第100回サッカー天皇杯 広島県社会人予選一回戦 福山シティFC vs FORTE
2020年2月16日日曜日、曇天の広島・福山市へ。広島県内では広島市に次ぐ2番目となる47万人が居住するこの都市に、赤い薔薇と蝙蝠(コウモリ)のエンブレムの旗が揺らめく。
Jリーグ参入を目指し、かつ「地域課題解決型総合クラブ」を構想し、街づくりと一体化した福山シティクラブ。そのフットボールチーム、福山シティFC代表の岡本佳大氏をはじめとしたチームスタッフ、小谷野拓夢トップチーム監督、所属選手たちは今年最初の公式戦、第100回天皇杯広島県社会人予選一回戦を前に、福山市各地での試合告知活動やメディア出演、SNS投稿を積極的に発信し、トレーニングマッチにおいては松山大学(四国大学リーグDivision 1)、松江シティFC(JFL)、広島大学(中国大学リーグDivision 1)、ガイナーレ鳥取(J3)と対戦するなど、万全の準備をして、この日を迎えた。
キックオフは13時。福山シティFC vs FORTEが始まる一時間前に来場すると、前日からの雨でピッチは泥んこ状態にあり、ボールが転がらない箇所がいくつかある。メインスタンド入り口の階段を上がったところのコンコース上では、クラブスタッフの方々がこの日の試合のポスター、広島県予選の対戦表、エンブレムシールの三点を用意し、来場される方々に配布していた。
福山シティFCサポーターの方々は、クラブが用意していた応援エリアに陣取り、キックオフを待つ。クラブエンブレムがペイントされたのぼり旗、選手のバナー、太鼓、応援チャントのプリントなど、この日から再び始まっていく福山シティクラブとの日々を心待ちにしながら、これらを作成していたことだろう。
キックオフ前に岡本代表、サポーターの方々にご挨拶しながら、キックオフまでの時間を待つ間、雨が激しく降ってきてしまった。それにも関わらず、続々と人々が会場にやってくる。福山シティFCが出場する試合だから、なのは間違いない。
雨が小降りになったころに、両チームイレブンが入場し、キックオフ前の写真撮影に入ると、福山シティFC選手たちは赤い薔薇を手にし、写真に納まった。
なぜ、福山市に薔薇なのか。【公式】福山シティフットボールクラブ Note では、薔薇は福山市民にとって馴染み深いもので、街の象徴と紹介されている。なぜなら福山市にとって薔薇は、戦後復興のシンボルだからなのだ。長崎県と同じく、人類史上初の原子爆弾投下による攻撃を受けた広島県において、平和への想いを語り継いでいくのは、自然なことのように思える。福山市は、市にとって復興の象徴である薔薇をとおしての街づくりをしており、ばら花壇コンクールやばら写真コンテストなど、各種イベントを開催している。この先ずっと、福山シティFCイレブンは薔薇を手に、写真に収まるのだろう。クラブと街のブランディングをこれほどクールに盛り込んでいくのは、画期的かつ最先端なことのように思える。
さて、ゲームの方はというと、福山シティFCのゴールショーとなった。こればかりは両チームの、サッカーをする目的の違い、としか言いようがない。続々と失点していくFORTEの選手たちはそれでも、スライディングでボールを奪いにいって泥だらけになって戦う姿勢をみせ、この日のフットボールをプレーしていた。
後半はゲームの方はわき見し、福山シティFCがこの天皇杯予選でどこが鬼門になるのかを調べてみた。配布されたトーナメント表を辿っていくと、勝ち進んでいけば準決勝で、昨季の天皇杯広島県代表を掛けた決勝戦で福山シティFC相手に出場権を勝ち取った、SRC広島と相対するようだ。
SRC広島は2012年に中国リーグへ昇格し、2016年には広島県代表として天皇杯に初出場。2017年の天皇杯では二回戦に進出し、名古屋グランパスと対戦した。クラブの方針は、まずはサッカーを中心とし、将来的には総合型スポーツクラブとなること、そしてJFL参入を目指している。
14-0で終わったゲーム後、福山シティFCの選手たちはサポーターが待つスタンドに向かい、交流イベントとしてウィニングハイタッチ、サイン会、写真撮影を行い、サポーターの方々と触れ合った。観客動員は500人を目標としていたが、この日は300人超の来場にとどまった。しかし、悪天候でまだ予選一回戦なのだから、まだまだ観客数が増えるのは間違いないだろう。
福山シティFC、そしてサポーターの方々は、今後さらに多くの人々をどのように巻き込んでいくのだろうか。次の取材日、スタンドはいったいどんな光景がみられるのか、心待ちにしたい。
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