手段に頼りすぎている人たちが多すぎる。マーケティングの根本に立ち戻ろう。
マーケティングリサーチという職業に携わっているからだろうか、消費者の実態やインサイトを理解しないままのマーケティング戦略に違和感を感じてしまいやすい。事実、広告宣伝を主たる生業とする友人や知人に話を聞いても、ターゲット設定やペルソナ設定、ニーズの把握が曖昧なまま手段に頼ったマーケティング施策を行おうとする企業は多いと話を聞くことが多い。
今回の記事では、なぜ手段に頼ることがNGなのかについて語ってみようと思う。
何故、手法に頼ってしまうのか?
なぜ、多くのマーケティング担当者が手法に頼ってしまいがちなのか。
理由は恐らく単純で、広告をいくら打てば、いくらくらい売れると分かりやすく結果に出ると信じているからだ。
費用が際限なくあるのであれば問題ないだろうが、そんな企業はどこにも存在しないはずだ。限られた費用の中で最大限の効果を出すことを求められる。そのためには、ターゲットを明確にし、ターゲットに伝える価値を明確にし、ターゲットが出没しそうなエリアに絞った広告宣伝活動を行う必要がある。
にも関らず、ターゲット理解を疎かにしてしまう。
Baidu担当者と話をしたときにこのように話していたことを覚えている。
「クライアントが何の調査もせずに、広告を行いたいといってくることがある。しかし、そのような状況では適切な広告提案ができるはずもなく、困ることが多い」
その通りだ。マーケティングとは消費者を理解し、顧客起点でモノ・サービスを売っていくための仕組みづくりである。
消費者理解をすっ飛ばしてマーケティングを語ることはできないはずだ。
もう一つ、手法に頼ってしまう理由がある。
それは、人は目新しい広告手法があったり、旬な手法があるとついやってみたくなる。
例えば、中国で流行りの「ライブコマース」もその一つだろう。なぜライブコマースをするのかということをブランディング観点で説得力を持って話すことができるだろうか。
売上だけを追い求めていけば、必ずどこかに弊害が生じる。
手法を選ぶ際にはブランディングの観点も重要であることを忘れてはならない。
手段に頼ると前に進んでいる気になれるが、それはあくまでも短期的なものであり、中長期的には必ずダメージがあるといっていいだろう。
マーケティング戦略を考えるときには振返りができるように
マーケティング戦略を考える際には、必ず振返りができるようにしておくべきである。振返るためには、一つ一つの施策に対して、明確な理由が必要となる。簡単な文章で例を表すとすると以下のようになる。
この場所でこの内容の広告を行う理由は、現在我々が直面している市場環境が○○で、本来狙いたいターゲットが××であるのに対し、現状は▲▲のターゲットに購入されている。だから、本来のターゲット××に振り向いてもらうために、彼らが良く利用する◆◆の場所を重点とした広告実施する。
××ターゲットの弊社ブランドに対するイメージは■■であり、ギャップが生じてしまっているので、そのギャップを埋めるために★★の方向性でコンテンツを決める。
これらの施策を実行したうえで、何が上手くいって、何が上手くいかなかったのかを振返れるようにしておく必要があるということだ。
手法だけに頼った戦略をとると、この手法はだめだったから次はあれ、今度はコレを。のように堂々巡りになってしまう恐れがある。
日本ならまだしも、海外マーケティングでは命とり
手法に頼るマーケティングは日本国内のマーケティングなら、いくらか許されるかもしれない。それは、単一民族国家であり、日本人がマーケティングをする上では、日本人のことはある程度分かっているという前提があるからだ。
しかし、海外のマーケティングとなると、海外の人のことは日本人には到底分かりっこない。だからこそ、消費者理解はとても大切である。
まとめ
今回話したことは基本中の基本であるが、できていないケースを散見すことが多い気がする。消費者に聞いてもマーケティングの答えは出てこないから、マーケティングリサーチはしない。という論者もいるようだが、あなたがスティーブ・ジョブズでもない限り、多様化するマーケットニーズの中であなたの商品やサービスを選んでもらえるだけのスーパーアイディアを出せるはずがない。
マーケティングとは消費者の声を聴くところからスタートすべきである。仮説検証のプロセスを回していく中で、マーケット理解を深め、より良いマーケティング戦略を作っていくことができると筆者は信じている。
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明路市场调查(上海)有限公司
営業経理 長谷川 恵介
k_hasegawa@macromill.com
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