相次ぐ地銀の「地域商社」設立は失敗だろうか?
みなさんは「地域商社」というものをご存知でしょうか。
近年、地方銀行による「地域商社」設立が相次いでいます。
本業の金融での収益力が低下していることもあり、地域商社に期待する声も少なくありません。
本記事では、地域商社の内実と、運営上の障壁について深掘りします。
果たして地方銀行と地域商社の連携は地域経済を救う鍵となるのか、その答えを探ります。
地域商社とは
地域商社は、特定の地域の産業を活性化させることを目的とした企業で、地方銀行や地方自治体などが主体となって近年多く設立されています。
これらの商社は、地域内の農産物や工芸品などの地元の商品を集め、国内外の市場へ販売することで地域経済の促進を図ります。
地域商社は地方創生や地域経済の再活性化に寄与し、地元産業の支援や雇用創出を目指す重要な役割を担うことが期待されています。
地域商社が直面する経済的課題
地方銀行による地域商社の設立は、地方創生を目指す一環として注目されています。
しかし、その実態は数々の経済的困難に直面しているのではないでしょうか。
特に、地域特有の商品やサービスは規模が小さいため、スケールメリットが出せず、収益性の向上が課題となっています。
また、日本の国内市場は縮小傾向にあり、それも投資の魅力を損なう一因になっていると考えます。
インフラや物流の問題も、地方の場合は都市部と比較して。事業運営の効率やコストに影響を与え、投資リターンを下げる可能性もあります。
地域産品の限られた市場と競争環境
地域商社は地元産品の販売を通じて地方経済の活性化を図るものの、市場は非常に狭く、日本国内や国際市場での競争は激化しています。
実際、地域商社は大手流通業者や他の地域の商品との競争にさらされています。
そのため、いかに良い地域産品だとしても、その独自性と価値を市場に訴えるのは困難な状況にあると考えます。
生産者からすれば、黙っていても売れる商品であれば、地域商社を使う必要はありません。
つまり、地域商社の成功は、新たな需要創出に依存しているといえます。
しかし、単に地域産品を市場に提供する以上の努力を要求されても、地方銀行にそのようなノウハウがあるわけではありません。
地域内外の市場動向を理解し、効果的なマーケティング戦略を展開するだけのリソースを地方銀行が持っているとは言い難いため、競争環境が激しくなると立ち行かなくなると推測されます。
ビジネスモデルの持続可能性
地域商社の運営においては、地方自治体や国の法規制も大きな障壁です。
特に地方銀行との連携を図る上で、金融規制や行政手続きの複雑さが事業の進展を妨げるケースも少なくありません。
地方銀行は地域商社の設立にあたり、重要な役割を担いますが、この連携には多くの課題が伴います。
また、銀行が持つ保守的な企業風土と、革新的な事業モデルとの間で矛盾が生じることもあります。
地域商社の役割と期待される機能
地域商社に期待するのは、単なる経済的利益の追求だけではなく、地域の持続可能な発展だと思います。
これを実現するためには、地域固有の価値を再評価し、新たなビジネスモデルを確立する必要があります。
しかし、その価値を評価できる能力を地方銀行が保有しているかといえば疑問があります。
銀行員に求められるのは一般的には「リスク管理」能力であり「将来価値」について判断を求められることは稀です。
銀行員は、現時点の情報から導き出す回収可能性については判断できます。
しかし、将来価値を算出し、バリュエーション(価値算定)できる銀行員、特に地方の銀行員で、それを理解できている人は、ほぼいません。
このような状況で、長期的な視野で地域商社を考えられるのか、私は懐疑的です。
地域資源活用と戦略的ミスマッチ
地域商社が地域資源を活用するのは理想的ですが、実際にはその資源が市場の需要と合致しない場合が多く、戦略的なミスマッチが発生しやすいと考えます。
地域商社の失敗は、単に経済的な損失にとどまらず、地域社会にも多大な影響を与えます。
特に、地域住民の期待を裏切る結果となった場合、その社会的な影響は計り知れません。
特に、投資や資源が失敗に結びついた場合、地域内での信頼失墜や失業の増加、地元企業の倒産といった直接的な経済的損失に留まらず、地域社会全体の士気や活力の低下を招くことになります。
地域商社の目的は地方創生と経済の活性化であるため、これらのネガティブな結果は特に重く受け止められるでしょう。
地域住民にとって、地域商社はただのビジネス以上の意味を持ちます。それは、地域の誇りや未来への希望を象徴しており、その成功は地域社会にポジティブな影響を与えます。
逆に、失敗した場合は、そのショックは深く広範なものとなり、地域に対する自信の喪失や外部との経済的な連携への消極的な姿勢を生むかもしれません。
既存事業者、取引先とのバッティング
実際、地方銀行の地域商社設立には、その意義や目的が明確でなく、成功事例も限られています。
このため、既存の食品卸売業者や大手商社のバイヤーとの競争に直面し、収益化が困難です。
地域商社のビジネスモデルは総合商社に似ており、地域の優良な仕入先の確保が必要です。
地方銀行は地域経済の中心的な地位にあるため、このポジションを活用すれば競争優位を確立しやすくなるかもしれせん。
しかし、この地位を活用するビジネスモデルは既存事業者、もしかしたら地方銀行の取引先の一つの経営を圧迫する可能性もあります。
そのため、進出には慎重な計画が求められます。
ただ、そのような配慮によって、さらに収益化への道が困難になっていくと考えられます。
まとめ
地域商社の設立と運営は多くの課題に直面しています。
しかし、これらの課題に対処できれば、地方銀行は地域社会に貢献し、新たなビジネスチャンスの創出は可能でしょう。
地域の持続可能な発展を目指す地方銀行にとって、地域商社はただのビジネスではなく、地域の未来を形作る重要な取り組みであるのは間違いありません。
ぜひ、これまでの殻を破って新たなビジネスモデルを構築してもらいたいです。
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