クラウドファンティンディング始めました
昨年に続き,第2弾第二弾クラウドファンディングを開始しました!!!
今回のテーマは
超小型衛星「HATOSAT」で河川の防災を実現したい!
河川の水位データが氾濫予測のカギ
近年日本では、台風や豪雨による自然災害が全国のいたるところで発生しています。2019年に発生した台風19号では、私たちが所属する東京電機大学の鳩山キャンパスがある埼玉県でも複数の河川が氾濫し、周辺地域に大きな被害が出ました。そこで課題となったのは、災害時に河川の水位状況を的確に把握・予測し、住民へ適切な非難情報を提供することです。
現在埼玉県では、河川の水位をセンサーで計測することで、河川の氾濫や堤防の決壊を事前に予測するための取り組みが行われています。センサーで得られた水位の情報は、携帯電話の電波によってリアルタイムに携帯電話へ送られます。これにより、河川の状況を確認するために人が直接現地へ赴く手間を減らすことができます。また、災害時に水位の状況をリアルタイムで知ることによって、住民へ避難などの情報を適切に提供できることが期待されます。
しかし、この水位データの取得は、携帯電話の電波が届く範囲内に限られています。日本国内における携帯電話の電波の人口カバー率は99%以上ですが、面積カバー率は60%ほどに留まっています。携帯の電波が届かない範囲は山岳地を多く含み、そこに点在する河川の水位データが収集できないことが課題だといえます。山岳地にある上流域の水位データを通信技術によって収集できれば、人が山間部などへ河川の水位を確認に行く手間を軽減できるだけでなく、河川の増水や氾濫をより高精度に予測できることが期待されます。
衛星で遠隔地の水位データを収集できるか?
私たちは、衛星通信を利用することで、携帯電話の電波の届かない遠隔地の水位データを収集できないかと考えました。現在、私たちの研究室では、3U(10cm×10cm×30cmサイズ)の超小型衛星である「HATOSAT」を製作しています(参考:academist 『超小型衛星を打ち上げ、通信・撮像の性能向上を目指す!』)。HATOSATは、S&F(Store and Forward)と呼ばれる技術を使って地球にある端末のデータを収集し、それを地上局へ転送することで、携帯電話の電波の届かない地域でもデータを取得することができます。
今回開発している衛星HATOSATは、地上約400kmの高さで地球を周回し、衛星が上空を通過したときに地上と通信するため、衛星がデータを取得してから地上局でそのデータを受信するまでには最短6時間のタイムラグが発生します。そのため、リアルタイムで河川の水位状況を把握するのにはやや不向きといえます。そこで、衛星で定期的に収集した水位情報をビッグデータとして蓄積することで、河川の水位を予測するシステムの開発に役立てることを目指します。
河川の水位を予測する技術には、過去のビッグデータから人工知能を用いて数時間先の水位を予測するサービスを提供している企業もあるなど、ビッグデータの収集が注目されています。高精度な水位予測を行うためには、より広範囲のデータを蓄積することが有効だと考えられ、衛星通信によってこれまで収集が難しかった遠隔地における河川の水位データを蓄積できれば、河川の氾濫をより高精度に予測できると期待されます。
そこで今回のプロジェクトでは、衛星通信のS&Fによって水位データを集めることが技術的に可能かどうかを検証するための実証実験を行い、将来的には高精度な水位予測のためのビッグデータを衛星通信によって構築することを目的とします。
衛星のS&Fを用いたシステム開発
衛星のS&Fを利用して河川の水位データを取得するためには、まず河川の水位を計測している複数のセンサーデータを、特定小電力無線による通信で1か所にまとめて保存しておきます。そして、衛星がその上空に来たとき、センサー近くに設置された地上用アンテナから保存しておいたデータを衛星へ送り、衛星で受信します。衛星で受信した水位データは、地上局のアンテナで受信することで、利用できるようになります。
このシステムを実現するために、現在私たちは、S&Fの地上用アンテナと、その電波を衛星で受けるための受信用アンテナを開発しています。地上から衛星への通信には、電波の送信出力が小さい特定小電力無線を使用しており、その電波を衛星のアンテナで受けなければなりません。
しかし、私たちが開発する衛星HATOSATは超小型なため、搭載できるアンテナのサイズには大きな制約があります。そのなかで、目的の利得や指向性を達成し、なおかつ低消費電力、長期間運用が可能となるよう、高い放射効率が達成できるアンテナを開発しています。また開発の一環として、S&F用の地上用無線機と、すでに打ち上げられ運用が行われているS&Fミッションを有する衛星とで通信する実証実験を、高い山などで行う計画を立てています。
S&Fを利用して河川の水位データを収集する予定の衛星HATOSATには、他にも「CMGを用いた高速姿勢制御実証実験」、「S帯高速通信」、「カメラによる地球撮像」、「バスの実証」といった多くのミッションがあります。今後、衛星HATOSATを打ち上げ、それらのミッションを成功させるため、私たちは日々開発を行っています。
研究費サポートのお願い
現在開発を進めているS&Fのシステムを実際に運用するまでには、さまざまな機器の開発と性能試験が必要です。とくに衛星に搭載する受信用アンテナなどの機器は、宇宙空間の放射線や熱の条件など、地上とは異なる空間で性能を保持する必要があるため、その性能を検証するには、宇宙空間を模擬した環境で実験を行う必要があります。また、衛星HATOSATを打ち上げる際にも費用が必要になります。これらのS&Fのシステムに必要となる機器の開発や、各種試験(熱・振動試験や放射線試験)のための費用が不足しています。今回のクラウドファンディングでご支援いただく研究費は、S&Fのシステムの設計・製作費・各種試験費の一部に充てさせていただきます。
私たちは、衛星を用いたシステム開発という今まで経験したことのない研究に挑戦しているため、つまづくことや辛いことも多々あります。今回、クラウドファンディングで私たちの研究について多くの皆さまに知っていただくことが、よい意味でプレッシャーになり、研究開発をさらに前へ進める力になると思い、クラウドファンディングへの挑戦を決めました。
今後は、皆さまのご協力をいただきながら、衛星を用いた水位データ収集のためのS&Fの開発、さらには衛星HATOSATの打ち上げと運用を目標に取り組んでまいります。また、クラウドファンディング終了後も取り組みや結果を公表していきます。少しでも興味をもっていただけると嬉しく思います。
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