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銀行がリアル店舗を増やすのは戦略としてアリかナシか?

皆さんは最近、地方銀行が相次いで新たな店舗を出店しているというニュースをご覧になったことはありますか?

ネット銀行の勢いが止まらない中で、あえて店舗を拡大する動きが出ているのはなぜなのでしょうか。

そして、その選択は果たして銀行にとって本当に得策なのでしょうか。

今回の記事では、銀行がリアル店舗を増やす背景とメリットを整理しつつ、「店舗戦略は失敗に終わる可能性が高いのではないか」という視点から、わかりやすく解説していきます。

なぜ今、銀行が店舗を増やすのか?

まずは銀行が店舗を拡大しようとしている理由を見てみましょう。

実は、ここ数年で地方銀行は店舗数を大幅に削減してきました。

しかし、削減が進みすぎた結果、預金が減少傾向にあることが問題になっています。

2024年9月5日 日経電子版より転載

金利上昇局面では、銀行は預金を集めて貸し出しの利ざやを稼ぐ必要がありますが、便利なネット銀行などに顧客を取られてしまう懸念が広がっています。

そこで、地方銀行は相次いで新規出店に踏み切り、顧客接点の回復を図ろうとしているわけです。

また、「新NISA」や「相続対策」など、資産運用の相談ニーズが高まっていることも背景にあります。

店舗を増やし、投資や相続の相談に応じ、個人顧客の資産形成ニーズをつかみたいという狙いがあるようです。


店舗を増やすメリットと不安材料

リアル店舗を増やすメリットとしては、以下の点が挙げられます。

1. 顧客接点の強化
対面ならではの、きめ細かな金融サービスやライフプランの提案など、資産形成のアドバイスが可能。

2. 高齢者やネットに不慣れな人のニーズ
デジタルに不慣れな高齢者層や、インターネットでは不安という顧客層の取り込み。

3. 地域密着イメージの再構築
新興住宅地や商業施設などに出店し、住民と直接つながることで、銀行の「顔」が見える安心感を提供。


一見すると、こうしたメリットは見逃せないように思えます。

しかし、その裏には大きなリスクが潜んでいます。

それは、高コスト体質への逆戻りです。

支店を増やせば増やすほど、人件費や施設維持費、セキュリティ強化などのコストがかかります。

ネット銀行や電子マネー業者との決済機能に関する激しい競争が続く中、既存業務の効率化が進まなければ、結局は膨れ上がった固定費が銀行収益を圧迫し、最終的には赤字店舗を抱えるリスクが高まるのではないでしょうか。


なぜリアル店舗は失敗する可能性が高いのか?

1. ネット銀行との競争

現代の消費者は「365日24時間、自宅やスマホで完結できる」利便性を強く求めていると思います。

ネット銀行は高金利の預金や手数料無料など、魅力的なサービスを低コストでの提供が可能です。

地銀がリアル店舗を増やし、その維持コストを吸収しながら同水準のサービスを提供するのは至難の業でしょう。

仮に、そのコストを吸収するために顧客から高額の手数料などを徴収する可能性もあり、一般の顧客にとって銀行と取引する必要性は余計に薄れると考えます。


2. 地域の人口減少・相続による流出

地方では今後も人口減少が見込まれ、相続などによって都市部へ預金が移されるケースも多くなるでしょう。

顧客基盤が縮小する中、ローカル密着だけを頼りに店舗を維持するのはリスキーです。

人口が増える特定地域に店舗を集約する戦略はある程度有効に見えますが、実際は限られた一部地域だけだと思います。

全体としての収益改善にはつながりにくいのではないかと思います。


3. デジタル化の遅れ

店舗を維持するということは、業務のデジタル化が後回しになり、将来の競争力を失う危険性があります。

先行するメガバンクのように高機能ATMや小型店舗を使い分け、デジタル戦略と融合する形で店舗をリニューアルするならまだしも、旧来型の大規模店舗を増やすだけではコスト効率が悪く、ネットやデジタルへの投資も疎かになるのではないでしょうか。


それでも店舗を出すなら?

私はリアル店舗をまったく否定するわけではありません。

資産形成や相続など、人生の重大な分岐点における対面での相談は、一定の需要があると思います。

ただ、その重要性を生かすためには運営コストを大幅に抑えつつ、デジタルとのシームレスな連携を図ることが不可欠でしょう。

メガバンクが進めるような小型・低コスト店や、自動化機器の導入、事務作業の集中化(バックオフィス連携)など、あらゆる手段を駆使して効率化を進める必要があると思います。


解決策としてのデジタル・コンサルティングサービス

もし、銀行の方々がこの記事をお読みになっているなら、ここでご紹介したいのがデジタル変革とコンサルティングを融合させたソリューションです。

たとえば、オンラインで預金・融資・投資相談が完結するシステム構築や、店舗のバックオフィス連携システムを外部パートナーと協力して導入するなど、コスト削減とサービス向上を同時に実現する仕組みづくりは有効かもしれません。

さらに、店舗網を拡大する場合でも、拠点そのものをコンサルティング拠点化し、従来の「現預金を扱うだけの銀行」から「資産形成をサポートする総合金融サービス企業」へと進化することが不可欠でしょう。

そこにはDXの推進力が大きく関わってきます。

問題は、それだけの投資をする覚悟が今の地方銀行の経営陣にあるかどうかではないでしょうか。


まとめ

結論として、銀行がリアル店舗を増やす戦略には失敗のリスクが高いと思います。

ネット銀行やデジタルサービスとの価格・利便性競争が激化する中、高コストな支店網を維持すること自体が収益の足かせになりやすいからです。

地方都市の人口減少や相続をきっかけとした預金流出も止まりません。

だからこそ、大胆なデジタル化と効率化を同時に進めなければ、結局は銀行全体の収益力が落ち込んでしまう可能性が高いと思います。

しかし、店舗がまったく不要というわけではなく、資産運用や金融相談の機能や地域への信頼感を培う拠点としての役割は一部残るでしょう。

高機能ATMや小型店舗を駆使し、コストを抑えながら顧客との結びつきを強化することこそ、これからの銀行には求められているのではないでしょうか。

以上が、「銀行がリアル店舗を増やすのは戦略としてアリかナシか?」というテーマに対する筆者の見解です。

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Kei | MBA| 元銀行員
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