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タイムとマネー

 高校卒業してから本命の大学に入学するまで2年、1社目からに2社目に転職するまでに半年と、何かと私は時間を無駄にする傾向がある。

 正社員*1は時間に対してギャラが発生するので、その段階で時間と金の関連性について考えないといけない。しかし、出身の専攻があまりビジネス寄りではなかったため、時間をドブに捨てるような所作が多かった。

 だが、ちょっと変わるタイミングがあった


1.簡略プロフィール

 IT企業勤務(2024年5月現在)の大卒正社員。大体定時で帰れるし、別に暮らせないことはないギャラだ。ホワイトだが、薄給でもある。個人的には問題ないのだが、世間的に見れば低収入の部類だと思う。
 質素な生活をすればいいのだが、刺激や変化を求める性格が故に、外食や(主にお笑い)ライブ鑑賞に金銭を費やす。となると苦しくなる。会社が副業可能なので、土休日に副業(というより小遣い稼ぎの感覚で)単発派遣のバイトをしている。主な内容は、イベントスタッフである。

2.前提

1.副業の種類

 イベントスタッフや単発派遣だが、様々な内容がある。最近だと

 ・ある番組のPRイベントで、うちわ的なのを配る
 ・キャラクターポップアップストアのサポートスタッフ
 ・ポイントカードへの勧誘(デパートとかによくいるアレを想像してください)
 ・公演冊子へのチラシ折込作業

 などを経験した。
 これらとは別にも、イベントスタッフをやっている。特に注力入れて今までやってきたのが

 ・ゆるキャラ関連*2

である。 

2.ゆるキャラ関連とは

 主に、

 ・ゆるキャラの中の人
 ・ゆるキャラのアテンド(ゆるキャラの横にいるスタッフ)や着付け
 ・子供対応(エアー遊具等がある場合もあるから、それの受付)
 ・ゆるキャラや遊具等の搬入出
 
等がある。下3つを主にする者を、この稿ではスタッフと呼ぶことにする

 スタッフは基本的に、朝が早く夜は遅い。中の人の場合、ステージの準備作業や子供対応がいらないので、朝が遅く夜も早い。私も中の人志望だったが、太りすぎてるのと低身長ではないから、中の人案件は原則回ってこない。
 中の人とスタッフのギャラはほぼ同じである。コアタイムが重なるからだ。だがスタッフの場合、都内某所で集合してからハイエースで向かったり、23区から電車で1.5時間かかるような駅に集合させられる。この分の移動時間を労働時間として換算しないため、拘束時間≠労働時間となる。本来ならば違法なのだが、そうでもしないと会社が回らないのだ。
 では何故このバイトをたまにやるのかというと、中の人の演技を見るのが好きなのと、大学の卒論のフィールドワークでお世話になったから、趣味と恩義でそれをやっていた。 
 だが、後述の大雪事件をきっかけに、その頻度を大幅に減らすことになる。 

3.大雪事件
 ある日のこと、いつものようにゆるキャラ関連のバイトをやってた。当然の如く、朝は早いし夜は遅い。
 16時ぐらいから、首都圏で今冬最大の大雪が降り始めた。
 エアー遊具はもちろん撤収。大雪は大雨とほぼ同じなので、屋外で作業する時は全身びしょ濡れ。中の人はとっとと帰っちゃう。スタッフは元々体力仕事なので、大雪でもっと体力が削られることとなった。
 上司から、あくまでも私を後輩みたいに接した上でのクソしょーもない話を、帰りの車で聞かされながら、ヘトヘトになり帰った。
 ギャラは約2ヶ月後に支給される。
 ギャラは手渡しだ。大雪以外にもやった場合、まとめて渡される。
 明細を見たら、大雪の時と晴れの時のギャラが同じだった
 唖然とした。
 そりゃあそうだ。大雪の時にギャラがアップするのならば、他の悪天候でも適用しないといけなくなる(そういうルールに対する理解も、他の人よりは深いという自負すらある)。だから、文句はない。当たり前のこと。
 簡単な表現をするならば、折れた。
 朝から晩まで拘束されて働いて、本当に疲弊して、んでこれっぽっちしか貰えねえのかよ。12時間ぐらい拘束されて1万行かないってどういうこと?仮にルールを決めるのがめんどくさいなら、別にギャラアップが、コンビニのおにぎりや、ワンドリンクでも構わない。それな最終手段たった。でもそれすらなかった。何とも思われてない。それがしんどかったのかもしれない。
  

3.変わったきっかけ

1.きっかけとなった現場
 別の派遣会社にも登録はしている。そこで、ポイントカード切替の案件をやった。
 PCを使う作業(と言っても誰でも出来る内容)だから、時給は少し高い。その会社はどんぶり勘定なので、交通費は余分に出る。そして何より、拘束時間が大雪事件の時とほぼ同じだった。だが、ギャラは大雪の時の2倍だった。

2.正社員との比較
 正社員の業務は、ITとは言うものの、暇なことの方が多い。コードなんて最近書いてない。下手したらネットサーフィン、一時期は出勤退勤報告なし自宅待機だけでギャラが発生した時期もあった。
 意識が高いと正社員は忙しくて仕方ないのだが、私みたいなダラダラ正社員やってる身は楽なのだ。全くやりがいはないが。少なくとも単発派遣バイトよりは(時給換算すると)良いギャラを貰っている。しかも社会保障までついてる。社会的信用もある。めちゃくちゃコスパ良いバイト。それが正社員。
 ゆるキャラ関連の仕事をやる意味が分からなくなった。  

4.結論

 こうして、タイムとマネーに対する意識が徐々に変化しつつある。同じ時間あったら〇〇したい、みたいな優先度を自他に対して常に考えるようになった。
 しかし結局、「ギャラは低いけど、自分にとって魅力がある仕事」というのが、まだ見つかってないという絶望感にも苛まれる結果となった。大学時代からお世話になって、正社員になってからでも温情で勤めてた会社を「ギャラが安い」という理由で離れるとは思わなかった。
 職業に貴賤なし、というのは、誰がどのような背景で生み出した言葉だったのだろう。

***
 大体はつまらない人間になっていく。
 それもそのはずだ。己の中にある思考を捨てて、マネーというルールに則った動きをしなければならない。
 となると、面白いとは思ってもマネタイズが出来なかったら意味が無い、という人間になる。
 自分もそうはなりたくなかった。なりたくなかったし、これでもビジネスよりも思想寄りの学問を選考した。
 でもダメだった。やっぱり引いてしまう。そして自分がそういう人間になったことに、酷く落ち込んでるのだ。
 また、時間に対しても厳しくなった。その時どの現象に価値があるかで決めている。例えば会社はいずれ辞めるから、遅刻しても構わない。そこで生涯を終える気は無い、という理由で平日夜にテキーラキメて寝坊したこともある。 
 だが、何より「相手の時間を奪うのは良くない」という考えもある。誰と何を話したらいいか分からなくなってしまった。1人で、チェーン居酒屋で飲んでる時に安堵感を覚える。今いる現場も、仕事時間を能力育成に充てられないから、不満で辞めたのかもしれない。

*1 社会人という表現もありますが、正社員ではないアルバイターも社会人なので、区別するために正社員と言います。働いていたら社会人です。
*2 着ぐ〇みの中の人です。界隈はよく検索するので、暈しました。

 



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