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海外営業の"リアル" 17

バングラデシュには"ラマダン(断食)"という慣習がある。

先のNoteでも綴ったが、私はラマダンの期間中のバングラデシュに出張に行った事がある。普段の出張とは勝手が違う事が多々あったので、この機会に綴りたい。

ラマダン ( 断食 ) ※は私の人生で初めての経験だった。

※ラマダンとは…
日没後のサイン ( コーランが流れる ) 後、水と食べ物を摂取する事が許される。

つまり、基本的に仕事中に飲み食いができないという事だ。この期間に出張で訪問する事は避けた方が良いが、案件の兼ね合いから訪問する事となる。

旅行者は基本的に従わなくてもよいと聞いてはいたが、今回は"ビジネス"での訪問である。そう考えると、このような状況で時間を作ってくれたお客さんを訪問するのであれば、相手を敬うという意味でも、可能な限り従ってみようと決めた。

一番辛かったのは、水が飲めない事。
私には偏頭痛があり、予防のために意識的に水分を取る事にしている。

客先では水や軽食を出してくれる事が多いのだが、目の前にはそれを制限されている方々がいる訳である。涎が出るほど水を飲みたかったが、相手に勧められても、飲まないようにした。それが彼らへのリスペクトにつながると考えた。

そんな感じでお客さんを訪問していると、丁度お昼時だろうか、代理店の担当者が突然私をホテルのロビーに連れてきた。そして、こう言われた。

"上から(マネージメントクラスから)は、滞在中あなたをもてなすように言われている。私たちの事は気にせず、頼むから水とクッキーを食べてくれ。これではあなたの身体がもたない。私たちとは違い、あなたはこの慣習に対して身体が慣れていない。気にするな。"

こう言われた後も、担当者は引き下がらない。

"わかった。でも最低お客さんの前では食べないようにしたい。"

そう伝え、水とクッキーをいただいた。
涙が出るほどに美味しい。水が飲める事がこんなにありがたい事だったとは…。

帰国後、代理店の担当者にお礼のメールを入れると、

"あの時はありがとう。あなたが私たちの慣習を尊重し、合わせようとしてくれた事に感謝している。"

と返事が来た。

その後、訪問先のPJを無事に受注できた。
私の判断は間違っていなかったと確信した。

写真は、日没後に一度だけ現地担当者と一緒に食べた晩御飯。食べ物を美味しくいただける事に改めて感謝した、そんな瞬間だった。

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