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大竹・大湾・中室ゼミ 合同カンファレンス in 大阪 潜入レポート!
※ 本稿は大阪大学・大竹文雄ゼミ、早稲田大学・大湾秀雄ゼミ、慶應義塾大学・中室牧子ゼミの皆様より写真使用の許諾ならびに記事の掲載・執筆の許諾を得ています。
■ 毎年恒例の合同カンファレンス
単行本『経済論文の書き方』でも紹介していますが、慶應・中室牧子ゼミは毎学期(年2回)他大学のゼミと合同でカンファレンス(研究発表会)を開催しています。
前回(2023年7月)は、慶應義塾大学三田キャンパスで行われた夏季カンファレンス(東京大学・澤田康幸ゼミと合同)にお邪魔させていただきました!
今回は冬季カンファレンスの潜入レポートをお届けします!
今年の冬季カンファレンスは昨年に引き続き、大阪大学・大竹文雄ゼミ、早稲田大学・大湾秀雄ゼミとの3ゼミ共同開催となりました。
■ 前回の潜入レポート(7月・慶應)
前回の様子は下記リンクからご覧ください!
■ 今回の開催地は大阪!
カンファレンスは毎年各大学持ち回りで開催されています。
今回は大竹ゼミのホーム、大阪(大阪大学中之島センター)での開催となりました。
大阪大学の各キャンパスは豊中市や吹田市など郊外に位置していますが、実は大阪市のど真ん中に立派なサテライト施設があります。近くにはABC(朝日放送)本社があったり、江戸時代に米市場があったことで知られている堂島があったりします。
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新型コロナウイルス感染拡大初期は完全オンラインでの開催もありましたが、一昨年は早稲田大学、昨年は慶應義塾大学で原則対面で開催しています。
異なる大学の学生・教員が同じ空間で顔を合わせて議論を交わすことで、緊張感が生まれるように思います。ゼミ内だけで完結させるのではなく、ゼミの外にむけて研究成果をアウトプットし、交流する機会を通じて初めて得られる学びもあるでしょう。
■ 各ゼミの特色
今回は、研究の多様性が非常に高いカンファレンスとなりました。
研究を一括りにすることは難しいものの、独自のカラーが出ていたテーマをいくつかピックアップしつつ、それぞれのゼミをご紹介します。
■ 大竹ゼミ:行動経済学の知見を用いた介入
大竹ゼミによる研究の特色は、行動経済学の知見を用いた独自の介入を行っている点です。大竹ゼミでは数人単位の研究チームを組んで実際に介入を行い、各自の研究成果を発表していました。
例えば、次のような介入です。
SNSでの誹謗中傷に対するナッジメッセージによる同調抑制
HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)のキャッチアップ接種率向上のためのナッジメッセージ
放射線の健康影響に関する情報の政策メッセージ
介入の違いによって人々の行動がどのように変化したのか、あるいはなぜ変化しなかったのかについて、興味深い実験研究の結果を共有してくださいました。結果の解釈について、他ゼミの先生・学生からも異なる視点からコメントが寄せられ議論が盛り上がっていたように思います。
そのほか、「競馬におけるジェンダー・バイアス」や「新型コロナウイルス感染拡大以降の人々のマスク着用に対する選好・社会規範の変化」など興味深いテーマで観察研究も行われていました。
■ 大湾ゼミ:人事・労働に関する丁寧な実証分析
大湾ゼミによる発表は、人事・労働に関する実証研究が多くを占めました。
大湾ゼミでは独自の企業個票データを積極的に活用しています。経済学にとどまらず経営学・心理学・組織科学などの知見も用いて解釈するなど、広い視点から「人事・組織」を科学する研究が多い印象を持ちました。
具体的には、次のようなトピックです。
昇進や人事評価におけるジェンダー・バイアスの影響
PMIにおける人事異動と社員の生産性への影響
社会人における自己啓蒙活動に関する要因分析
認知・非認知能力はリーダーの決定要因か
企業内の意思決定におけるジェンダー・バイアスの存在や自己啓蒙活動・リスキリングなど、社会的にも話題になっているトピックが分析され、企業データ・人事データ活用の意義が感じられる発表でした。
■ 中室ゼミ:行政データや学力調査データなどによる実証
中室ゼミは、学力調査データや自治体の保有するデータなどを用いた実証研究がメインでした。他ゼミとはまた一味違ったユニークな研究が発表されました。
基本的には個人による研究(単著)である点も中室ゼミの特徴です。
具体的なテーマは以下の通りです。
フルリモートワーク環境下のTeam Specific Human Capitalの効果
生まれ月が認知能力・非認知能力に与える影響
男子は上昇志向、女子は安定志向?〜進研模試の実証分析〜
出生順位格差は克服できるのか
保育士の属性が保育の質に与える影響
教育経済学を主領域とするゼミであることもあり、個票データを用いた人的資本蓄積に関する研究が全体を占めました。教育分野に限らず、家庭ごみの経済分析や合法大麻の実証分析など独自の視点から実証を行った研究もありました。
■ 教員・フロアからの鋭い質問・コメント
熱心なのは学生だけではありません。大竹先生、大湾先生、中室先生からは発表者に対する鋭い質問・コメントが寄せられました。各研究室の特任教員・ポスドクの方々などもフロアから質の高い質問・コメントを投げかけます。
1つ1つの質問・コメントに対し、発表者は丁寧に説明・ディフェンスしていきます。発表内容そのものだけでなく、自分の研究に対して向けられる批判に対してきちんと打ち返しができているかも審査の対象となります。プレゼンテーションの時間制限も厳しく、タイムオーバーは原則許されません。
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■ 発表の様子
2日間にかけて、各大学の学生が半年間の成果を発表しました!
全ての発表をご紹介することはできませんが、ここでは、発表の様子の一部を写真によるダイジェスト形式でご紹介します。
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■ 最優秀賞・優秀賞
全ての発表が終了したのち、厳正な審査に基づいて最優秀賞・優秀賞が発表されました!
受賞者の皆様には、大竹先生・大湾先生のサイン入り書籍が贈呈されました。受賞者の皆様おめでとうございます!
以下、受賞者の皆様を写真とともにご紹介します。
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研究班の皆様
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研究班の皆様
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(「高齢化と起業率 ──起業をめぐる環境変化と日本の現在地 ──」)
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(「いじめられっ子は世に憚り得ぬか ~Bullying effects on skill accumulation in school~」)
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(「家庭ごみ有料化の効果 〜ごみの削減やリサイクルへの動機付け〜」)
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(「アメフトの勝敗が本拠地でのヘイトクライムに与える影響
〜マイノリティのパフォーマンスと偏見〜」)
■まとめ
今回は大竹ゼミ・大湾ゼミ・中室ゼミ、それぞれのカラーが存分に発揮されたカンファレンスとなりました。
行動経済学、人事経済学、教育経済学と、それぞれのゼミのメインとする領域は異なりますが、研究の視点、方法論、結果の見せ方など、他のゼミから積極的に吸収できる部分も大いにあったかと思います。外部との交流がもたらす効用を肌で感じることができる機会でした(経済学的に言えば、このような交流を続けることのピア効果があると感じます)。
次回のカンファレンスの様子もお伝えする予定です!
また、今回のような経済学のカンファレンス・研究発表会があれば可能な限り足を運び、経済学教育にお役立ていただけるような内容を皆様に共有していければと思います!
※新入編集部員の日記も随時更新します。
■関連書籍など
学生向けの経済論文の書き方・読み方については、書籍『経済論文の書き方』や『大学生のための経済学の実証分析』で詳しく説明されています。ぜひご活用ください!
カンファレンスにて贈呈された大竹先生・大湾先生のご著書はこちら!
大竹先生ご著書
大湾先生ご著書
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