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徒然日勤

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エッセイや短編小説など、徒然なるままに更新しています。
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2018年10月の記事一覧

疲れ果てた人が行くところ

疲れ果てた人が行くところ

僕は死に場所を探している。物心がついた時からずっとそうだ。我ながらロマンチックな感性をしていると思う。自殺なんて意味のないことをさも美しいことのように考え続けてきたし、いまもそうだ。まったくもってロマンチックだと思う。
生きることはとっても苦しいから、もしかしたら現実逃避としてそんなことを考えているのかもしれない。目の前の問題が困難であればあるほど死ぬことを考える。悪い癖なのだ。
それでも死ぬこと

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死への憧れ

死への憧れ

目が覚めると僕は何もない、真っ白な世界にいた。
境界線も重力もない、ただただ真っ白な世界。ここがどこなのか僕にはすぐにわかった。そう、たぶん僕は死んだのだ。
現実的に考えてこんなでたらめな世界はあり得ないし、なにより、あれだけ苦しかった気持ちがもうすっかり消えてなくなっている。

良かった。僕は心の底からそう思った。もう苦しいことはないんだ。本当に良かった。ここがどこだろうとどうでもいい。僕はいま

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空に消えるメロディ

空に消えるメロディ

その日、僕は昔組んでいたバンドのメンバーと会うことになっていた。何年ぶりに会うだろうか。バンドを組んでいたのはもう10年も前のことで、その時僕はまだ上京したての大学生だった。
夕方に代々木の居酒屋で集合だったが、その前にちょっとした打ち合わせがあって少し早めに新宿にいた僕は、時間もあることだし、歩いて代々木に向かうことにした。
そういえばバンドでスタジオに入るときは代々木のスタジオだったなと思いな

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