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なんで生成AIの事例に人事系が多いのか〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#68
世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。
今回は生成AIで社内の情報を検索するRAGの事例において、人事・総務系の手続きの事例が多い理由についてチョット掘り下げてみたいと思います。
そもそもRAGってなに?
まずはRAGについて簡単に説明してみます。
RAGは検索拡張生成と呼ばれ、生成AIに検索を組み合わせた活用技術の一つです。
生成AIのモデルは非常に性能がよいのですが、その学習は公開されている情報、つまりはインターネットで公開されているとか学会の論文とかで行われています。ですからビジネスで使用するような情報・・・業務マニュアルとか、社内規程などの組織に閉じられた情報については全く学習していないことになります。
しかしながら我々ビジネスマンの仕事で使う情報の多くはこの社内にある情報だったりします。これが生成AIがデビューした最初の時期にビジネスで活用できなかった理由のひとつです。
これを解決するために生まれた技術がRAGなのです。
RAGの処理は入力された質問文をもとに、改めて検索用にデーターベース化している社内情報などを検索し、その偉てた情報をもとにプロンプトを作成し、生成AIモデルに質問をするという流れになります。生成AIは検索結果を入れ知恵されてから回答を考えるので、学習していない情報でも比較的的確に回答することができます。
ちなみにこのRAGは生成AIのモデルが学習していない最新の情報に対応させる場合にも使用できます。
RAGの事例に多い人事的な手続き
そのRAGの事例の中で、けっこうな割合を占めているのが人事系の手続きに関する問い合わせの自動化です。例えば結婚したとか引っ越ししたとかのときに必要な人事部門に提出する書類の書き方や手続きに関する質問をRAGを使って自動化するというものが、たくさんあるRAGの事例の一定数を占めています。
まぁ生成AIの効果を多くの社員に実感してもらうとか、思いついた役員が市番手を出しやすい領域であるとか、いくつかの理由が考えられますが、掘り下げて考えてみると2つの大きな適用しやすいポイントが思いつきます。
今回はそれを整理してみたいと思います。
滅多にやらない仕事は「探す無駄」が多い
仕事というか作業を分解すると「探す」「調べる」「実施」となります。その仕事を行うために必要なマニュアルがどこに有るか探し、そのマニュアルを読み、そして実際に仕事をする・・・といったサイクルです。
一般的な仕事は、たとえば営業担当が行う受注も、購買担当が行う発注も、人事担当が行う採用も同じサイクルですが、これらのサイクルが繰り返し行われます。
人間には記憶する能力があるため、その結果として「探す」とか「調べる」ための時間がだんだん短くなっていきます。熟練すれば「実施」も短くなっていきますが、「探す」ははじめてのときよりも格段に短くなります。
ですから新人がベテランになっていくに従って仕事の効率が上がっていくのです。
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しかしながら「めったにやらない仕事」はどうなるでしょうか?一度やったら2〜3年はやらないような仕事だったら、2回めにやるときにはすっかり忘れていて、「探す」時間が、はじめてと同じくらいかかってしまいます。
つまりは何回やっても効率は上がっていきません。
人事系の手続きは婚姻にしろ引っ越しにせよ、一人の人間から見たらそう滅多には実施されません。・・・つまりは申請する側の人はいつでも「調べる」に時間がかかり「はじめての仕事」みたいな不効率で書類を作るのです。
そしてその反面人事の担当はこの仕事を繰り返し実施します。ですから繰り返しの業務のようにしっかりと記憶して効率的に仕事ができるようになっています。しかしながら申請してくる人は相変わらず「はじめての仕事」の人たちばかりです。このギャップはきっと人事担当者の大きなストレスになっていることでしょう。
・・・このギャップの問題をRAGが埋めてくれるのです。
これと同じことを営業とか購買のところでやっても同じ効果にはなりません。なぜならば繰り返し行われる営業とか勾配の手続きに対して人間はその仕事を記憶していくからです。わざわざ生成AIに聞かなくても自分の記憶で仕事をしたほうが効率的に仕事ができるからです。
後工程でかならず人間のチェックが入る
そしてもう一つのポイントは、人事の手続きがどうしても後工程で人間の目や手に触れることになります。どんなに完璧な申請が来たところで、その後ろの手続は人間の手が入っているのが、この世界です。
婚姻の届け出をしても、その後ろの扶養とかの手続きは残念ながら全自動ではなく人間である人事担当者が行うというのが実情です。
この事が生成AIの弱点をうまくカバーしてくれています。
たとえ生成AIが多少の間違いを犯していたとしても、やさしい(笑)人事担当がちゃんと確認してくれて修正をしてくれます。きっと文句は言われるでしょうが・・・
あともう一つは生成AIのない頃の申請も、間違っていたものが多かったというのがきれいに生成AI活用の課題を緩和してくれてます。今までは「いつも間違える」が生成AIになって「たまに間違える」になるだけだからです。
まとめ
このように人事関係の質問対応に生成AIを使うという成功事例は、こういった偶然というか、奇跡的なハマり具合で実現できているのです。
IT的な横展開という発想だけで同じことを営業の資料とかに応用してもうまくいかないのは、そのへんのマッチがないからなのです。
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