Book114『バッタを倒しにアフリカに』前野ウルド浩太郎
バッタの研究のため、単身モーリタニアに渡る研究者の奮闘記。
言葉も通じず、初めは協力者もいない中で自然という最もアンコントローラブルな存在に立ち向かう作者のタフネスがすごい。そして、少ないチャンス、資金の中で満を期して行った現地調査でも全くバッタが現れないなど、苦境が続く中でも常にちょっとした工夫を楽しみ続ける姿が印象的。
彼の『バッタに食べられたい』という突き抜けた願望をもとに、バッタの生態研究に繋げそれをアフリカのバッタ被害の対策に活かす。このように個人の気持ち、いわば偏愛を突き詰めることでやがて人を巻き込み、一歩でも社会の前進にも繋がっていく。
人間の趣向は千差万別だし、こういった全く異なる偏愛の数々が社会を様々なベクトルで発展させる。今の推し活ブームがアーティストなどポップカルチャー界隈だけでなく、それ以外も含めて自分の『推し』の対象を意識し、多くの人の異なる『推し』を尊重し合える雰囲気が日本でも定着することを期待したい。
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