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2024年のここまでとここから

 『なかなか失われない30年』が終演した。1月(というか昨年末)から、稽古がまばらな時期もあったけどほぼずっと何かしらの作品をやり続けている期間はこれで一段落。ホッとしていると同時に、いつになく抜け殻のような気持ちになっている(抜け殻の気持ちってどんなんだ)。ここまで隙間なく出演が続いたのは初めてだったので本当にありがたい限り。

 昨年の10月末くらいに、2024年が青春事情→MELT→アガリスクと立て続けになることが決まり、11月10日にはアガリスクの次回作が『なかなか〜』の路線になることも決まって、自分の役が作品の中心人物(平たく言えば主役)になりそうだとわかったときから、これはアツい2024年になるぞと思っていた。 

 青春事情の『ソロソロ』は、キャンプ場に集うソロキャンパー達の群像劇で、座・高円寺1のステージ上にぎっちりテントが立ち並ぶ楽しい舞台。自分の演じた圭太(青春事情では珍しく、役名は俳優の名前そのままのちょい前アガリスクスタイル)は、ちょっとぬけたところのある朗らかで不器用(テントが全然組み立てられない)なバツイチの男。アガリスクだとあんまり演じることのないタイプで、青春事情だと『NO GOAL 2022ver.』でやった倉内に似てるかも。1時間の中編だが、青春事情の中では一番好きな作品だし、役も一番好き。加賀美くんがゆっくりソロキャンしたいのに、周りに振り回されてツッコみまくるのが楽しいし、ちょっと河田っぽくもある。自分はボケ倒す役だったのでこれまた楽しかった。またやりたい。個人的には屋外のテント公演でやるのにぴったりな作品だと思っている。テントに入ったらまたテントたくさん立ってたら楽しいよね。青春事情は作・演出の大野ユウジくんと加賀美くんが同学年なので地元の同級生みたいな感じがある。

 続く不条理コントユニットMELTには初めての参加。コントレックスFINALで観たのが初めてだったが、とても面白かったので良かったら次出演させてくださいと主宰で演出の平田純哉くんにLINEでお願いしたら、まさかの主役ポジションで出してくれた。アガリスク版や東宝の『SHINE SHOW!』の稽古場で淡々と笑いを取ってる私(芝居中)を見て、私を『スネーク・オイル』の主人公にしてみたいと思ってくれたのだそう。宇城悠人くんの作品世界は登場人物への目線に優しさがあって、不条理ながらもエモーショナル。笑いの取り方もアガリスクのようなテンポと速さで持って行くのではなく、観客に理解してもらう間を多用するスタイル(韻踏んじゃった)。相手役の江益凛さんもコメディエンヌなので、つい楽しい方向に行ってしまって、感じを掴むのがちょっと苦労した。でもその感じを観て、面白いって思ったのよね。やれてよかったし、MELTのみんなはめっちゃ年下だけど才能があって、心強い仲間が新しくできた気がして嬉しかった。共演者の皆様も存在感と才能が迸っていて、とても刺激された。岩永望夫も(あとスペンサーも)今までにやったことないキャラクターだし、自分とは違うタイプだと思っていたが、観に来てくれた榎並夕起から「めっちゃ伊藤さんだった」と言われたので、案外自分そのままだったのかも。『スネーク・オイル』もまた機会があればやらせてもらいたいし、他のコントもぜひまた参加させてほしいな。次はもっとうまくできるよ、たぶん。

 で、フジテレビの『生ドラ!東京は𝟮𝟰時』 -𝗦𝘁𝗮𝗿𝘁𝗶𝗻𝗴𝗢𝘃𝗲𝗿-を挟んで(メロンパンダを可愛がっていただき思わぬ収穫、あと相島一之さんと一足先に一応『逃奔政走』と同じ役でご一緒できた)、我がアガリスクの『なかなか失われない30年』。ホームへ帰還である。やはりこれが一番の山場、大ボスといった感じ。『ソロソロ』と『スネーク・オイル』を経てなかったらもっと強敵に思えていただろう。ここまでアガリスクで培ってきたコメディスキルを全出しした感じ。っていうかもうそれが全て。河田は、出てくる4つの時代の中の現代の人なので、何か現代らしさを感じさせるキャラ付けができたりしないかとか考えたが(ドラマターグの中田顕史郎さんからも、伊藤のまんま過ぎるから違う演技体を模索したほうがとアドバイス頂いたが)それをやる余裕はなかったな…。最低限の河田らしさを保ちながらみんなにツッコむのが大変だった(いや、けっこう伊藤になっちゃってたかもな)。でもほんと今できる中で最大限のことはやりきったというのは言い切れる。現状の私の本当にこれが限界、出し切った。ほんとに清々しい気分。終わってこんなに清々しいのも珍しいくらい。そして、僕なんかは「どうなるか想像つかないから面白そう」と無邪気に推したこの企画を、キッチリ一つの作品に昇華させバッチリウケさせた冨坂友はやはりすごい。一生ついていく所存。『なかなか~』やってようやく胸張って「アガリスクエンターテイメントの伊藤圭太です」って言えるようになったかな。

 そんなわけで、『スネーク・オイル』と『なかなか〜』で続けて主役ポジションという、今後いつそんなことあるんだって感じの状況だった。ありがたや。これやり終えたら俳優辞めてもいいや…って気持ちになるかと思ったが全然そんなこともなかったので『逃奔政走』がんばります。珍しく部外者じゃなさそうだし(別に部外者ポジションを悲観してるわけではない)。主役もほんとにぜひまたやりたい。

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