【経セミ・読者コメント vol.8】俵谷光さま 2024年6・7月号特集「これからの労働市場改革を考える」
■ はじめに(編集部より)
経済セミナー編集部です。
今回は『経済セミナー』2024年6・7月号(特集:「これからの労働市場改革を考える」)に対して読者の皆様からお寄せいただいたコメントをご紹介します!
毎号、いただいたコメントの中から3~4つほどを選定し『経済セミナー』本誌や経セミnoteでご紹介させていただいております。
※頂戴したコメントは本誌やnoteで公開していないものも含めすべて拝見しております。コメントは今後の企画・制作の参考とさせていただいております。
もちろん、ご執筆者のご了解をいただいたうえで、掲載内容をご相談して進めています(記名でも匿名でもOKとさせていただいております)。
今回は俵谷光さまによるコメントをご紹介します!
【以下、コメントです👇】
■ コメント
◯ 特集:「これからの労働市場改革を考える」
宮本弘曉「労働市場と人的投資のこれから」より
「労働市場と人的投資のこれから」では、日本的雇用慣行の変化とその理由、なぜ変化に我々が対応していく必要があるかが取り上げられ、最後にはこれからの労働市場と人的資本形成の展望でまとめられている。
この特集は広く社会について学ぶことができるものであり、また私自身が人事領域で働いていることもあり、大変興味深かったためとりあげさせていただいた。
■ AI・技術革新と労働生産性との関係
日本の労働力人口の減少をうけ、高齢者や女性の雇用を促進することに加えて、技術革新も現在の生活水準を維持するためには必要不可欠である。人の手によって行われている業務をAIが代替することで生産性が向上する場合は、AIにとってかわられるであろう。生成AIは高いスキルを必要とする業務を代替することも可能であると述べられていた。
個人的な意見としては、AIが高いスキルを必要とするような業務を代替してくれるのであれば、高スキル人材が技術革新の恩恵を受けながら、新たに派生する業務に従事できるようになることで、社会全体で見れば生産性は向上するのでは、と希望的観測で考えた。
■ 労働市場の流動化がもたらす恩恵と課題
かつては「Japan as No.1」と呼ばれた日本的雇用慣行だが、転職へのハードルが低くなり、また転職がスキルアップの1つの手段と捉えられている現代社会においては、企業の長期的な人的投資へのありかたも大きく異なるだろう。企業特殊的なスキルへの需要は、むしろ今では敬遠され、どの業界・企業に属していても、活かすことができるような汎用的なスキル形成が求められている。
企業にとっては、転職市場が活発化することで、せっかく社員に投資しても、それを回収する前に社員が転職してしまうリスクに悩まされている。しかしながら、転職市場が活発化することで、個々人にとっては会社でスキルアップしていくためには、シビアに会社の選択も行うため、人的投資が十分でない企業には、特に売り手市場の現在では人は集まらないであろう。この課題に対しては、業界や企業毎によって課題や目的が大きく異なるため、政府がとりまとめてゴールを与えることは難しく、企業それぞれが人事戦略の指針を見つけ出さないといけない。
かつて就職氷河期世代では、新卒入社の影響がその後の人生に長く影響を与えすぎてしまうことがあった。いわゆる「良い企業」に入れなかった人々が、転職で仕切り直すことが難しかったこともあった。そのため、労働市場の流動化が活発になることは、労働者や社会全体にとっては大きなメリットである。恩恵を受けるためにも、労働市場の変化が生み出す課題には真摯に向き合っていかねばならない。
■ 高齢社会を生きるうえで必要な知識
高齢社会の日本では人生100年時代と呼ばれ、高齢者が活躍する社会の実現を目指さなければならない。そのためにも特に70代での健康状態を底上げすることも必要である。社会保障もこれまでのようには充実していない。
これからの教育で必要となってくるのは、子どもへの金融教育の機会、また既に社会人となっており、これまで十分な金融教育をうけてこなかった層へのインプットも社会的な課題となっていると私は考えている。一度就職してしまえば、安泰な社会ではない時代において、個々人は人生の責任をとるにおいても、特に資金面でのライフプランの立て方やそれに必要となる基本的な知識を蓄えていくべきである。
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