超小型衛星搭載用CMG姿勢制御システム
近年,超小型衛星の開発と運用が国際的に盛んになっています.ここで超小型衛星とは,質量100kg以下の人工衛星のことです.従来の大型衛星比べて開発期間が短く,費用も低く抑えられることから,人工衛星の最新技術のシステムやコンポーネントが衛星軌道上で実証・利用されています.さらに超小型衛星の分類も定義されており,特に1−10kgは,Nano satellite (CubeSat)と呼ばれており,そのサイズは1Uを100 mm×100 mm×100 mmで規格化され,3U (300 mm×100 mm×100 mm)が最も一般的です.
我々が開発したCMGとは,Control Moment Gyroscopeの略で,角運動量交換型といわれる姿勢制御装置の一種です.その原理は,高速で回転するホイールをジンバル機構で支持する構造で,ジンバルに固定されたモータによりホイールの角運動量(回転軸)の向きを変更することによって得られる,いわゆるジャイロ効果によるトルクにより人工衛星の姿勢を制御します.これまで一般的に用いられてきた姿勢制御装置には,リアクションホイールや磁気トルカがありますが,CMGはそれらに比べて数十倍のトルクを出力できるので,高速な姿勢制御が可能になります.
近年は,特にリモートセンシングによる地球観測の需要が高まっており,特定の地点・設備等の詳細な形状や稼働状況を高頻度に把握することが求められています.例えば災害発生時には,災害発生地域の上空に衛星が飛来した際,衛星の姿勢を制御して,観測センサ(カメラ等)の視線方向を目標へ向ける動作を複数回行う必要があります.そこで,この高速姿勢制御の技術が重要になります.
CMGはこれまで,そのトルクの大きさから国際宇宙ステーションなどの大型宇宙機の姿勢制御に主に用いられてきました.しかし,CMGはその構造の複雑さや,姿勢制御精度が劣ることなどの課題もあり,Cubesatに搭載された例は殆どありません.そこで私たちは,これらの課題を解決し,高速と高精度を両立した小型CMGの実証を目指しています.
超小型衛星におけるリモートセンシングの重要性と,その需要の伸びを見込み,CubeSatクラスの超小型衛星においても,地上分解能1m以下の観測性能を持つようになると予測しされます.そこで,そのような衛星のさらなる観測性能向上を目指し,要求仕様として定めたアジリティ3.0 deg/s以上,姿勢制御精度0.5 degを満たす性能を持つ,CMGを用いた姿勢制御システムを開発設計しました.
本研究において開発したCMG姿勢制御システムは,超小型衛星への搭載,運用が可能であり,その制御性能の高さから超小型衛星のさらなる観測性能の向上に大きく貢献が期待されます.
詳しくは,「ケミカルエンジニヤリング」2020年5月号(VOL.65 No.5)にて
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