUGC拡大経路

ここでは楽曲のUGC拡大経路を年代やパターンごとに分類していきます。

まず、初期の2020年頃までの楽曲は「イイ波のってん☆NIGHT」のように削除されている音源も多く、正確にイノベーターを探すことは困難なのですが、陽キャ属性方々が音楽にノッている姿やなんとなく振りをつけて口パクしている動画が同属性の中で広がっていました。

例えばのちにローカルカンピオーネさんが振り付けをした「雲の上」ですが、元々は俗にいうやりらふぃーの中で流行っていました。まさにこの時代を代表するような振り付けと言えるでしょう。しかし、元動画は削除されており、現在は切り抜きや下記のようなデュエット動画でしか見ることはできません。

2021年以降の楽曲に関しては、パターン別に見ていきましょう。

 -振付師 → ダンス動画

振付師がイノベーターとなり、振り付けしたダンス動画がUGCで広がっていくパターンです。
ダンス動画という動画ジャンルにおいては、1番ポピュラーな形と言えます。

TikTokでは様々な振付師がいますが、特にこのジャンルの振付師として絶大な人気を誇るのがローカルカンピオーネさんです。

@localcampione

新幹線より早く走れるように頑張るからみんなついてきてぇぇえ🥺❤️ #LC新幹線 #新幹線チャレンジ #kzm #tohji #ローカルカンピオーネ🗾👑 #ローカルカンピオーネ

♬ TEENAGE VIBE - kZm & Tohji
@localcampione

今日は@RYOMA【ローカルカンピオーネ】 の振り付け🐶コンコンコンがキャッチーすぎる😂犬飼ってる人は、このダンス踊る前に愛犬のお散歩行っとこうよ🦮#socks #djryow #R指定 #般若 #osanpo #osanporemix #ローカルカンピオーネ #localcampione

♬ オリジナル楽曲 - ローカルカンピオーネ🗾👑 - ローカルカンピオーネ🗾👑

本ジャンルに限らず様々なダンス動画を世に広めてきたグループですが、元々ダンサー出身ということもあり、この界隈からの支持が厚いです。イノベーターインフルエンサーはフォロワー数も重要ですが、それ以上にどの界隈のインフルエンサーから見られているか?というポジショニングも大事です。

このように振付師がイノベーターとなったあと、楽曲の本家がTikTokで発信を行なっている場合は本家が反応してダンス動画を投稿することが多いです。
また、この楽曲ジャンルに親和性のあるダンサー界隈や陽キャ、ギャル界隈、常にバズを狙っている流行敏感女子界隈などが同時期に参入してきます。
その後、Top TikToker界隈の参入があり、その他界隈にも広がっていきます。

今回分析した曲だと他には『Hug』『韻波句徒』『Bad B*tch 美学 Remix』『おともだち』『Osanpo Remix』『居酒屋 (feat. 徳利)』などがこの伸び方をしていました。

今後もこのパターンは出てくると思いますが、この後に述べる本家がイノベーターパターンが最近は増えているので、以前よりは数が減っていくでしょう。


 -推し動画→ダンスor雑多

芸能人やアイドル、アニメの推し動画として使用され、その後BGM使用やダンス動画として広がっていくパターンです。

『推し動画』とは、自分の好きな人、文化、作品などをアピールするための動画であり、一般人が趣味的に投稿するものからインフルエンサーが自分の内面や技術を訴求するために投稿したりもします。

@_____yknt

久しぶりの熱愛報道に落ち込むどころかめちゃくちゃ興奮してる我。この2人は推せる。 山﨑賢人 #山崎賢人 #kentoyamazaki #広瀬すず #俳優 #女優

♬ Longiness (feat. OHZKEY & Vanity.K) - SugLawd Familiar

SugLawd Familiarさんの「Longiness」は、推し動画から推し動画以外でのBGM使用へ広がっていきましたが、RIP SLYMEさんの「熱帯夜」は、推し動画からダンス動画へと広がっていきました。(振り付け自体は推し動画が流行る以前のもので、掘り返されたダンスが流行った特殊な例です。)

しかし推し動画がイノベーターになり広まるというのはそう多くない例でRap/EDMのヒット曲では2023年以降ほとんどありません。

というのも現在は「推し」という言葉が一般化し、推しをテーマにした歌やアイドル曲など「陽キャRap/EDM」よりも推し動画にしやすい曲が増えたからだと推察します。現に今後紹介する他ジャンルであれば2023年以降も少なからずケースがあります。

今後も本ジャンルからこのパターンが頻出するのは考えにくいですが、例えば日本のアニメ文化は日本はもちろん海外でも熱のあるジャンルなのでアニメタイアップのEDM/Rap曲などで歌詞と作品の相性が良ければ2025年以降もこの伸び方をする例が出てくるかもしれません。

この辺りの話は『四章 エンタメ/アニメ/スポーツ映え曲』『九章 遊び心を訴求できる曲』などで詳しく語ります。


 -本家→ダンス

本家がイノベーターとなり、ダンス動画を広めていくパターンです。

MVで本家が踊っているダンス、またはTikTok用に本家が考えた振り付けを何度も投稿したり、インフルエンサーや有名人とコラボして踊ったりして、本人がUGCをゴリゴリ促進していくケースが最近は多いです。
MVにTikTokでのダンス動画が含まれている作品が最近は増えていますね。

その後は、ギャル、陽キャ女子、ダンサーのように元々このジャンルに興味のある界隈はもちろん、流行敏感女子や今日好き界隈のように流行りのキャッチが素早い界隈からUGCが拡がっていき、大手TikTokerの参入によりさらに多くの視聴者の目に触れるようになります。

中には「UCHIDA 1」のように韓国やアジアへ進出していく楽曲もあり、今後出てくる楽曲の世界進出にも注目です。

@ive.official

Kore Watashino STYLE💋💋 IVE 아이브 アイヴ JANGWONYOUNG 장원영 ジャンウォニョン ウォニョン

♬ UCHIDA 1 - GINTA & ODAKEi

本家がイノベーターになるということが起こるようになったのも、黎明期とは異なり昨今TikTokerが市民権を得て全員で流行を作ろうとしている媒体だからこそと言えます。それは音楽に限ったムーブメントではなく、料理や流行語、猫ミームなどTikTok発信のムーブメントが数多くある中の1つに音楽も位置しているということです。


⑤2025年以降バズるにはどうしたらよいか?

まず意識すべきは訴求する哲学を陽キャ、陰キャ両方がわかるものにしていくことです。もっというとわかるだけではなくアツくなれる哲学にする。

例えば2024年ヒットした「俺たちスーパースタ!」は陽キャからすれば『ウェイ!俺たちの友情卍!』だし、陰キャからすれば『もう大丈夫!何故って?私が来た!(ジャンプの人気漫画"僕のヒーローアカデミア"の名言)』な訳です。
このバランス感が重要です。

ここは「発明」ですね。素晴らしいアイデアを思いつくまで頭を雑巾のように絞ってください。


ここを起点に作曲するとして、編曲のサウンド感もどちらが聞いても受け入れられるものにする。
しかしTikTokでの使いやすさは依然として意識する。

・トラックの明快さ(ごちゃごちゃしたMIXにしない)
・歌詞の聴きやすさ
・フリのつけやすさ(グルーヴが明快)

特に大事なのはこの辺りです。


その上で、イノベーターとなるインフルエンサーをどう生み出すかの戦略と発明した哲学を掛け算する施策を考えていく。どの界隈が一番使ってくれるかを考えそこへアクセスする方法を考えると言う事です。

自分達が数字を持っていて、かつそこの界隈に動画が届くなら簡単でしょうが中々そういう人は少ないはずです。

持っていないならどうやってそこにコネクトしていくか考えていく。

その場合方法は3つ。
1つは案件としてお金を払う。ただ正直これは一番確度が低いです。
なぜならTikTokは数が大事なので一本お願いしてもあんまり効果が出ないことが多いからです。あと依頼料も結構高い。お願いすると「フォロワー数×1円でお願いします!」とか言ってきますが、企業の商品PRなら費用対合いますけどダンス1回踊ってもらうだけでそれは費用対合わない。(ここら辺はTikToker側も少しビジネスを学んでほしいなと思います)

DMを無限に送りまくるとかも過去やった時ちょびっとは効果ありましたが、あんま本質的なやり方じゃない。
正直次の2つが出来ない時の妥協案です。

もう1つはイノベーターと一緒に楽曲制作する。
MVに出てもらうとかfeatで歌ってもらうとか。
そしたら拡大も一緒にやってくれるでしょう。これが一番最強だけど、そもそもそれができる事がすごいし難しい。

もう1つは自分のアカウントを伸ばして、イノベーターとなるインフルエンサーのフィードに自分の動画を出す。
そしてUGCしてくれるのをじっと待つ。
紫今とか、乃紫とか、女性アイドル系がやってる戦略ですね。

自分のアカウントの伸ばし方は「14、本人アカウントが伸びている曲」の⑤で詳細に語っているのでそちらを参照ください。


2、病み曲(内向的感情曲)

本章メイン執筆担当:山本慶太朗

『病み曲』とは、負の感情や表に出さない内向的な感情を肯定する曲です。
負の感情とは例えば現実逃避、サボり、妬み、ダウナー、浮気、妥協、自傷願望の様なものです。
内向的感情とは例えば、人に言いづらい趣味や性癖、自分独自の世界観などを楽しむ気持ちです。

今回ピックアップしたのはこちらの曲です。


序章で解説した様に『SNSとは負の感情を加速させるアルゴリズムが基礎』となっているため特にSNS相性が良い楽曲ジャンルです。

ですが見せたくない部分を引っ張っていることもあり「これはいい曲だ!」とおおっ広げにし難いジャンルでもあるのでSNSを飛び出してマスに受け入れられるケースまでは1段階ハードルがあるジャンルとも言えます。
このジレンマ感覚を掴むことがこのジャンルのマーケット感を養う最大のポイントです。


例えばこのジャンルでSNS発でマスに広がった代表作は「うっせぇわ」です。あれは2020年という時代がSNS内外問わず負の感情を肯定して然るべき空気感だったのも強く作用していたと思います。
ヒットの方程式で言うなら、楽曲と施策が満点レベルで美しいのは当然として、時代の加点もあった現象と言えるでしょう。要するに『時代』を例とするような"何か別要素"がないとSNS内の壁を突破するのが難しいジャンルです。

つまり、
SNS内でヒットを出すのは比較的容易だが、そこから特大ヒットを出すにはもう1段階高い確度の戦略がないと難しいジャンル
というのがこのジャンルの大きな特徴と言えます。


①何故動画がバズるのか?(視聴者インサイト)

これはTikTokだけでなくSNS全般に言えることですが『コメントさせる価値/コメントを見る価値』がSNSにはあります。
これを強く刺激するので伸びます。

人間の本能の一つに「共感してもらいたい」「コミュニティへの帰属意識が欲しい」があります。
つまりSNSで自分と同じ考えのコメントを見て安心したり、人にいうことができない昂る感情をコメント欄に書くことでストレスを発散させたりしているのです。

例えばこのジャンルのヒット曲に『浮気されたけどまだ好きって曲』がありますが、この曲のUGCがこちら

@asu.asu.9

動画にしていい方恋愛エピ教えて🙋🏻‍♀️ #浮気 #失恋 #恋愛

♬ 浮気されたけどまだ好きって曲。 - riria.

コメント欄にはこんなことが書かれていました。

恋愛のトラウマの話などは中々周りに言いづらいものですから、誰かに話したりなどで言語化せずに心の中で溜めたままの人も多いでしょう。
そのような人を動画で肯定し、吐き出させる場所を作っているのも動画SNSの役割の一つと言えます。
このような役割を担えるのは、匿名でリアルとは違う人格を持つことができるSNSならではの強みと言えるでしょう。


②主なUGC拡大経路

このジャンルの特徴として強いアーリーアダプターが出てくることが多いです。まず前提として「特定の病みor性癖界隈のカリスマ」みたいなインフルエンサーと、彼女らが率いる界隈というのがあります。

このようなピラミットが無数に存在している。

そのカリスマ自身がアーティストで歌を出しているケースと、
アーティスト自身は別にカリスマではないのだけどカリスマインフルエンサーが動画を作ったことで急速にその界隈に広がるケースの2つがあります。


まずアーティスト自身がカリスマのケースですが、これを語るのにはずせないのが「たかやん」です。
この業界でこの手法でヒット曲をあれよあれよと連発しているのが(「手首からマンゴー」「勝たんしか症候群」など)たかやんなのですが、(あまりにもヒット曲が多すぎるので今回は1曲だけ分析しました)

彼の場合例えば上記の様に「リアコ(アイドルやホストなどにリアルに恋をしてしまう女の子たち)が辛いのを肯定する曲」でバズっています。

彼は"報われない恋に悩む界隈"のカリスマと言えるでしょう。


今回分析した曲でいくと
「ベランダ」の「戦慄かなの」
「可愛いあの子が気に入らない」の「なるみや」
なども大きく大別すれば「たかやん」のような性質があります。


アーティスト自身がそういう性質でない場合も、

例えばYou are my curseでは「廣住このは」が、

@21_417

ノーマルカメラなのに可愛すぎね、わたし!#09 #ツインテール #無加工 #fyp

♬ you are my curse - nyamura

モエチャッカファイアでは「mumei」が、

@mumeixxx

萌 萌 萌 萌 ♡モエチャッカファイア

♬ モエチャッカファイア - 弌誠

彼女らのような界隈を牽引するインフルエンサーが取り上げることで、その界隈で急速にUGCが拡大する傾向があります。

①でお話しした様にSNSは現実で吐露できない感情の掃き溜めの様な役割があるため、同じ様な主張のある人同士が緩い繋がりを形成し界隈が出来上がります。
その小さな界隈の中では思想が一つに統一されているので、界隈のカリスマが「こういう気持ちだよね、みんな?」と曲を使って"界隈のみんな"に語りかければ「そうそうそうなの!私の気持ちを代弁してくれてありがとう😭」となるわけです。


なのでこの界隈でUGCを拡大させるには、如何に界隈のボスを味方につけるかが1つの勝負になるでしょう。
マーケティングのセオリーで考えれば、ある意味「feat. たかやん」にしてしまうことが最も手っ取り早いとも言えます。
ですから「feat. 戦慄かなの」でベランダをヒットさせたヤングスキニーは正攻法だという印象です。


③何故楽曲が使用されるのか?(投稿者インサイト)

このジャンルは大きく2つに分類できます。

1つは、負の感情を叫ぶ系です。
哲学が「感情掃き溜め」になっているものがこれに該当します。
言い方は悪いですが、弊社ではこれを『感情の掃き溜め、ゴミ箱』だと解釈しています。人間ですから、いつだって誰だって、前向きな感情ばかりを音楽に肯定してもらいたいわけじゃありません。
誰にも見えない場所で、匿名で、自分の嫌な部分を吐き捨てて蓋をしてしまいたい、そんな役割をSNSが担っているのです。


もう1つは、内向きな感情を肯定する系です。
上記に該当しない曲は全てこちらになります。
例えば「モエチャッカファイア」が分かりやすいのですが、冷徹な表情で、メイド服を着た女の子に「萌え萌えきゅん」って言って貰うのが嬉しいっていうのって、大っぴらに書き難いじゃないですか。

趣味:メイドカフェで冷たい子に萌え萌えきゅんしてもらう

ってなんだか恥ずかしい。

@issey_hello

新曲だしました、モエチャッカファイアと言う曲です。感想お待ちしてます #zzzero #newmusic #ellenjoe

♬ オリジナル楽曲 - 弌誠 - 弌誠

上記の様な恥ずかしい感情に限らず、我々には特別SNS以外の場所で大っぴらにすることは普段ないけれど強く深く抱いている感情ってありますよね。

カフェで頼んだケーキが可愛かったとか、昨日読んだ漫画が泣けたとか、私の作った推しの"痛バ"が可愛いとか。

1つ目は「みんなの見せたくない感情のゴミ箱」
2つ目「見せる必要がない感情をSNS内くらいではせめて輝かせる」
といった2種の投稿理由があります。
どちらにしても現実で発散できない感情をSNS上で代わりに発散しているというのが共通する点です。


しかしこれが違うのはサウンドと歌詞くらいで、
拡大経路やマーケティング的な特徴などは特別2つで違うとは思っていません。


④投稿時期による違い

このジャンルはリリース時期によって傾向の違いなどは大きくありません。

人間の根源的な欲求に差している点と、そもそもSNS自体がそういった役割を持っておりそこに根ざしている事が理由でしょう。


⑤2025年以降バズるにはどうしたらよいか?

前述の通りこのジャンルはトレンドの変遷があまり流動的ではないジャンルです。即ち今まで解説してきた2024年の成功パターンを踏襲する事でヒットを狙いやすいと言えます。

改めて具体的に新曲を作る場合のポイントをまとめました。

・SNS上の界隈として大きな所が持っている負の感情とシナジーのある歌詞とサウンド

上記で設定した界隈のトップインフルエンサーを動画を作ってもらう、歌ってもらうなどで巻き込んでいく

+@で界隈で広がった後もっと大きな範囲に広がる『何か』の施策を入れると、TikTok内での小さなヒットで終わらない

「何か」のヒントは以下の通りです。

・時代的にマスな負の感情とリンクさせる
 
例:うっせぇわ

・一聴した時の印象では負の感情を歌っているとわからない様な曲調にする
 
例:シル・ヴ・プレジデント


3、恋曲

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