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マイ・リトル・ガール

今日僕は派遣で勤めていた会社をやめてきた。
もちろん、次は決まっている。もう嫌だからやめるだなんて選択肢を取るほど僕も馬鹿ではない。

実は最初の頃から体調を崩しがちで、それもあってか、あまり職場には馴染めずにいた。
そんな中、同じ部署の派遣の女の子、いや、年齢的には女性と呼ぶべきなのだけど、あまりの純朴さについ女の子と表現してしまうのだ。

彼女は良く働き、仕事も休まず、テキパキと作業をこなしていた。

「どうしてそんなに働けるの?」と僕が質問すると、「遊ぶためのお金が欲しいからです」と即答された。彼女は元うつ病だそうだ。あと結構なオタクでもある。それもあってか、割とお互いのことをあけすけに話すようになった。

ある日胃が痛いときに胃薬をくれたことがあって、それがとてもよく効いたもんだから、時々もらったりもしていた。彼女自身病弱で薬は常備しているらしい。もちろん僕も常備しているが、胃が痛くなることはほとんどないのでもっぱらもらうことが多いのだ。

そんな彼女のたくましさは、少なからず僕に影響を与えていたと思う。少しずつだけども、踏ん張りがきくようになってきていた。僕は本当に彼女に感謝している。僕を変えてくれた人間の一人である。

刻々と終業時間が迫る中、僕はお世話になった人たちにあいさつ回りをしていた。そして、最後に彼女のところに向かった。

どうやら事情は聞いていたらしく、辞めることは知っていたようだ。そんな彼女が最後にかけてくれた言葉は

「止まるんじゃねぇぞ…」

である。僕は大爆笑して、それと同時にオタクであることを心から嬉しく思った。
これは『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の名台詞だ。わかる人にしかわからない、そんな言葉をあえて選んでくれたのだろう。僕は本当に嬉しかった。

帰り際、彼女のことを少し考えた。うつ病を乗り越えた彼女ならきっと幸せになれると思う。そうあってほしいと願った。
そして一人になってから僕は、ちょっとだけ泣いた。

ありがとう、ありがとう、ありがとう。
そんなありきたりな言葉しか出てこないけど、それでいいんだ。こういうときはかっこつけないで感謝を述べよう。

ありがとう、リトル・ガール。
僕は止まらないよ。
 
 
 
 
 
 
※イラストはmomochyさんのサイトから拝借いたしました。ありがとうございます。

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佐々木慧太
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