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個人投資家の円売り圧力は実は大したことない?

今年から新NISAが始まったことがきっかけで、個人投資家の海外投資が一段と加速され、円が年間で2兆円程度かさ増しして売られるので円安圧力になるのでは?というようなニュースをいくつか見かけましたが、個人的にはあまり気にする必要はないと思います。

2兆円という額を考えると確かに直感的には大きいとは思いますが、全体で考えるとそうでもないとも思えます。BIS(Bank for International Settlements、国際決済銀行)の3年に一度行われる外国為替取引高調査によると、年を追うごとに取引額は増加していて、2022年4月の時点での諸々の為替取引を含めた額は1日あたり7.5兆ドル分(約1110兆円、1ドル=148円計算)に膨れ上がっているようです。

BISのOTC foreign exchange turnover in April 2022より

ドル円単独の通貨ペアの取引割合は2022年4月の時点で全体の13.5%なので、単純計算なら1日に約150兆円分もの取引が行われていることになります。

BISのOTC foreign exchange turnover in April 2022より

もちろんこの表からは円が売られているのか、買われているのかはわかりませんが、年間数兆円規模の取引が増加しようが減少しようが、簡単に消化できる層の厚さというか流動性は十二分に担保されていると思うので、個人的には、その時々の思惑で目ざとく動く大口の投資家勢等がこぞってそれらの流れに乗ってこない限りは、為替変動の一因だとしてもそれらの取引が圧力と言えるほどの力を持っているかどうかには割りと懐疑的です。大口の投資家勢とは、例えばいわゆるシカゴ筋と言われるようなFX取引等では割りと知られている存在のことを指します。

シカゴ筋(特にNon-Commercial)は、現状では毎週約3兆円規模の日本円の取引(建玉)を維持している。CFTC資料より

また、普通に考えるとどこかの時点で日本勢の個人の外貨資産は円資産に戻されるはずなので、円から外貨にした時点で将来的な円買いの一因となります。あと、半期ごとや1年ごと等に配当や分配金を受け取る方式ならその分はその都度外貨から円に換金されるので、地味な円買いの一因と言えるかもしれません。
☆了☆

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