選挙と魔族についての序章
魔族の投票権がついにこの国に実現するかもしれない。吸血鬼のイーサンはSNSを通じた友人である『ねむたいこぐま』を誘って、数百年ぶりに町に下りることにした。
一
東大通りから外れた細道を曲がって少し行くと、吸血鬼の棲家があるという。
十月の終わり、一人の影がその噂の細道に長く伸びていた。
肩より少し下ほどの長さだろうか、黒髪を無造作に後ろでまとめている。顎はほそく、切れ長の目は柳のように弧を描いて、穏やかそうにも油断ならないようにも見える。全国展開のアパレルブランドで見か