スカウティングの効果、実感できてますか?
タッチフットボールのプレーヤーであれば必ずやったことのある「スカウティング」ですが、やり方にコレ!といった正解はありません。
学生であればコーチや先輩に指示されてやったり、チームで代々受け継がれてきたやり方をなぞったり、独学で独自のやり方を身につけたりと千差万別だと思います。
ここでは、スカウティングで見るべきポイントを紹介しますが、そもそも準備のスポーツとも呼ばれるフットボールにおける「スカウティングの役割」についての考えも整理してみました。
説明の便宜上、「チームZ」との対戦を控えていることにします。
スカウティングのやり方
1.チームZの映像を見る。
複数試合見た方が傾向が出やすいです。この時、①Zvs他チームの直近映像、②自チームがチームZと戦った過去試合映像をチェックしましょう。特に②は大切です。なぜなら、相手も当然スカウティングして試合をしてきているはずなので、自チームにどういったプレーをしてきたか?(=どこが狙いどころと思われているか)と、プレー成否確認ができます。
・Zのプレー成功が多い →やり方を踏襲してくる可能性大
・Zのプレー失敗が多い →やり方を変えてくる可能性大
さらに試合の勝敗を掛け合わせると・・・
・Zが勝った →やり方踏襲の可能性がさらにUP
・Zが負けた →やり方を変えてくる可能性がさらにUP
よく「メンツが変わった」という話がありますが、チームで使うプレーブックはそう大きく刷新されることはないので、「使うプレー傾向が変わるだけ」と捉えておけば対処できます。
2.プレーを書き出す
基本ですね。傾向を洗い出すのが目的なので、自分が読めれば手書きでも問題ないですが、チームで共有する目的もあるならば、フォーマットを規定した方が誰がやっても同じものができるので、あとで集計しやすくなります。
<フォーマット例>
3.集計して傾向を出す
集計して、その後の傾向出しの材料とします。エクセルで数字を入力すればよいフォーマットを作っておくと楽です。
<フォーマット例>
4.傾向と特徴を分析する
ここが一番楽しいところです。Zチームを丸裸にしましょう。
見るべきポイントはいろいろありますが、その後戦略を立てるためのスカウティングなので、私は以下のポイントに絞って傾向を出したり特徴を見るようにしています。
<Zチームディフェンスのスカウティングポイント>
①DFチームとしてのストロングポイントは?
②突出した個人能力の高い選手は誰か?
③能力が低く、もしくは癖などにより狙える選手は誰か?またどういうプレーか?
④隊形毎のDFセット位置と傾向
・こちらが両ワイドのとき、ラインまわりは?CBは?
・こちらがツインのとき、ラインまわりは?CBは?
・こちらが1バックのとき、ラインまわりは?CBは?
⑤DBのカバーは?ゾーン?マンツー?3Deep?受け渡しは?
⑥シチュエーション毎のラッシュとカバー
・1st~4thで傾向はあるか?
・フィールドポジション(自陣・敵陣・G前)で傾向は?
・PATに傾向はあるか?
⑦1番自信を持っているであろうコールは?
⑧1試合を通してのDFのストーリーはあるか?
⑨自分が絡む有効なプレーは?
<Zチームオフェンスのスカウティングポイント>
①隊形毎のOFセット位置とルートの傾向
・両ワイドのとき、ラインは?WRは?
・ツインのとき、ラインは?WRは?
・1バックのとき、ラインは?RBは?WRは?
②シチュエーション毎のプレー傾向
・1st~4thで傾向はあるか?
・フィールドポジション(自陣・敵陣・G前)で傾向は?
・PATに傾向はあるか?
③QBパスが得意なエリアはどこか?
④QBとのホットラインは誰か?
⑤突出した個人能力の高い選手はいるか?
5.戦略に落とし込む
Zチームとの試合運びを意識して戦略に落とし込みます。序盤の入り方・プレー、成否による次の手・・・を、序盤〜中盤、戦況を考慮した終盤まで。
1試合をとおした戦略として準備しましょう。
スカウティングで大切なこと
・スカウティング結果は、傾向に基づいて「断言」すべき
→特にスカウティングに関わっていないプレーヤーへの伝達では、断言しないと腹落ちしてもらえません
・スカウティング結果は「絶対ではない」ので、うまくハマらない場合も想定して準備しておく
→Zチームも当然スカウティングしてきてるので、当然裏をかきにくることもあれば、試合中にアジャストしてくることも想定しておくべきです
スカウティング結果を試合で活用する
スカウティングは事前準備でしかなく、試合当日は事前情報との差異がどのくらいあるかを、試合序盤(目安は1Q)のうちに確認するものと捉えています。
オフェンス・ディフェンス各リーダーが試合に出ながら、その差異全てを把握するのは不可能なので、チームメンバーからのこまめなフィードバックが必要です。
例えばオフェンスで言えば、WRはトイメンCBがスカウティングどおりか違うのか、違うとすればどう違うのか。CはLBやSFがどうか、GはDEがどうかを、各々がプレーごとに確認し、オフェンスリーダーやQBへフィードバックして、スカウティングどおり試合運びできそうか否かを判断する。
これをスムーズにおこなうためには、スカウティング結果をチーム全員が理解している必要があります。
スカウティング結果との差異が大きい場合には、戦略を相手にアジャストしていく必要があると同時に、(試合後の振り返りで)スカウティング結果自体が正しかったのか?という疑念も持ち差異の分析をおこなうことで、必ず次回のスカウティング作業で役に立つ視点となります。
さいごに
スカウティングは必要ですが、その結果の使い方次第で、役立ち度合いが大きく変わるものだと思っています。また経験則では、スカウティング結果のまま勝ち切ることは少なく、試合の戦況を睨んだ「現場判断=アジャスト」に頼らざるをえないことが多いです。
・チーム全員にスカウティング結果を共有すること
(できればプレー書き出しは手分けして全員がスカウティング作業に携わると自分ゴト化できてよい)
・それに基づいた戦略と意図への理解度をチーム全員で揃える
試合中のアジャストはOF・DFキャプテンやQBが判断することが多いと思いますが、上記のようにチーム作りをしていくことで、試合中の戦略アジャストもハドルでのプレーコールも、その意図の伝達スピードが速まります。
ぜひ一度、試してみてください。
BOOZERS #39