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家具を探して、こだわりを見つける

2023年10月26日(木)
昼ごろ笹塚駅と代々木上原駅の近くにある、アンティークの家具屋さんに行った。けれど何も買わなかった。でもたくさんの家具を見るうちに、自分の欲しい物が少しだけ明確になってきた。私の想像のなかで、自分の部屋に関して理想が決まってきている部分と、曖昧で全然見えてこない部分とがあるのが面白い。
午後は東京国際映画祭で、ヴィム・ヴェンダース監督の短編「Somebody Comes into the Light」と、アンゲラ・シャーネレク監督の「ミュージック」を観た。後者の上映では途中退席する人が何人もいたけれど、私はとても良い時間を過ごせた。好きな映画を観終わったあと、劇場を出て外を歩く足取りがとてもゆっくりになる。身体が完全に映画の余韻に浸っている。一昨日杉田協士監督の作品を観たあとも同じだった。この束の間ぼんやりとした感覚が好き。
夕方、下北沢で昨日行けなかった家具雑貨屋をチェックした。かなり良さげな棚があり、値段も悪くなかった。今週まで悩もうと思う。

2023年10月27日(金)
ある仕事でお世話になっているプロデューサーの方に誘ってもらい、昼食を一緒に食べた。その仕事に対して、私のモチベーションが下がっているのではないかと心配されていた。そのことについて話したくて、私を今日誘ったところが大きいそうだった。この仕事を受け始めたときから今まで、特にモチベーションが上下している感覚もなかったので、心配されていたことが少し拍子抜けだった。最初からメラメラ燃えていたわけでも、嫌がっていたわけでもなく、この仕事があることでだいぶ助かっている部分のほうが多いので、単純にありがたいと思っている。
プロデューサーの彼は私よりも歳上で、経験も知識も自分より明らかに豊富だった。最初はその情報量に負けて思考停止してしまったけれど、少しずつリズムに慣れてきたのか、こちらもせっかくなので聞きたいことを少し質問できた。頼れる歳上の方が周りにいることは、本当に心強い。
午後は編集の仕事をした。撮影してからしばらく経ってしまっているけれど、ついに少しだけ形にすることができた。でもまだまだ半分。
夜にひかると合流して下高井戸でラーメンを食べた。そのままひかるの家に行き、作品の最新の編集を観て、また少し変えてみるなど制作会議。仕事を終えて深夜に飲んだビールがとても美味しかった。

2023年10月28日(土)
ひかるの家で起床。寝袋とキャンプ用のマットで寝たので、あまり眠れなかった。ひかるが朝早く出ないといけなかったので、私もその時間に合わせて駅に向かった。睡眠不足。
馬喰町にあるHYSTという家具屋さんに向かった。開店の一時間半以上前に到着したのにも関わらず、既に並んでいる人たちが三人いた。私もその隣に座り、本を読んでいた。真木悠介著『気流の鳴る音』を読み終えた。本当に読んでよかった。そして生きることについて、こんなにも上手く言語化されていることが恐ろしかった。
HYSTで目当てだった低めの本棚を購入した。そしてふたつセットのグラスに一目惚れし、悩んだ末にこれも買った。無色の濁りガラスで、飲み口の曲線が少し不規則で、手作りの陶器を思わせる。私は今まで、自分は透明でシンプルなグラスが好きなのだと思っていた。でもあの透き通ったガラスに、狂いのないまんまるな飲み口、側面の真っ直ぐさ、完璧な滑らかさがなんだかしっくりきていなかった。今日この濁ったグラスを目の前にして、自分の「好き」がより具体的になったことが嬉しかった。初めてこんなに家具をひとつひとつ吟味して選んでいる。この過程はお金も時間もかかって大変だけれど豊かだと思う。経験できて嬉しい。
久しぶりに北鎌倉に帰ってきた。本棚を家まで自力で運ぶのは本当に骨の折れる作業だった。坂道の途中で二回くらい休憩を挟んだ。両腕で精一杯本棚を抱えながら坂を登る自分の姿を想像して、なんだか笑えてきた。
さっそく部屋に本棚を置いてみると、ああ苦労してよかったと報われた気分になった。


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