
社会人博士を続けてわかった苦労とあらかじめ理解しておくべきこと
私は2021年より入学し社会人博士を続けていますが、かなり苦戦しています。しかし苦戦をしていながらもかなり多くのことは学べたのでその一部を共有していきます。
ピボットする力
スタートアップのビジネスとすごく近しいものを感じるのですが、研究はうまくいかなかないことが多いので、何か壁に当たった時に落ち込まずすぐにピボットする力が必要だなと思いました。ピボットは時には大きなものが必要となることが多いですが、大体のケースにおいては多少のピボットで済むことが多いです。指導教官にも指導いただいたのですが、私は研究において損切り力も必要なのではないかなと思います。自分のプロトタイプに愛着を持ちすぎないほうがいいかもしれません。
共著者のマネジメント
特に私は論文・アウトプットを出せない期間が続いていたのですが、共著者のレビューなどのタイムラインを考え、しっかりそこをマネジメントすることが大切なようです。自分がMain Authorである場合は共著の方もしっかりご協力いただけるようにタイムラインをマネジメントする必要があります。学生・大学と会社ではタイムラインが結構違います。例えば会社ではあらかじめ予定を立てて、と言うことが普通かと思いますが、大学・研究室では場合によってはそのような風土でなかったりもします。そこをあらかじめ認識して、「会社での当たり前」を過信しぎずに、ラボや協力者に合わせて対応していくことが必要です。
論文を書く力がなければ周囲を巻きこむ
私は技術実装型の研究者で、論文を書く基礎力がラボの中でも低いなと感じました。こうなった時に必要となるのは、周り・共著者を巻き込む力なのではないかなと思います。プライドを捨てて、自分より書ける人にしっかりをお願いし、そのノウハウを獲得していくことが論文上達の近道なのではないかなと感じています。論文はその学会・分野においてお作法がありますし、基礎的なお作法もあると多います。自分にどの能力が足りてないか、を知るのは他の人の論文を読むか、レビュー・壁打ちをするかのどちらかになると思います。結局この回数なんだと思います。ボロクソに叩かれることが多いですが、ぜひそれは必要な過程だと理解してください。
研究者のメンタリティと逃げ場
私の場合はアウトプットがなかなか出せずに長期間在籍していました。そのため、後半では自分のモチベーションがかなり下がっています。特に他の学生はどんどん論文を出しているのに、自分だけ出せない、という状況が続くと、自己肯定感・効力感が下がっていきます。幸い私の場合、仕事ではそう感じることがなかったので、仕事に逃げる余地がある分マシな環境ですが、私のように社会人博士ではない、博士課程一本の人にとってはかなり厳しいのではないかなと思いました。
こうなる時に、自分を保つために重要なのは研究以外のものとも接点を持つことなのかなと思います。私の場合は仕事や家族などの研究以外のものに対しての接点がありました。こうしたものに触れたり、自分を研究から遠ざけることによって自分の研究を客観的に見ることができるようになります。
自分のやりたいことをブレさせない
本当に本当に本当に当たり前なことなのですが、自分のやりたいことをできる限り貫きましょう。本当に当たり前なことなのですがこれが結構難しいのです。とく影響を受けやすい私は周りからのフィードバックでブレることが本当に多かったです。結局研究の1番のモチベーションは、自分が知りたいことの解明にあると思っています。あくまで大学やラボはそのための手段であるべきです。特に迷ったときはぜひ原点回帰をしてみてください。
この辺りは起業家精神とかなり似ているな、と実感するのですが、自分自分のオリジナリティや使命感、みたいなものを大切にすると良いのかなと思います。そこに関しては論理的な正しさはなく、何をやりたいか、自分を突き動かすか、というその一点を考えるべきかなと思います。
このように自分の実体験を反面教師としていただきつつも、ぜひ社会人博士に挑戦する人が増えたらなと、心から願っています。社会人博士は普通の博士課程とは違う価値創出ができると感じています。ぜひそういった挑戦をする人が増え、さまざまなイノベーションが増えてきたら良いなと思います。