Fusicロゴリニューアルまでの150日間
2024年4月1日、コーポレートブランディングの一環として、Fusicのあるべき姿の基点となる新しいコーポレートロゴを発表しました。創業以来、初めてのリニューアルとなります。
今回のロゴリニューアルにあたり、提案から発表までのプロセス、ロゴに込めた想いについてじっくりお話ししたいと思います。
実は、自分の制作物についてあれこれ語るのはこれが初めてです笑
ロゴリニューアルの背景
Fusicは、2003年の創業以来、強みとしている新しいテクノロジーを活用した技術力と提案力を駆使し、お客さまへの提供価値を最大化することを目指して日々邁進しています。
今回、FusicのMission(存在意義)である『人に多様な道を 世の中に爪跡を』と、Vision(あるべき姿)である『個性をかき集めて、驚きの角度から世の中をアップデートしつづける。』の実現、そして、創業からこれまでの変化を反映した新たなブランドイメージの構築に向けて、“Fusicらしさ”と“これからのFusic”を表現すべくコーポレートロゴを刷新することになりました。
企業ロゴの役割とリニューアルの必要性
第一に取り掛かったことは、企業にとってのロゴの重要性とその役割について資料にまとめ、変更の必要性を認識してもらうことでした。
ロゴは企業の象徴であり、企業そのものを凝縮したものです。ロゴマークは単なる視覚要素以上の役割を持ち、それを見る人にFusicのイメージを強く印象付ける重要な要素でもあります。
創業以来使われてきたロゴは、社名のロゴタイプをメインに、それまでのコーポレートカラーでもある赤と黒の配色で構成されており、この20年間で、『Fusic=赤×黒』というイメージを世の中に根付かせた貴重な存在でもありました。また、私にとっても、Fusicは前職から20年近く付き合いがあった会社なので、非常に愛着のあるロゴのひとつでした。
その一方で、FusicのMission(存在意義)やVision(あるべき姿)との整合性に課題があったり、構成されている線が細いために他の企業のロゴと並んだ時に埋もれてしまったりと、視認性の部分でも大きな課題がありました。
企業や時代の変化に伴い、ロゴも変化するものです。
Fusicが発するすべてのトーンを揃え、デザインひとつひとつを経営資源として活用していくために、まずは、“Fusicらしさ”を凝縮したロゴを刷新し、そこをすべての基点にしていきたいということを伝えました。
大切なのは、会社が伝えたいメッセージや想いと、ロゴに込められたメッセージのピントを揃えること。そして、それがコンパスとなり全員が同じ方向を向くことが理想です。
ロゴを変えることでのメリットは以下のようなものがあります。
・一貫した『Fusicらしさ』を伝えやすくなる
・コンセプトが明確になることで会社と社員が同じ方向を向くことができる
・企業の新たな姿勢やビジョンを改めてPRできる
・社内ツールやグッズが一新されることで社員のモチベーションも上がる
せっかくならみんなに愛されるロゴにしたいし、この先20年は残るロゴにしたいと思っています。
企業イメージの整理としてムードボードを作成
次に行ったのは、漠然としていた会社のイメージを改めて整理することでした。
なんとなく会社のイメージや雰囲気は把握しているものの、いざ、それを言語化しようとするとなかなか難しいものです。
そこで、社内にいる2人のデザイナーにも協力してもらい、ムードボードとして会社のイメージをまとめることにしました。ムードボードとは、言葉が持つ雰囲気やイメージを、写真や色、テクスチャなどで視覚的にわかりやすく表現したものです。
FusicのMission(存在意義)である『人に多様な道を 世の中に爪跡を』と、Vision(あるべき姿)である『個性をかき集めて、驚きの角度から世の中をアップデートしつづける。』を、ロゴに落とし込む上で再解釈し、方向性を整理したムードボードをデザイナー3人で持ち寄ってディスカッションを行いました。
驚いたのが、それぞれ数案ずつイメージを持ってきたのですが、その方向性がどれもほぼ一致していたことでした。これは、デザイナー3人が感じ、思い描いているFusicの印象にズレがないことの証拠でした。
最終的に、Fusicを象徴するイメージとして3つのムードボードにまとめました。
MOOD BOARD 01 『心に刺さる、歴史に突き刺す』
MOOD BOARD 02 『最高のユーモアと情熱を』
MOOD BOARD 03 『世の中に驚きと彩りを』
MOOD BOARD 01は最もMissionのニュアンスに近しいもの、MOOD BOARD 02は外から見たFusicでもあり会社全体の熱意を表すもの、MOOD BOARD 03は中から見たありのままのFusicの姿。Fusicなんです。ムードボードにまとめることによって会社のイメージが整理でき、綺麗に言語化できたと思います。
そして、ここからは、それぞれのムードボードに準じてロゴをデザインしたというよりは、これらを踏まえて、ニュアンスを落とし込みながらロゴを設計していきました。
100案以上のラフデザインから方向性を整理
整理した会社のイメージをもとに、ひたすらスケッチブックにラフデザインを描いていきました。この段階では、ひとつひとつの形やディテールにこだわるというよりは、多くの方向性を探り、見つけ出し、意味と繋げていく作業となります。
いよいよロゴメイキング
ラフデザインが一通り描き上がったら、言語化した会社のイメージとそれぞれの形の意味を照らし合わせながらざっくりとグルーピングし、実際に形に落とし込む作業に入りました。
ロゴのデザイン過程については、デザイナーによって色々な進め方があるかと思いますが、私の場合は、ロゴを形にしていく際、色によるイメージのブレを極力無くすため、いつもモノクロで形作ってフォルムにフォーカスすることを心がけています。
コンセプトと方向性が見えてきたら、細かいディテールを詰めていきます。具体的には、オブジェクトの形や大きさ、強弱、角度、配置など、さまざまなパターンを検証しながらそこに意味を込めていきます。
今回、Fusicというロゴタイプ*もゼロからオリジナルで作成しました。こだわったポイントとしては、20年は残り続けるロゴにしたいという思いがあり、オーソドックスでシンプルな印象、堂々と構えた佇まい、他社のロゴと並んだ際も際立つ視認性、これらがロゴタイプ単独で使用する際も成立するように、ウエイトや輪郭を整えていきました。
最後に配色については、ムードボードをまとめた時点で3つの方向性に対するそれぞれのカラーがある程度絞られていたので、そのカラーリングを各デザインに充てながら検討していきました。
*ロゴタイプ:ロゴのうち、文字部分のこと。図形部分はロゴマークと呼ぶ。
いざ社内プレゼン
2023年12月某日、10月末から進めてきたロゴプロジェクトは、企業イメージの言語化から設計、デザインを経て、最初のプレゼンを行いました。自分が所属する会社ではありますが、上場企業のロゴを変えるという責任あるプロジェクトに、かなりドキドキしながらプレゼンしたのを覚えています笑
提案した5つのロゴデザイン。
最初のプレゼンでは、会社のイメージを整理し言語化したムードボードの説明、そこから発散したラフデザイン、そして形に落とし込んだ5つのデザインとそれぞれのコンセプトという流れでプロセスに応じてストーリーをしっかり伝えました。
この5案の中から、参加メンバー12名が一人2票づつ投票を行いました。
結果はA案が最も票が多く、続いてD案、B案、E案という結果でした。
この結果は、私が自分の中で推していた案と一致しており、お互いの認識のズレがなかったことの証でもあるので、非常に嬉しく安心した結果でもありました。
票数の多かったA案とD案、そしてもう少し練ったらうまく化けそうなB案の3つについて、ブラッシュアップを加えた上で、再度提案することになりました。
ブラッシュアップと検証
再提案する3つのデザインにおいて、フォルムの細かい部分を調整した上で、大きさ、バランス、配置、配色について、以下の検証を行いました。
・ロゴタイプに対するシンボルマークの大きさの検証
・横組みロゴにおけるシンボルマークとロゴタイプの配置検証
・縦組みロゴにおけるシンボルマークとロゴタイプの配置検証
・コンセプトに対する配色の検証
ロゴタイプも細かい部分を調整していきました。最終調整版では、親しみを表現するための丸みを排除してソリッドにし、『s』と『c』の上下の曲線を滑らかに調整したり、『s』のボリュームを他の小文字と合わせたり、『F』の上から2番目の横棒を若干下に落として小文字とのバランスをとったりと、細かい部分に調整を加えました。
最終的に調整した3つのデザインがこちら。
ついにデザイン決定
そして、2024年1月に2回目のプレゼンを行いました。
ブラッシュアップと検証を重ねた3つのデザインを再提案し、満場一致で決まったのがこちらのデザインです。
新しいロゴデザインのコンセプトは、社名の頭文字であるFをベースに、私たちが世の中に残す『爪跡』、そして未来に向かって突き進んでいく様子を表現しています。
二つの飛行体は、テクノロジーの力で成功を目指すお客様と、そのために伴走するFusicの姿でもあります。飛行体の胴体の角度は2003年創業、2023年上場の沿革に基づいて23度とし、「驚きの角度」にちなんだ遊び心を加えました。
コーポレートカラーは、『Fusic Red』と『Fusic Blue』を採用。これまでのFusicの揺るぎないアイデンティティを赤で、未来そして新たな領域に挑戦し続ける姿を青で表現しています。
そして、コーポレートサイトや採用サイト、名刺、各種資料テンプレートの刷新など、実に60を超える媒体の刷新を行い、2024年4月1日、無事に発表することが出来ました。
ちなみに、『ふ』のロゴもセカンダリーロゴとして採用になりました!
今後の海外進出も視野に入れ、“made in japan”として敢えて平仮名をモチーフにしたシンボルマーク。主に、イベントやノベルティ、SNSなどで使用するロゴになります。
最後に
今回、ロゴをデザインする前段として、企業イメージを改めて整理できたことが大きかったのではないかと思っています。整理することで、Mission、Visionと照らし合わせた方向性が自ずと見えていき、ロゴのコンセプトに繋がっていきました。
そして、ロゴは作って終わりではなく、それが認知浸透し、信頼される証になるまで育てていかなければいけません。そのためには、ロゴを使用する際に一貫性を持たせ、企業ブランドの適切なイメージを効率的に構築し、世の中に正しく届けていく必要があります。
そのために、共通認識のもと間違った使い方をしないためのロゴに関するガイドラインを作成し、社内に展開しました。
この新しいロゴは、まだまだスタート地点に立ったばかり。
みなさんに当社の思いが届き、広く愛され、親しまれるロゴになりますように。