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「チェックを強化します」は受け入れるな〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#02

世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。


「ミス」とセットで使われる言葉


前回は「ミス」という言葉を安易に使って思考停止してしまう事の罪悪についてお話しましたが、その「ミス」という報告とセットとして使用されがちなのが「チェックを強化します」という言葉です。

みなさんも障害の報告の際にそういう場面を何度も見てきたと思います。

原因が「ミス」だから「チェック強化する」

一見、論理的には完璧な原因と対策なのですが、これでは何の解決にもなりません。「ミス」という原因が本当の原因ではないからです。

さらにもっと怖いことがこの言葉には含まれています。

あなたが事業会社の情シスで、これをSIerなどに言われたとしたら、全く違った意味になっているのですが、実はこの事に気がついている人は少ないのです。

「チェック強化」によるコスト増大

「チェックを強化します」ということがどういうことなのか、具体的に考えてみましょう。

「チェックを強化します」という報告だけだった場合は、まず確実に「チェックに時間をかけます」という意味になります。つまりは「工数を増やします」という事を意味しているのです。

日本におけるシステムに関わる作業は完成委託契約にせよ準委任契約にせよ「作業工数✕単価」を基準として支払額が決まっていると思います。

もしチェックを含め、100万円ぶんの作業があったとします。

仮にミスを起こす前・・・「チェックを強化」という対策を行う前は実作業が80%、チェックが20%だったとします。

この作業に「ミス」が発生し、対策として「チェックを二倍に強化する」という策を講じたとすると

(100万円 ✕ 0.8) + (100万円 ✕ 0.2)✕2

となり、結果として同じことを依頼しても120万円になってしまうのです。

つまり「チェックを強化します」という言葉は「次回から120万円でよろしく!」と言われているのと同じなのです。

これが未来永劫続くのです。

さらにもう一回「ミス」が発生したとして「チェックを2倍にします」となtれば次は160万円、もう一回あったら240万円、さらに「ミス」ったら400万円・・・・・・

闇金ウシジマくんも真っ青です


無意識な盗っ人丸儲け

もちろん、この「チェック強化」商法を悪意を持って行っているSIerさんはさすがに居ないと思います。(信じてますよ)

しかし、無意識な思考停止による「チェック強化」策は図らずともコスト増大に繋がってしまうのです。

たまに「ウチは毎月定額だから大丈夫」なんて言う人も居ますが、全くそんな事はありません。本来、その委託によって得られる対価は確実に減少します。ひと月当りの作業量や開発の量は「チェックを強化する」ことにより、強化した分だけ減ってしまうのです。

だから「チェック強化」なんていう対策を安易に受け入れては行けないのです。損をしないためにはその対策の成果が、減る対価を上回るのかをよく考える必要があるのです。

ほかにも方法はあるはず


そもそも原因が「ミス」という分析自体がいけていないのですが、仮にそうだったとしても時間をかけてチェックを強化する以外にも対策はあるはずだと思います。

例えば気が付きやすいように手順を入れ替えるとか、チェックの自動化を考えるとか・・・・・障害が発生してしまったときに早くリカバリできる対策を考えるとか・・・・「チェックを強化する」という思考停止にならずにちゃんと考えればコストが上がらない対策も出るはずです。

もしどうしても「チェックを強化する」という作しか無いのであれば、1つの依頼に対する価格が確実に上がるということを自分も自覚し、それを上司なり、予算を管理する人にきちんと伝えないといけません。

それをしなかったとしたら「気がつけば高コスト体質」になってしまうのです。

だから安易に「チェック強化」は受け入れないようにしましょう











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keita
チップもらったらきっとMidjourneyに課金すると思います