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「作りすぎ」はシステムの癌〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#32

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。

今回は以前「無事にリリースは本当に無事なのか?」で書いたことの掘り下げをします。

無事にリリースの落とし穴

以前にどのユーザーからも文句を言われないシステムのリリースというのは一見輝かしいプロジェクトの成功に見えるけれども、実は余計なコストが掛かっていて会社の経営から見たら成功ではないという話をしました。

「誰からも文句を言われない」ということは、その反面「誰からも文句を言われないくらい要求をそのまま実現した」ということで、プロジェクトで実現するものとした目標よりも過剰な「作り込み」をしたということで、コスト面からみたらプロジェクトは失敗してしまったという事という話をしました。そしてベストはいい塩梅で文句を言われるレベルでプロジェクトを終わらせるのが本当のベストという話をしました。

本当に「無事にリリース」は落とし穴で良くないことなのです。

余計な機能の悪

余計な機能を作ってしまうということは、プロジェクトコストを上昇させてしまう以上に様々な「悪」を生み出します。

昔、どこかのコンサル会社の人がセミナーで言っていたシステムのROIに対するポートフォリオの話をしていました。けっこうこの話は誰も気がついていない重要なことを含んでいます。

システムの有効度(ROI)

システムを作る目的としては②の「利用されて高いビジネス効果を生む」ものです。使えば使うほど効果を生み出します。ここには文句がありません。

よく言われるのが④の「利用されない」です。しかしながらこれは普及させれば高いビジネス効果を生み出す可能性があるので希望が持てます。プロジェクトのあとで定着化させれば良いパターンです。SFAなんかはたいていこのパターンなのが多い印象です。

そして③のパターンはウォーターフォールの欠点と呼べる領域で、作っては見たものの誰も使わないというパターンです。よくERP導入における「余計なカスタマイズ」がここにあたり、一説によればERPのカスタマイズの25%が使われていないとか、あるコンサルの話だと68%は使われていないとかいろんな話があります。肌感覚としても20〜30%は「作らなくてもよかった」機能な感じはします。

そして最悪なのが①の「使われているけど効果がない」です。これは機能が使われる事によって「利用者の無駄な時間」「システム運用の無駄な時間」「システム維持の無駄なコスト」などを機能が動いている限り生み出し続けるというビジネス上最悪の結果を生み出します。③はしょせんプロジェクトコストが上がるだけで一時的なコスト増であるのに対し、こちらは使い続ける限り未来永劫に無駄を生み出すのです。経営者から見たらまさに地獄の光景です。・・・・たいていは気がついていないのですが、③が怪我みたいなものだとすればじわじわと会社の体を蝕むガン細胞のようなようなものなのです。

癌機能を生み出さないために

この癌機能を生み出さないようにするための重要なポイントは「目的」を大事にすることしかありません。システムの企画があったときに挙げられて経営層に説明した「ねらい」とか「目的」にそれぞれの機能が貢献できるかどうかをきちんと評価するくらいしか方法はありません。

インセプションデッキで目的やねらい、プロジェクトの目指すものを明確に認識し、検討中はそれを採用の基準にし、MVPに絞り込み、途中途中のチェックでも決めた目標やねらいに合致しているかをレビューしていくことで、とにかく余計なものを省いていくしかないのです。

④の源泉としては「いままでずっとやってきた」「やらないと管理部門に怒られる」「監査で言われる」みたいなものが考えられますので、そのへんに注意するのもいいと思います。

プロジェクト管理ノウハウの落とし穴

この話は一般的な「プロジェクト管理」の話には出てきません。なぜなら一般的な「プロジェクト管理」はSIerのために作られているからです。
SIerにとって上記の④は恐れるべき対象ではありません。④の場合は顧客は快く納品検収をしてくれます。すくなくともしばらくの間はその問題に気がつくことはないですし、あったとしてもSIerの責任を問われることはありません。むしろ④はたくさんあったほうが収益には好影響だったりします。

④が良くないというのはあくまでも事業会社の観点からでしかないのです。

だからこそ④には気をつけないといけないし、文句を言われないリリースには落とし穴があるのです。


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keita
チップもらったらきっとMidjourneyに課金すると思います