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戦略とは「目標、現状、課題、打ち手」【マーケティング魂~事業グロースの処方箋~ #3】

ということで第3回、やっと具体的な戦略策定の話に入っていきます。
前回の記事では事業戦略を作れる組織の前提条件について書きました。
今回は、どんな手順で戦略を作っていくかを書いていきたいと思います。


はじめに

今回あつかう範囲

先に宣言しておくと、今回は「戦略の作り方の基礎」を書きます。

事業組織の戦略とは、おおよそ以下のレイヤーで分かれています。


事業戦略≧マーケティング戦略>部門戦略>部署戦略>チーム(課)戦略>個人戦略


事業戦略を実現するために作られているのが会社組織なので、
上位の戦略にしたがって従属部門の戦略が作られていくわけです。
(従属部門の戦略は、上位部門からみると”戦術”にあたります)

つまり、戦略は経営層だけが作れれば良いものではなく、組織の誰もが作れることが理想です。
よって、いきなり上位の戦略について書くのではなく、基礎から順に説明していこうと考えたわけです。

※ちなみに昨今では、事業戦略とマーケティング戦略は同一視されることも増えています。
ただ、マーケティング戦略というだけに、策定には最低限のマーケティングスキルを必要とします。
よって一般的に事業戦略よりはマーケティング戦略のほうが粒度が細かくなるため、ここでは事業戦略を上位として定義しています。

戦略>作戦>戦術>戦闘

事業の現場では、「戦略」とか「企画」とかいった言葉が飛び交います。
ただ、ホンマにみんな言葉の意味わかってる?という現場にしばしば遭遇します。

言葉の定義が違うので、話が進まない

言葉の定義がそろっていないと、アウトプットがそろいません。
例えば上記の例だと、要するに上司はExcelの数字をよこせと言っており、
部下は何をすればいいかわからないという状況になっています。

  • 戦略:目的設定にもとづく課題解決方針

  • 作戦:戦略を実現するおおまかな手段の計画(=企画)

  • 戦術:作戦を実現する具体的な手段の計画

  • 戦闘:計画にもとづくアクション(=手段の実行)

こういう構造を認識していないと、会議でも各自が全然ちがう目線で会話しちゃうわけですね。
「今日は戦略の話?企画の話?」と、最初に会議参加者の目線を合わせておけば、有意義な会議になりやすいです。

※余談ですが、昔流行った「ブルーオーシャン戦略」とかは、本来は「ブルーオーシャン作戦」って呼んだほうが適切だろうなって思います

戦略とは何か

目的→目標→現状→課題→打ち手

さて、戦略とは何か。

わかりやすく図にすると以下のようになります。

ただ、「戦略ってなんすか?」って聞かれたとき、いちいちここまで説明しているのはだいぶ手間です。
課題解決=戦略目的達成という構造になるわけなので、ひとことでいえば「課題解決方針のことやで」というのがシンプルかと思います。

この構造で理解しておくと何がいいのか?
一言で言えば、打ち手の実行にリソースを集中できるようになります。
アクションがそのまま目的達成まで一気通貫でつながっているため、他の打ち手にリソースを割く必要がなくなるわけですね。

「余計なリソースを割かず、目的達成のために集中できる」
戦略を作る意義とは、これに尽きると思います。

戦略がうまく作れないケース

戦略の定義が上記であれば、「戦略が作れないケース」というのはおおよそ以下になります。


  1. 目的や目標が定まらない

  2. 現状が適切に分析できない

  3. 納得できる課題設定にならない

    • よってKSFが設定できない

  4. 打ち手が見つからない


1.目的や目標が定まらない

組織が一体となって納得できるような目的や目標を定めるのは、結構大変です。
仮にインサイドセールスの戦略を作るとして、「前年比2倍のアポ設定にしよう!」と掲げたとします。

そうすると、「有効な商談じゃなくても送客していいの?」「人件費も2倍にしていいの?」といった疑問が浮かんできます。
通常はそんな単純な話でもないので、「有効商談の比率はキープしたまま、人件費も1.5倍に抑えて実現したい」みたいな話が出てきます。

そうなると、「アポ設定数2倍」という目標設定自体に意味がなくなります。
この例で言うと、適切な目標は「有効商談創出CPAを3分の2に改善&人員1.5倍」といったあたりでしょうか。
これなら、目標達成したら自然とアポが2倍になっています。

こんな感じで、目的に応じた適切な目標を設定する必要があります。

2.現状が適切に分析できない

これは超頻出ケースです。比較的、規模が大きくなってきた事業に起こりがちですが、30人程度のスタートアップなどでも観測されます。

多くのばあい、創業CEOなど強力なリーダーシップで率いられてきた組織が、
新たなフェーズの戦略を描こうとするさいに陥ります。

小さな組織においては現状把握の難易度が低いため、リーダーの勘と経験だけでも必要な現状把握ができます。
これが大きくなってくると、一気に難しくなってきます。

そうなると、社内に現状を正確に把握している人が不在になり、
結果、戦略の議論をしていても、なにも進まなくなります。

現状把握なくして戦略なし

しかしながら、現状を正しく把握すること自体にスキルが必要です。
市場調査や社内数字の分析を通じて、事実を整理する必要があるからです。

そのスキルや経験が社内になければ、早々に外部の力を借りる必要があります。
自前主義にこだわっていると、それだけ時間を浪費してしまうため、早めにジャッジしなければなりません。

3.納得できる課題設定にならない

いちばん難しいのが、課題設定です。
本来は、現状分析さえ適切なら課題設定に手こずることはあまりありません。

ただ、現状分析が適切ではないケースが多いのです。

例えば「YoY150%成長する戦略」を綿密に作り上げたとします。
それはとてもロジカルで、経営層は成功を信じて疑わなかったとします。

しかし、3か月後に戦略の転換を迫られます。
理由は「戦略を実行できる人材が不足している」ことが判明したためです。

こんなふうに、人材ケイパビリティの評価はかなり甘くなりがちです。
適切でない人材を責任者にする前提で戦略を作ってしまうのです。

「戦略を実現できる責任者がいない」というのが課題の本質だった…というケースは非常によく見かけます。
適切な現状分析にはスキルと経験を必要とするため、社外取締役や顧問、外部スペシャリストなどに上手く頼りながら進めることをおススメします。

ちなみに、他によくある課題設定のミスは
・「社員の士気向上」など、因果関係の証明や計測が困難な設定をする
・「オフィスが散らかっている」「挨拶しない」など、”問題”と”課題”を取り違える

などがあります。

4.打ち手が見つからない

普通によくあるケースです。
前述のインサイドセールスの例でいうと、「どうやってCPAを3分の2にするの?」というところで止まってしまうといったケースですね。

これはもう、できる人に頼るしかありません。
ひたすら採用するか、外部プロフェッショナルに頼るかといった判断をすべきです。

一つ言えるとすれば、徹底的にリファレンスを確認すべきということです。
特にプロモーション領域だと、情報格差があるために不適切な採用やパートナー選定をしてしまうことも多いです。

観測範囲では

・TVCMを20年以上やってきました!
 →ただのメディア折衝しかやってなく、自身で設計したTVCMで事業貢献したことはない

・大手メディアの集客を2倍にしました!
 →実はデジタル広告運用をしていただけで、伸びた理由は別の人がやったTVCM

・新規事業開発経験が豊富です!
 →立ち上げはしたが、利益貢献はしたことがない

こんなケースがありました。
大事なのは、責任者として事業成果を生んだ経験があるかどうかです。
そのリファレンスが取れないなら、その人に頼るのはやめましょう。

さあ、戦略を作ってみよう

ということで、今回は戦略とは何かについてを整理しました。

次回以降はより具体的な、現状分析のやり方などを書いていこうと思います。
KSFとはなんなのか…といった、本記事では省略した話も随時補完していきます。

ただ、何事も”習うより慣れよ”です。
この記事を読んでくれた方で、戦略を作ったことがない方は、
まず自分で「目的、目標、現状、課題とKSF、打ち手」を整理してみることをおススメします。

いざ着手してみると、上手く言語化できなかったり、
何を決めればいいのかがわからないという部分が見えてくるはずです。

そのうえで次回以降の記事を見ていただけると、戦略策定の進め方がよりリアリティをもって理解できるはずです。

今回は以上です。

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三浦 慶介 | マーケティングと事業戦略
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