仕事って「楽しい」?〜情シス目線のプロジェクトマネージメントTips#74
世の中にプロジェクトマネジメントに関するコンテンツは非常にたくさんあるのですが、よく見てみるとどうしてもSIer目線のものが多いように思えます。SIer目線の場合だと、どうしても利害が一致しないせいか事業会社というか情報システム部門目線から見るとピンとこないものも多く、ちょっと腹落ちしないことが多くあります。
というわけで無いなら作ろうということで「情シス目線のプロジェクトマネジメント」なるものを書いてみようかと思い不定期だとは思いますがシリーズ的に書いていこうと思います。
仕事って楽しい?
仕事って楽しいですか?
この問いには様々な答えがあります。楽しいと想うかどうかも本人の背景や状況や信ずるものによって様々です。
しかし、どう想うかどうか以前に、人それぞれ異なることがあります。
それは「楽しい」という状態の定義です。これが人によって大きく異なるのです。仕事をしていく上ではこの事に注意する必要があります。
この「楽しい」は様々なものがありますが、両極端の考え方を紹介してみたいと思います。基本的にこの両極端の考え方の配分率で人の「楽しい」が定義されています。
天国のような楽しさ
ひとつは天国のような楽しさです。「楽」「快適」「心地よい」という楽しさで英語でいうと「pleasant」にあたります。
光が降り注ぐ、きれいなお花畑の中で空腹も苦痛もなく、仲間たちと、毎日談笑にふけっているような世界が「楽しい」世界なのです。
この「楽しい」の世界には辛かったり、苦しかったりすることはまったくありません。変化もなく、いつまでもいつもどおり快適な世界が続くといったものです。
これが一般的に認識されている「楽しさ」です。
「楽しい職場」といえばだいたいはこちらのほうを指しています。
地獄のような楽しさ
もうひとつは「天国のような楽しさ」の真逆にある「地獄のような楽しさ」です。「地獄」と「楽しさ」は相容れないような感じですが、わかるやすく言うと「登山のような楽しさ」です。
登山は美しい風景やきれいな空気が良いとされますが、必ず「苦しみ」が伴います。普通の登山でも坂を登らないといけないですし、トラブルが発生したり、怪我をしたり・・・さまざまな「苦しみ」が伴います。本格的な登山家なんかは落石や滑落で怪我をしたり命を落としたりするかもしれません。たとえ凍傷で足の指を失っても、また山に登る人たちまで存在します。
そういえば昔のパリ・ダカールラリーで事故で両足を骨折したライダーが担架で運ばれながら「二度とバイクになんか乗らないぞー」と行っておきながら次の年のレースに出場していた・・・というのを思い出しました。
こちらの「楽しい」は英語の「enjoyable」が近く、チャレンジする楽しさ、苦しいものを乗り越える達成感、道を切り開く充足感なんかが含まれます。
「仕事が楽しい」という人がいれば、おおよそこっちの方で、例えば「師匠は怖いけど、自分の腕が上がっていくのが実感できて楽しい」みたいな言葉はこちらの「楽しい」を指しています。
仕事は楽しくないもの?
仕事というのものはごく一部の稀な例を除いて、なんらかの競争や矛盾のもとにあります。一般的な企業で言えば他よりも優れたサービスや製品を提供し、他よりも効果的なプロモーションや営業をしなければ業績は低迷していきますし、公務員であっても国民や住民の生活を守るために、コストとサービスの質の間で板挟みになって試行錯誤をしていたりします。
そこには当然ながら「苦悩」や「辛さ」「努力」を伴うものであり、「天国のような楽しさ」とは相容れないものです。快適な職場環境〜リラックスできる仕事の空間やハラスメントのない環境は提供できるかもしれませんが、完全に「辛さ」を排除することはできません。
特に「プロジェクト」の場合は、高い目標や画期的な成果が求められている場合は達成が困難なため、より「苦しく」「辛い」ものになってしまいます。
仕事は楽しいもの?
しかしながら反対に「地獄のような楽しさ」は高い成果が求められるケースにはピッタリ当てはまります。プロジェクトの目的が間違っていない限りは「達成感」や「切り開く楽しさ」を得ることができます。
場合によっては厳しい目標であればあるほど「わくわく」するかもしれません。
しかしながら、この「地獄のような楽しさ」は少し間違えると、すぐに「地獄」になります。たとえば降りかかる課題に対して「時間」だけで解決しようとすると、すぐに「デスマーチ」になり「ブラック職場」になってしまいます。解決に対して「時間」ではなく「工夫」や「テクノロジー」や「上への説明」で対抗すればよいのですが、ついつい安易な(というかプロジェクトマネージャーにとって楽な)工数投入とか残業に走りがちになります。・・・・この差は「紙一重」だったりします。
天国と地獄のコントロール
プロジェクトマネージャーはこのへんを意識する必要があります。「天国のような楽しさ」をイメージする人にとってはプロジェクトそのものが「楽しくない」ものでしか無いですし、「地獄のような楽しさ」と感じる人にとっても「わくわく」や「達成感」と「辛さ」「苦しさ」のバランスを考えなければなりません。
特に「天国のような楽しさ」しかイメージがない人の思想を短期間で変えることはできないので「上手に使う」事が必要になってきます。「楽しさ」の解釈が違う以上、極端な話、公平に仕事を割り振ることを諦める必要があります。同じことをさせたとしても「天国のような楽しさ派」の人にはパワハラのように感じている可能性があるからです。
まぁこういうのをコントロースするの事を「楽しい」と感じないならば「地獄のような楽しさ」を理解できていないのかもしれません。