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事業戦略を作れる組織になっているか?という話【マーケティング魂~事業グロースの処方箋~ #2】


さて、前回から気合をいれて連載を開始しました。

今回からはいよいよ具体的な事業グロースの知見やケーススタディの話をしていきたいと思います。
が、事業戦略の作り方の話をするまえに、「いま事業戦略を作っていいんだっけ?」という話をしていきたいと思います。

事業戦略が作れないケースあるある

さて、事業を成長させるためには戦略が重要ですが、「事業戦略が作れない…!」というケースはたくさん見てきました。

これにはいくつかのパターンがあり、だいたい以下に分類できると思います。


【事業戦略が作れないケース】

  1. そもそも”事業戦略とは”の定義がない

  2. 経営幹部の仲が悪く、まともな議論ができていない

  3. CEOと他CXOの能力差が大きすぎて、認識がすり合わない

  4. CXOふくめ、戦略を作れる人がいない


身もふたもない書き方ですが、順を追って説明していきます。

1.そもそも”事業戦略とは”の定義がない

はい、これ期末テストに出るやつです。
かなり頻出ケースだと思われます。

戦略を作りたいと言われたときは、まず「戦略って、どんなアウトプットを想定されてますか?」と訊くようにしています。
すると、よくあるケースだと、

「XXという方向に事業を持っていきたいので、その具体策」
「YoY150%成長するためのプラン作り」

みたいな答えが返ってきます。
が、これって戦略じゃなく”企画”や”戦術”の話なんですよね。

前回の記事でも書きましたが、戦略とは「目的達成方針」です。
上記のような定義だと、すでに目的や目標が決まっている状態です。

が、良い戦略とは「目的の見直し」から始まります。
※以下は過去記事

例えば
「XXという方針は、本当に事業成長にとって最適な方針なのか?」
「150%成長のために、どこまでのリスクを負う覚悟があるのか?」
といった問いをする必要があるんですね。

もちろん、事前に相当に揉んだうえでの目的・目標ならば良いですが、
割と多くのばあい、CEOやCXOの「お気持ち」だったりします。
例えば「目標は達成したいが、組織の変化は急ぎたくない」みたいなどっちつかずのパターンですね。

目的・目標設定にメスを入れられないのであれば、戦略は作れないんです。

もちろん投資家との約束などで、どうしても目標を変えられないケースがあることも重々承知しています。
ただ、その現実性もふくめて可視化すること自体が、戦略の意義なわけです。

処方箋としては、「戦略とは何かを、ちゃんと理解する」になります。
※戦略とは…という話は次回以降で書く予定です

2.経営幹部の仲が悪く、まともな議論ができていない

また直球ですが、これも各所で観測されます。
「仲が悪い」というと抽象的ですが、具体的にいえば

  • 対面の会話量が少なく、議論が浅い

  • 各自の利害を超えて事業の話ができる関係性がない

  • 営業と開発がディスりあっており建設的な議論ができない

といったケースです。

特にスタートアップなどは、異なる文化的背景の人材が集まることが多いため、経営陣の距離感も微妙になるケースが見られます。
CEOが他の経営陣より年下だったりすると、上手くまとめるのにも一苦労でしょう。

ただ、この状況で戦略を作ろうとしても、各自の向いている方向がバラバラで、経営陣で納得できる戦略にはなりません。

有効な処方箋としては、「誰かが経営陣の潤滑油になる」です。
1vs1で各自が腹を割った会話をするのは難しいので、誰かが各自の間をとりもち、関係性を改善していくことから始めるのが良いと思います。

幹部の仲裁をする人はめちゃくちゃ大事

3.CEOと他CXOの能力差が大きすぎて、認識がすり合わない

またド直球です。
これは、「CEO>>>CXO」も「CEO<<<CXO」もどちらのパターンもあります。
(もちろんCXO間の差もありますが割愛)

■CEO>>>CXOのパターン
CEOの優秀さに他のCXOがついてこれないケースです。
例えばCEOが営業に自身ニキで、組織拡大にともないCROに権限移譲をしたものの、
営業に対する解像度が違いすぎて、CEOからみると「CROの営業戦略が凡庸すぎる」といったケースです。

CEOの優秀さとは書きましたが、経営メンバーの採用ないし組織設計には失敗しているケースとも言えます。

■CEO<<<CXOのパターン
上記と逆のパターンです。
チャーム力はあるがハードスキル弱めなCEOが、ハードスキルの高いCXOを採用した場合などに起こりがちです。

このパターンだと、CEOがビジョンを語り、CXOもヤル気になるものの、
ビジョンに具体性がなく組織が空転していくということが起こります。

観測した範囲ですが、これはCEOが「専門領域を理解できる程度まで勉強する」という姿勢がない場合に起こりがちです。
例えばITはCTOに任せてるから、ファイナンスはCFOに任せてるから、わからなくても大丈夫というスタンスのケースですね。

こういうときCXOは自分の意見がどんどん通るので最初は楽しいのですが、
組織の成熟とともに歪みを認知していきます。

具体例としては、以下のようなことが起こります。
(架空の例ですよ)

  • CFOが、CROにもらったKPIをもとに予算を作ったが、実情を伴っていなく計画自体に意味がないことに(多くは時間が経ってから)気づく

  • 同じくCTOにもらった予算で管理していたが、開発のアウトカムが全然ついてこない

  • この状況を役員会で提起しても、CEOが判断できないので何も進まない

    • CROやCTOがワークしていないこと自体をジャッジできないため、経営体制の刷新に踏み切れない

こうなると、組織としては詰みの一歩手前です。
こうならないためにも、CEOがちゃんと勉強し、適切な判断ができるように成長することが重要です。

4.CXOふくめ、戦略を作れる人がいない

最後のパターンはこちらです。
1の「戦略の定義がない」にも似ていますが、有効な戦略を作れる人がいないというケースです。

前提としてCXO採用では、募集要項に「戦略を作れる人」と記載しているのが一般的です。
にもかかわらず、このパターンもよく見かけます。

理由は色々ありますが、代表的なのは「”戦略を作った経験”の認識違い」です。
CXOとは事業グロースをする幹部なので、当然ながら「事業グロースに貢献した経験」が必要です。
しかしながら、その経験がない人を採用しているケースは非常によく見かけます。

・例:CMOは広告代理店出身のエース
 →実は宣伝戦略しか作ったことがない
・例:CROは大手メディアの営業マネージャー出身
 →部署の達成プランしか作ったことがない

といったケースですね。
もちろん、上記のキャリア自体がNGというわけではなく、前職の経験は事業グロース経験と呼べるの?という論点です。

こういう場合、戦略を担ったとしても、”単なる数字合わせ”に留まることが非常に多いです。

戦略策定を担うCXOは、大きな仕事にかかわったかどうかではなく、
小さくとも事業グロースを担った経験があるかのほうがよっぽど重要というのが、いろんな痛みを味わっての経験則です。

(…にもかかわらず、スタートアップ幹部への転職を大手企業にいた人間の特権みたいに勘違いしている人ざ…おっと誰か来たようだ)

解決のカギは「第三者」

長々と書いてきましたが、これらの問題を解決しなければ前に進めません。

おススメの処方箋は「第三者のもとで意見をまとめる」です。

頼れる社外取締役や顧問がいれば、その人に相談するのがいいですし、
経営陣のなかで、中立の立場の人がまとめていくのでもいいと思います。

私自身、何回か経営メンバーの戦略策定ファシリテーションをしてきましたが、
メンバー同士で向かい合って話すよりも、本音が引き出せたり、現状認識のギャップが簡単に埋まったりします。

ただし、ファシリテーションを任せる人材については、シビアな見極めが必要です。
事業グロース経験や戦略策定能力がない人がファシリをしても、平凡な議論にしかならず、かえって経営陣の溝が深まることすらあります。
依頼しやすい人に依頼するのではなく、本気で適任者に相談することをおススメします。
(私も依頼があれば引き受けていたりします)

ということで、今回は事業戦略を作る前段階の話を書きました。
次回は、「じゃあ事業戦略って何をすればいいのよ」といった話を書きたいと思っています。

今回は以上です。

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三浦 慶介 | マーケティングと事業戦略
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