【映画紹介】「万引き家族」〜 那田蜘蛛山編
いまさらながらamazon primeで 是枝監督の「万引き家族」を見た。勢い余って「誰も知らない」も見たくらい面白かった・・・というか考えさせられたのでなんか書いてみる。
「万引き家族」とは?
「万引き家族」は2018年に公開された 是枝裕和の映画です。世界三大映画祭と呼ばれるカンヌ映画祭に出品され最高の賞であるパルム・ドールを獲得した名作映画です。同じくカンヌに出品され柳楽優弥が史上最年少で最優秀主演男優賞を獲った「誰も知らない」に続くようなネグレクト絡みのテーマを持った映画です。
「誰も知らない」がネグレクトされ残された兄妹が暮らしていく話なのですが「万引き家族」とは血の繋がった家族の話ではなく、全く血が繋がっていない全く他人が集まって暮らしている・・・いわば偽の家族の生活のお鼻血です。テーマを考えると「万引き家族」というタイトルはあまり適切なものではない気がします。実際に撮影中までは「声に出して呼んで」というものだったらしいです。
偽りの家族
「万引き家族」と言う言葉を聞くと犯罪に手を染めながら暮らす家族・・・という事に注目が集まりますが、テーマはぞチラの方ではありません。樹木希林さんが演じるおばあさんの家に殺人の前科のある夫婦、家出少女、夫婦が拾って(救って)きた子どもたちが狭いおばあさんの家で暮らす偽りの家族の生活とそれが終わる話です。
まぁそこそこ皆真っ当な人たちではないので、一応仕事はしているけど犯罪的なことにはそれぞれ手に染めながらも、それぞれが「貢献」して家族のようなもの「偽りの家族」を維持している様子が描かれています。
血が全く繋がっていない「偽りの家族」・・・その家族全員がそれぞれ貢献して、力を合わせて、ちょっと心が繋がってない感じだけど、でもなんか心が繋がっている、よそよそしいけど、なんだか温かい・・・少し危ないような危ういような関係、・・・なんか微妙な感じの家族の話なのです。
那田蜘蛛山の家族
「偽りの家族」といったら、最近のコンテンツの中ではTVアニメの「鬼滅の刃」の那田蜘蛛山編にある鬼の蜘蛛鬼の「累」の作り上げた鬼たちの偽りの家族の話があります。
病弱だった累が両親に愛されながら鬼舞辻無惨によって鬼にされ、両親を殺してしまった後悔の念・・・・・と言ってよいかわからないが、そんな情念から鬼たちを集め「偽りの家族」を創り上げた累の家族。
十二鬼月という圧倒的なパワーを使って、父、母、兄妹などの役割を創り上げ、ときには裏切り者を処分しながら維持してきた「偽りの家族」
「万引き家族」の家族と似ているようで似ていない「偽りの家族」・・・・そういったことが思い出されました。
「万引き家族」と「那田蜘蛛山の家族」の差
「万引き家族」と「那田蜘蛛山家族」には近似することと異なることがあります。
近似点としては
・血縁のある「本当の」家族ではない
・家族全員が「悪いこと」・・・万引きや人を喰ったりしている
異なる点
・家族を抜けることが許されるか許されないか
・圧倒的な「リーダー」の存在
・貢献に対する評価
確かに両方の家族とも普通に考えれば「悪いこと」に手を染め、それを家族の一員であるという心の拠り所にしている・・・といったことは非常に似てはいる・・・・
しかしながら「那田蜘蛛山家族」には累という圧倒的な支配者がいるのに対し「万引き家族」にはそういう存在はいない。夫婦が中心ではあるが樹木希林が演じるおばあさんとの力関係はとても微妙で、家族への貢献に対する評価もとても自主的なものだけで矯正されているわけではないのです。家出少女は家にお金を入れていないし、幼女の万引きは「気持ちだけ」の貢献でしかない。
そして家族への所属に関しても、とても緩やかなもので「居なくなっても受け入れる」といったものでしかない。帰ってこなくても。死んでしまっても・・・自分たちとは簡単に切り離します。
支配型とコミュニティ型
整理すると「那田蜘蛛山の家族」は支配型、軍隊型・・・会社組織型なのに対し「万引き家族」はコミュニティ型であるということです。コミュニティだから居なくなったらそれまでですし、家族への貢献も「出来る範囲」で受け入れています。
それぞれのメンバーが、それぞれの損得勘定や自律的な意思のもとに集まっている「家族」・・・コミュニティが「万引き家族」における「偽りの家族」なのです。
同じ「偽りの家族」でも抜けたら殺される「那田蜘蛛山の家族」とは大きく違いますね。
実際の多くの家族、婚姻と血縁で結ばれた家族・・・それにも適用して考えてみても良いのかもしれませんね。そもそも夫婦はそれぞれの自律的な意思のもとに結ばれるものですしね。
で・・・結論
・・・はありません。たいていの場合、血縁が家族ということなのであまり考えることはないのですが「本当の家族」・・・・ってなんなのか考えさせる映画でしたね・・・
結論にはなっていないですが
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